社会人から教員に ~40代後半での教員採用試験体験記~

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始業式&「宇宙よりも遠い場所」の学校現場的考察2

2018-04-08 17:59:00 | アニメ好き教師
勤務校では始業式がありました。3月まで受け持っていたクラスの場所を見ていたら、ふと「卒業していったあいつらは今どうしているだろうか?」という感傷的な気持ちになってしまいました。そうです、ワタシはとても涙もろいのです。冷静に考えたら、若いあいつらは元気に新しい一歩を踏み出しているはず。多くの卒業生が文化祭には顔を出すので、「どんな感じに変わっているだろうか楽しみだ」と考えるようにして、涙を我慢しました。

というわけで、連載企画「リアル学年主任による『宇宙よりも遠い場所』の学校現場的考察」のコーナーです。

第2回は、三宅日向さんの高校中退&高認試験関連。
三宅さんが中退した時期は、公式ホームページの「キマリたちと同じ年で、高校を中退」という情報と、第2話の「高認も取ってる」というセリフから、ほぼ特定できていました。高認試験は年2回しか受験できず、第1回の出願締切の5月上旬(今年度は9日)ではさすがに早すぎるため、夏休み前までの期間に何かの事件が起こって中退(あるいは中退を決意)し、出願締切が9月中旬(今年度は13日)の第2回に願書を送った可能性が非常に高いのです(というか、そうとしか考えられない)。その後、11話の「羽生第三高校の3年生が陸上部を引退する大会の選手選考時期に悲しい事件が起きた」という描写で、これが正しい推測であることがわかりました。ネットで調べてみると、羽生市などが属する埼玉県東部では7月中旬(昨年度は15・16日)に行われる国体予選東部地区大会で陸上部を引退する3年生が多いとのこと。選手選考発表後の強化トレーニング期間、退部・悪い噂の伝播・退学決意・保護者との相談・三者面談・学校側からの慰留や状況調査・退学決定・事務手続き等に要する時間、そして「排水溝に流れていく水に映る初夏のような日差し」という映像(本作は水の表現による暗喩も多い)を考えると、三宅さんの悲しい事件は6月末頃までに起こり、夏休み中の日付で退学した、と思われます。おそらく三宅さんはこの事件で大変な衝撃を受け、夏休み前には登校しなくなり、そのまま退学してしまったので、原因を作った陸上部の3人の女子生徒たちにとっては「あれから連絡が取れなくなって心配してた」状況になっていたのでしょう。

退学を決意した後、三宅さんは高認合格を目指して猛勉強を始め、11月中旬(今年度は10・11日)の第2回試験で一発合格します。高1の授業を6月頃までしか受けていない受験可能最少年齢(その年度中に満16歳になる人以上)であるのに、高校教科書の範囲全体から出題される高認試験8~9科目全てにせいぜい4か月程の勉強で合格してしまったという驚異の事実は、三宅さんが非常に優秀であるということだけでなく、あの事件に対して煮えたぎるような怒りや悔しさを抱いていることまでも表現しています。そして高認合格後は、相当な難関大学合格を目指して独学の受験勉強に切り替えたのでしょう。

ここまで考えると「受験勉強のためにはコンビニバイトの時間がもったいないのでは?」「生活費のため?」という疑問が湧いてきますが、2話の「お金はある」や最終話の「貯金してる」というセリフ、多数の変なデザイン(笑)のTシャツ購入費・soiyaカードの残額・スマホ・部屋の描写等から、三宅さんは生活費に困っているのではなく、生活リズムの構築や社会との接点の維持がバイトの主目的だと考えられます。玉木マリさんたちと出会った5月頃で「このあいだの模試は合格判定A」とのことですし、飛行機・ペンギン饅頭号・昭和基地内でも参考書を手放さない勤勉な三宅さんにとって、むしろコンビニバイトは受験勉強に良い影響を与える気分転換になっているのでしょう。そもそもあのコンビニでバイトしていなかったら玉木さんと小淵沢報瀬さんに会えなかったのですし。なお、最終話の林店長作成ポスターを見ると、三宅さんはコンビニ店員としてもたいへん優秀で、看板娘として周辺住民(特に年配の方々^^)から愛されていたようです。

