4月30日は振替休日のため、勤務校の4月の登校日は27日の金曜日で終わりました。公私ともに激動の4月でとても疲れましたが、新1年次の生徒たちはほぼ順調に、素晴らしい先生方揃いの新1年次担任団はものすごく順調に船出し、長男は大学院、次男は大学という新たなステージで活躍を始めました。共働きの妻は異動がなかったので問題なく、私はこれまで避けていたツイッターを「宇宙よりも遠い場所」のファンのオフ会参加申し込みのために渋々始めたところ、その魅力にとりつかれ、超忙しい中、仕事や家事の合間を見つけて利用しています(勤務時間中は休憩時間以外はやっていませんのでご安心ください)。そのオフ会が行われた群馬県館林では多くの魅力的な方々と楽しく作品の魅力について語り合い、とても光栄な依頼を受け、その翌週は妻とライブ鑑賞、「宇宙よりも遠い場所」作品関連イベントと別のオフ会(若いファン中心)に参加、平日はみっちり仕事という、非常に充実した期間でした。
さて、連載企画「リアル学年主任による『宇宙よりも遠い場所』の学校現場的考察」のコーナーです。第4回は、4話で生徒2人から南極行きのための休学申請が出された多々良西高の対応について。
多々良西高校は架空の高校ですが、エンディングの協力テロップや校門・校舎の画像から考え、桐生市立商業高等学校(略称:桐商)がモデルであることは間違いないでしょう。
http://www.kirisyo.jp/
私は東京都の高校の休学規定については知識がありますが、東京都と群馬県の地域差があるといけませんので、桐商の規定を調べることにしました。検索サイトで「桐生商業高校 休学」と入力すると、すぐに「桐生市立商業高等学校管理に関する規則」を見ることができ、そこには休学や単位認定に関する細かな記載がありました。
http://www2.city.kiryu.lg.jp/reiki/act/frame/frame110000307.htm
休学については以下の通り。
第40条 校長は、生徒が病気その他やむを得ない理由のため3月以上引き続き出席することができない場合は、休学願を提出させなければならない。
2 校長は、前項の休学願を適当と認めるときは、休学を許可するものとする。
3 休学の期間は3月以上1年以内とする。ただし、校長が必要と認めるときは、1年を限り、その期間を延長することができる。
単位認定については以下の通り。
第16条 校長は、生徒が学校の定める教育計画にしたがって教科及び科目を履修し、その成果が教科及び科目の目標からみて満足できると認められるときは、その教科及び科目について所定の単位を修得したことを認定するものとする。
2 校長は、出席授業時数が年間授業時数の3分の2に満たない生徒については、単位修得の認定をすることはできない。
3 校長は、補講その他適切な指導を実施したときは、その時数を前項の出席授業時数に加算することができる。
結論を先に言うと、多々良西高と桐商の規則が同じだと仮定した場合、小淵沢報瀬さんと玉木マリさんの休学申請はほぼ間違いなく認められ、その間授業を休んだ場合の単位も認定される可能性が非常に高いと考えられます。
まず休学についての考察。
休む期間は12~3月までの4か月ですから規則の範囲内。問題は休学理由の「民間の南極観測事業『南極チャレンジ』チームの活動に参加させ(小淵沢報瀬さんの休学申請兼保護者同意書の、画面で確認できた部分に記載)」が「その他やむを得ない理由」と認められるかどうかです。申請書の休学理由の下部は画面上で確認できないため、推測するしかありませんが、最低でも「民間の南極観測事業『南極チャレンジ』チームの活動に参加させるため」とは書かれていたでしょう。もし私が彼女たちの保護者なら「あおぞらテレビの高校生レポーターとして南極を紹介する番組に出演等」という記載も必ずします。配信が始まれば明らかになることなので、あとで学校から「その件は聞いていない」と言われないようにするためです。この件の考察で根拠となるのは、1話Aパート冒頭、学校の正面入口と思われる場所に「生徒たちの活躍」として多数の賞状が展示されていたシーンです。ほんの一瞬のこの場面は、実は「多々良西高の校長先生は生徒の様々な分野での活躍をアピールするのが大好きなタイプで、生徒が高校生として初めて南極観測隊に参加(同行)する、それも2人も、なんてことが起きたら、そりゃ光栄で立派な活躍だ!と判断し、南極からは通学できないんだから『やむを得ない事情』だし、休学承認や単位認定の便宜をはかることなんて当然で、むしろ学校をあげて南極行きを応援し、全校生徒を集めての壮行会もやっちゃいますよ(地元紙や地元テレビ局などが取材している可能性もあり)」ということを4話で視聴者にスムースに納得させるための伏線になっていたのですね。本当に本作スタッフの皆様の伏線の張り方は凄まじいものがあります。というわけで、休学大丈夫です。(追記:少し大げさに書きましたが、実際に高校生が南極に行くことがあったら、ほぼどこの高校でも立派な活躍だと判断され、欠席や単位認定に何らかの便宜をはかってもらえる校外学習として認定されると思います。)
