社会人から教員に ~40代後半での教員採用試験体験記~

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授業開始&「宇宙よりも遠い場所」の学校現場的考察3

2018-04-21 12:34:00 | アニメ好き教師
勤務校では授業が始まりました。1年生は新しく始まった高校生活に慣れるために奮闘中です。今一番多いのは道案内、というか、教室案内です。普段の教室はいいのですが、音楽室とか美術室とか生物室とかパソコン室とか、特別な役割を持つ部屋の位置をまだ覚えていないのですね。もう一つ多いのが、南京錠の破壊です。ロッカーに南京錠のカギを入れたまま施錠したり、ダイヤル番号を忘れたりする新入生が続出。そのたびに依頼を受けてボルトカッターで破壊します。生徒たちは破壊された南京錠を見て、悲しそうな顔や恥ずかしそうな顔をするので、笑いながら「記念品が手に入ったね」と言って手渡すことにしています。

さて、連載企画「リアル学年主任による『宇宙よりも遠い場所』の学校現場的考察」のコーナーです。第3回は、玉木マリさんと小淵沢報瀬さんの休学申請について。

多々良西高校に通う玉木さんと小淵沢さんは、第4話で休学申請兼保護者同意書を学年主任の先生に提出します。時期は、玉木さんがまだ夏服ではないので、5月後半頃と推測されます(最近の高校は5月から夏季略装期間ですが)。小淵沢さんはちゃんと保護者のサインと印をもらっているので問題ありません。実はこの書類1枚だけで、「小淵沢さんの保護者は父親ではなく祖母で、名前は小梅さん」「これまで描かれなかった小淵沢さんの父親の不在が確定」「父親はどうしているのか、離婚したのか、死別したのか、そもそも母(小淵沢貴子さん)は父親と入籍したのか」「小梅さんはどのような思いでこのサインと押印をしたのだろう」「娘(小淵沢貴子さん)の命を奪った南極に、16歳の孫娘を送り出す不安や寂しさはいかばかりだろう」などの考察ができてしまうのが本作の凄いところ。

一方、玉木さんはこの時点で保護者から休学の同意を得ていない、どころか、民間南極観測隊に参加し、長期間(12月から3月までの約4か月と推測)にわたって南極に行くことすら相談していません。とんでもないですね(笑)。切羽詰まった玉木さんは、妹の玉木リンさんのサポートを受けながらもようやく母親に話そうとして、あの超笑える、玉木家の幸せな家庭描写が素晴らしい名シーンが展開されます。ここで玉木さんは「自分で書き、勝手に印鑑を押した書類」を母親(偽造書類により名前が曜子さんと判明)に見せて怒られますが、これは、「生徒が保護者に相談しづらい案件」において、実際の学校現場でも時々提出されるものです。玉木さんは何の偽装工作をすることもなく、自分の可愛らしい筆跡のままで母親の名前や休学理由を書いていますので、このまま提出していたらすぐに先生に「これは玉木さんの字ですね」と見抜かれ、叱られたことでしょう。その時、再び「はうあ!」と言っていた可能性もあります。結局玉木さんは、帰宅直後に激怒した妻を目撃し長女を見捨てて玄関ドアをそっ閉じした父親(家庭内の立ち位置に親近感を覚えることこの上ない)と玉木家の実質的家長と思われる母親に洗いざらい白状し、玉木家と南極チャレンジ担当者(おそらく副隊長の前川かなえさん)やあおぞらテレビ担当者らとの話し合い(まず未成年者の安全確保面、他に身分・待遇・仕事内容・放送内容ほかの確認等)がもたれたと思われます。

学校現場的考察から少し離れますが、大手電機機器メーカーで約14年間広報担当だった私の推測では、観測隊内の安全確保責任者で保護者的な役割が前川さん(&鮫島弓子さん)で、あおぞらテレビ側の負担は、女子高生タレント白石結月さんのギャラと必要経費全額、短期契約の女子高生(等)レポーター・カメラマン(有能なため、台本を書くなど実質現場ディレクター)・AD3名の基本的放送技術修得研修費・南極チャレンジ合流後の食費・居住費他の必要経費全額(レポーターやカメラマン業務等の報酬と相殺)です。あおぞらテレビとしては当初、白石さんに同行するスタッフ2~3名の派遣を、おそらくは付き合いのある外部制作会社に依頼していたはず。しかし、普通の大人が4か月もの長期の南極行きを快く了解するとは考えられず、「え、女子高生(等)3人が行きたいと言っているなら、彼女たちを訓練すれば放送してもらえるのでは」「オーストラリアと日本の往復旅費は自己負担で報酬は不要だから、研修費を考えても、予定していたスタッフ2~3名の4か月(準備を含めればそれ以上の期間)分のギャラ・危険手当・居住費・飛行機代等合計よりはるかに安くつく」「派遣予定スタッフは、短期ならともかく、本当はそんな長い期間南極に行きたくなかったので、この話は渡りに船」「南極チャレンジとしても女子高生(等)が3人増えるとPRネタや放送バリエーションの大幅増につながるし、白石さんのメンタル面のケアや孤独感の解消的観点でも有効だし、技術的に不安な点や安全面の確保は、観測隊の放送・通信機器、情報発信、医療、調理等の担当者でサポートしまくりますよ」という感じで、前川さんや、白石さんの母でマネージャーの白石民子さんらが尽力して話がまとまったのではないかと。そして、こうした点の描写については「そんなことは賢明な視聴者の皆さんは容易に想像できますよね」的なスタンスで全面的に潔く省略し、表現したい魅力的で重要な場面のみをとてつもなく心地よいテンポで描いていく本作スタッフの手腕に感服するばかりです。

また、南極に縁がある小淵沢家(小淵沢貴子さんは南極観測が国家事業のみだったころから観測隊員だったと思われます)と異なり、普通の家庭で、特に父親が娘2人を溺愛している(断定!)玉木家が、玉木マリさんの南極行きと休学を「赤点を取らない」という寛大な条件で許可したことは、子供のチャレンジを積極的に応援する立派な姿勢だと、私は感心しています。この部分も直接的に描くのではなく、教室内での玉木さんと高橋めぐみさんの会話でさらりと触れるだけで、父母の許可、休学申請兼保護者同意書の提出、学校側の受理という展開をわからせてしまう。本当に粋です。

さあ、2人と2人の保護者から南極行きのための休学申請が出された多々良西高はどのように対応し、どのような経緯で、全校生徒を集めての壮行会が行われるという、学校全体が応援する状況に至ったのか。次回はその点を考察します。