まるで年表を記すように、時間軸に従って正岡子規の行動や内面や彼の作品を記していった一冊。
お買い得な一冊です。850円+税金で、こんなに長い間楽しめるのですから。正直なところ、自分が書店で選ぶとすれば、こんな選択肢はなかったと思います。神奈川県に住む友人はいつも突然メールを送ってきて、「読むべし」とか、「観るべし」と書いて本やテレビ番組を勧めてくるのです。そのうちの一冊で、Amazonで買ったはいいけれど、なかなかページが進まず、たぶん1年くらい掛かって最後のページにたどり着いたものです。
おそらく世間の人以下にしか子規のことについて知らない私です。もしも、子規の生涯の日記があったなら、こんな風に記されていたのかもしれないと錯覚するほどに、日々が細かく掘り起こされ文章になっています。短い生涯だったという割にはこの一冊は分厚い。それに、子規という人は病で苦しんでいる割には、アクティブに行動していたのだと知ることになりました。
子規のことをたどってみたいとか、子規の行動をなぞってみたいと思う人がいたら、この一冊はおそらく最高のガイドブックではないかと思います。私にとって東京は遠いところで、何年かに一度くらいしか行く機会がありませんが、根岸や谷中を歩くことがあれば、この一冊を持って歩きたいと思うのでした。
この一冊の中に、明治期の著名人があらかた登場するというと言い過ぎかもしれませんが、文学史に登場する人たちは子規の周辺に存在しているというのは間違いないようです。碧梧桐や虚子は当然としても、鴎外、伊藤左千夫、漱石、寺田寅彦、浅井忠(画家)、幸田露伴、坪内逍遥、山田美妙…。意外なところでは、野坂昭如もこの一冊に登場します。昭和26年に子規庵の留守番の学生が募集された。応募してきたのが早稲田の学生だった野坂だったそうですが、酒好きだという理由で採用にはならなかったそうです。
巻末に人名索引が付けられているのがとても便利。500ページ以上ある一冊の中からその人物が登場するページを見つけられるのですから。もちろん、その索引の中に「野坂昭如」も記されています。
もう一度書きます。子規のことを知りたいという方にはお買い得な一冊です。
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