賞状シーンの後には2年3組の書道展示シーンがあり、玉木マリさんの作品「プリンは飲み物 2年3組玉木マリ」によって「玉木マリさんはプリンが大好物で、授業の書道でそれを書き、さらに学年とクラスをアラビア数字で書いてしまうという天真爛漫(天然とも言う)なタイプ」であることを紹介しています。このシーンで私は「多々良西高は『プリンは飲み物』を書道で書くことも展示することもOKな、生徒の個性を大事にする学校」だと示しているのかも?とも思いましたが、さすがにここまでくると深読みし過ぎで、9割方は「生徒が書いたものをそのまま展示していただけ」ということなのでしょう。
考察は少し脱線しますが、2年3組の担任は学年主任の先生で、5話Bパート冒頭で玉木さんのクラス壮行会(たぶんホームルームの時間で)が行われます。ここで玉木さんはクラスメイトから黒板に心のこもった可愛らしいメッセージを書いてもらい、花束をもらい、親友の高橋めぐみさん以外の数人の女子と仲良く会話をします。つまり明るく素直で屈託のない玉木さんはクラスで少なからず愛される存在で、高橋さん以外にもそこそこ親しい友達が何人かいる、それを眺めている高橋さんはそうではない(かも)、という5話ラストシーンへの伏線の一つが張られていたのも見事でした。
なお、東京都の休学についての規則では、さらに「当該休学の理由について客観的に証明し得る書類」の提出も義務付けられています(休学の取扱いについて 四(二))。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/static/reiki_int/reiki_honbun/g1012409001.html
桐商の規則でも東京都ほどはっきり明記されてはいませんが、「休学願を適当と認める」際に同様の書類の提出が求められるでしょう。しかし4話で学年主任の先生はすでに「南極チャレンジ」が作成したと思われる、夏期総合訓練や全体の日程が記載された要項的な資料の提出を受け、二人の前で休学申請兼保護者同意書との日程照合を行っていましたので問題ありません。
続いては単位認定についての考察。桐商のサイトで年間行事計画を確認したところ、年間での授業可能週数は最高でも37週前後(高等学校学習指導要領では授業は年間35週行うことが標準)で、12~3月では10~11週前後。休学期間の授業がすべて欠席扱いだったとしても、他の期間に休まなければギリギリですが出席条件は満たせます。さらに、休学のところで考察した通り、壮行会を開いてくれるほど南極行きを応援してくれる学校および校長先生なのですから、16条2項「補講その他適切な指導を実施したときは、その時数を前項の出席授業時数に加算することができる」を利用し、レポート類の提出やネット環境を利用した課題への取り組み、帰国後の補習やテスト受講等を出席加算する対応をしてくれた可能性が非常に高いと考えられます。最終話のアバン冒頭、昭和基地の自室の暖かな床の上に学校ジャージ姿で寝ていた玉木さんが目覚まし時計を止めた際、右側に付箋のついた教科書(一番上が英語)類が5冊ほど積まれていましたが、おそらくは出席加算のために頑張っていた証しなのでしょう。昭和基地では娯楽は限られていること、16歳で高認一発合格した優秀な三宅日向さんがお友達であること、大人のスタッフの皆さんは研究職の方々を筆頭に相当優秀な方々が揃っているだろうことを考えると、玉木さんや小淵沢さん、さらに白石結月さんの学力が飛躍的に向上している可能性は十分考えられるのです。・・・最後の部分は完全に希望的観測というヤツですが(笑)。
8話のアバンで玉木さんが「学校休んで試験も受けず、受験にだって影響する」と言っていますが、ここまでの考察の通り、玉木さんと小淵沢さんについては多々良西高校での2年生の単位修得や進級の心配はほとんどありません。影響があると考えられるのは「試験も受けず」の部分で、高い評定(5段階評価の5や4)が受けられにくく、内申書の評定平均値が選考に影響する推薦入試やAO入試の際で不利になる可能性がある、ということを意味しているのでしょう。すでに各方面から指摘されている通り、玉木さん、小淵沢さん、三宅さん、白石さんの4人は日本で初めて南極観測隊に参加した高校生および高認資格取得者として、多くの大学の推薦・AO入試に合格できるだろうスペシャルな経験を積んでいると思われます。しかし、ここでの玉木さんの発言は「学校休んで試験も受けないことに対する罪悪感や、日本にいる同級生たちに置いて行かれて受験で不利になるかもしれない感覚」は少しはあるけれど、「一歩踏み出せないままの高校生」「何かをしようとして何もできないままの17歳や16歳」ではなくなったことの方がはるかに重要で嬉しく、「南極に行くことは推薦・AO入試に有利かも」などとは全く考えていない意識の高さが眩しく、素晴らしいものでした。この場面は本作で私が教え子たちに見せたいシーンの一つであり、視聴後に「ぜひみんなも自分なりの一歩を踏み出して欲しいな」と語り掛けたいと思っています。