考察すればするほど、というか、考察するまでもなく、三宅日向さんは運動・勉強・勤労(コンビニや撮影ほか)など多方面で非常に優れた能力を持つ、明るく元気でかわいらしい、立派な若者です。そんな三宅さんが、なぜ高校を中退するような事態になってしまったのか。もしワタシが劇中の羽生第三高校で三宅さんの担任、あるいは陸上部顧問(陸上のスキルはないので、おそらく副顧問)だったなら、三宅さんのような素晴らしい生徒を退学させるような指導はしません。ちゃんと関係生徒に聞き取り調査を行えば、あの悲しい事件の真相は比較的容易に把握でき、三宅さんに責任がない、ほぼいじめ案件であることはわかるはず。にもかかわらず三宅さんが中退してしまった経緯を、リアル学年主任であるワタシが学校現場的に考察すると、大きく分けて次の3つが考えられます。

1:真相を明らかにして関係生徒に懲戒(別室指導、自宅謹慎、説諭等)を行ったが、三宅さんと保護者の退学の意思は変えられなかった
2:真相究明が不十分で関係生徒の懲戒までには至らず、当然、三宅さんと保護者の退学の意思は変えられなかった
3:陸上部顧問や校長らは事実の発覚を恐れて真相究明を十分しないまま、三宅さんと保護者の退学の意思をそのまま受け入れた

羽生第三高校は架空の高校ではありますが、同じ高校教員として、先生方は精一杯努力したにもかかわらず、残念ながら1の経緯となってしまったと思いたい。しかし、あの三人の女子生徒たちは事件後に三宅さんと連絡がとれなくなり、メールや中継で許してもらおうとする中途半端な態度をしていたところを見ると、2の経緯だった可能性がかなり高いのです。1の経緯なら、三宅さんへの謝罪の場を設けるか、少なくとも謝罪文を教員が渡す位はするはずだから。これはとてもやるせないことです。三宅さんや保護者の気持ちは晴れないままの退学となり、あの三人の女子生徒は自分たちがしてしまった悪い行いを、学校という場で教員から正確に指摘され、自覚し、反省する教育的機会を得られないから・・・。

そして、そんなことはまず無いでしょうが、もしも、もしも、もしも、3の経緯だったとしたら・・・11話の小淵沢報瀬さんと同じく

「ざけんなよ!!!!!」

です。ワタシはたぶん小淵沢さんよりもさらに性格が悪いので、「もやもやとした気持ち」以上の代償を与える動きをきっとするでしょう。元広報マンなのでマスコミとのパイプはありますし(書いてみただけで実際に何かをするとは言ってないですヨン^^)。

当初想定よりずいぶん長くなってしまいました。次回は、玉木マリさんと小淵沢報瀬さんの休学申請について考察します。

高畑勲監督ご逝去の報に接して

2018-04-08 17:55:00 | アニメ
いつかこの日が来ると思っていた日が今日になりました。

高畑勲監督は、ワタシが以前勤めていた会社が主催していたビデオフェスティバルの審査員をされていたため、懇親会や取材依頼の時などに、なかなかの長時間お話しさせていただく機会がありました。その際、幼少期以来どれだけ高畑監督の作品によって幸福な時間を過ごさせていただいたか、という感謝の気持ちを直接伝えられたことは、とてもラッキーでした。ワタシにとっての高畑監督の代表作は「パンダコパンダ」「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」「劇場版じゃりン子チエ」です。これらの作品群こそ日常系萌えアニメの嚆矢であり、現在のアニメ界に与えた最大の遺産であると個人的に思っています。正直、「ホーホケキョ となりの山田くん」までのスタジオジブリ期の作品はあまり好きではありませんでしたが、結果的に遺作となったのが「かぐや姫の物語」という素晴らしい作品で、本当に良かった。

ご冥福をお祈り致します。(04月06日mixi投稿文をリライト)