今回の考察も予定より長くなってしまいました。次回は高校生アイドル・白石結月さんの高校生活や参加の背景等について考察します。
さて、連載企画「リアル学年主任による『宇宙よりも遠い場所』の学校現場的考察」のコーナーです。第4回は、4話で生徒2人から南極行きのための休学申請が出された多々良西高の対応について。
多々良西高校は架空の高校ですが、エンディングの協力テロップや校門・校舎の画像から考え、桐生市立商業高等学校(略称:桐商)がモデルであることは間違いないでしょう。
http://www.kirisyo.jp/
私は東京都の高校の休学規定については知識がありますが、東京都と群馬県の地域差があるといけませんので、桐商の規定を調べることにしました。検索サイトで「桐生商業高校 休学」と入力すると、すぐに「桐生市立商業高等学校管理に関する規則」を見ることができ、そこには休学や単位認定に関する細かな記載がありました。
http://www2.city.kiryu.lg.jp/reiki/act/frame/frame110000307.htm
休学については以下の通り。
第40条 校長は、生徒が病気その他やむを得ない理由のため3月以上引き続き出席することができない場合は、休学願を提出させなければならない。
2 校長は、前項の休学願を適当と認めるときは、休学を許可するものとする。
3 休学の期間は3月以上1年以内とする。ただし、校長が必要と認めるときは、1年を限り、その期間を延長することができる。
単位認定については以下の通り。
第16条 校長は、生徒が学校の定める教育計画にしたがって教科及び科目を履修し、その成果が教科及び科目の目標からみて満足できると認められるときは、その教科及び科目について所定の単位を修得したことを認定するものとする。
2 校長は、出席授業時数が年間授業時数の3分の2に満たない生徒については、単位修得の認定をすることはできない。
3 校長は、補講その他適切な指導を実施したときは、その時数を前項の出席授業時数に加算することができる。
結論を先に言うと、多々良西高と桐商の規則が同じだと仮定した場合、小淵沢報瀬さんと玉木マリさんの休学申請はほぼ間違いなく認められ、その間授業を休んだ場合の単位も認定される可能性が非常に高いと考えられます。
まず休学についての考察。
休む期間は12~3月までの4か月ですから規則の範囲内。問題は休学理由の「民間の南極観測事業『南極チャレンジ』チームの活動に参加させ(小淵沢報瀬さんの休学申請兼保護者同意書の、画面で確認できた部分に記載)」が「その他やむを得ない理由」と認められるかどうかです。申請書の休学理由の下部は画面上で確認できないため、推測するしかありませんが、最低でも「民間の南極観測事業『南極チャレンジ』チームの活動に参加させるため」とは書かれていたでしょう。もし私が彼女たちの保護者なら「あおぞらテレビの高校生レポーターとして南極を紹介する番組に出演等」という記載も必ずします。配信が始まれば明らかになることなので、あとで学校から「その件は聞いていない」と言われないようにするためです。この件の考察で根拠となるのは、1話Aパート冒頭、学校の正面入口と思われる場所に「生徒たちの活躍」として多数の賞状が展示されていたシーンです。ほんの一瞬のこの場面は、実は「多々良西高の校長先生は生徒の様々な分野での活躍をアピールするのが大好きなタイプで、生徒が高校生として初めて南極観測隊に参加(同行)する、それも2人も、なんてことが起きたら、そりゃ光栄で立派な活躍だ!と判断し、南極からは通学できないんだから『やむを得ない事情』だし、休学承認や単位認定の便宜をはかることなんて当然で、むしろ学校をあげて南極行きを応援し、全校生徒を集めての壮行会もやっちゃいますよ(地元紙や地元テレビ局などが取材している可能性もあり)」ということを4話で視聴者にスムースに納得させるための伏線になっていたのですね。本当に本作スタッフの皆様の伏線の張り方は凄まじいものがあります。というわけで、休学大丈夫です。(追記:少し大げさに書きましたが、実際に高校生が南極に行くことがあったら、ほぼどこの高校でも立派な活躍だと判断され、欠席や単位認定に何らかの便宜をはかってもらえる校外学習として認定されると思います。)
賞状シーンの後には2年3組の書道展示シーンがあり、玉木マリさんの作品「プリンは飲み物 2年3組玉木マリ」によって「玉木マリさんはプリンが大好物で、授業の書道でそれを書き、さらに学年とクラスをアラビア数字で書いてしまうという天真爛漫(天然とも言う)なタイプ」であることを紹介しています。このシーンで私は「多々良西高は『プリンは飲み物』を書道で書くことも展示することもOKな、生徒の個性を大事にする学校」だと示しているのかも?とも思いましたが、さすがにここまでくると深読みし過ぎで、9割方は「生徒が書いたものをそのまま展示していただけ」ということなのでしょう。
考察は少し脱線しますが、2年3組の担任は学年主任の先生で、5話Bパート冒頭で玉木さんのクラス壮行会(たぶんホームルームの時間で)が行われます。ここで玉木さんはクラスメイトから黒板に心のこもった可愛らしいメッセージを書いてもらい、花束をもらい、親友の高橋めぐみさん以外の数人の女子と仲良く会話をします。つまり明るく素直で屈託のない玉木さんはクラスで少なからず愛される存在で、高橋さん以外にもそこそこ親しい友達が何人かいる、それを眺めている高橋さんはそうではない(かも)、という5話ラストシーンへの伏線の一つが張られていたのも見事でした。
なお、東京都の休学についての規則では、さらに「当該休学の理由について客観的に証明し得る書類」の提出も義務付けられています(休学の取扱いについて 四(二))。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/static/reiki_int/reiki_honbun/g1012409001.html
桐商の規則でも東京都ほどはっきり明記されてはいませんが、「休学願を適当と認める」際に同様の書類の提出が求められるでしょう。しかし4話で学年主任の先生はすでに「南極チャレンジ」が作成したと思われる、夏期総合訓練や全体の日程が記載された要項的な資料の提出を受け、二人の前で休学申請兼保護者同意書との日程照合を行っていましたので問題ありません。
続いては単位認定についての考察。桐商のサイトで年間行事計画を確認したところ、年間での授業可能週数は最高でも37週前後(高等学校学習指導要領では授業は年間35週行うことが標準)で、12~3月では10~11週前後。休学期間の授業がすべて欠席扱いだったとしても、他の期間に休まなければギリギリですが出席条件は満たせます。さらに、休学のところで考察した通り、壮行会を開いてくれるほど南極行きを応援してくれる学校および校長先生なのですから、16条2項「補講その他適切な指導を実施したときは、その時数を前項の出席授業時数に加算することができる」を利用し、レポート類の提出やネット環境を利用した課題への取り組み、帰国後の補習やテスト受講等を出席加算する対応をしてくれた可能性が非常に高いと考えられます。最終話のアバン冒頭、昭和基地の自室の暖かな床の上に学校ジャージ姿で寝ていた玉木さんが目覚まし時計を止めた際、右側に付箋のついた教科書(一番上が英語)類が5冊ほど積まれていましたが、おそらくは出席加算のために頑張っていた証しなのでしょう。昭和基地では娯楽は限られていること、16歳で高認一発合格した優秀な三宅日向さんがお友達であること、大人のスタッフの皆さんは研究職の方々を筆頭に相当優秀な方々が揃っているだろうことを考えると、玉木さんや小淵沢さん、さらに白石結月さんの学力が飛躍的に向上している可能性は十分考えられるのです。・・・最後の部分は完全に希望的観測というヤツですが(笑)。
8話のアバンで玉木さんが「学校休んで試験も受けず、受験にだって影響する」と言っていますが、ここまでの考察の通り、玉木さんと小淵沢さんについては多々良西高校での2年生の単位修得や進級の心配はほとんどありません。影響があると考えられるのは「試験も受けず」の部分で、高い評定(5段階評価の5や4)が受けられにくく、内申書の評定平均値が選考に影響する推薦入試やAO入試の際で不利になる可能性がある、ということを意味しているのでしょう。すでに各方面から指摘されている通り、玉木さん、小淵沢さん、三宅さん、白石さんの4人は日本で初めて南極観測隊に参加した高校生および高認資格取得者として、多くの大学の推薦・AO入試に合格できるだろうスペシャルな経験を積んでいると思われます。しかし、ここでの玉木さんの発言は「学校休んで試験も受けないことに対する罪悪感や、日本にいる同級生たちに置いて行かれて受験で不利になるかもしれない感覚」は少しはあるけれど、「一歩踏み出せないままの高校生」「何かをしようとして何もできないままの17歳や16歳」ではなくなったことの方がはるかに重要で嬉しく、「南極に行くことは推薦・AO入試に有利かも」などとは全く考えていない意識の高さが眩しく、素晴らしいものでした。この場面は本作で私が教え子たちに見せたいシーンの一つであり、視聴後に「ぜひみんなも自分なりの一歩を踏み出して欲しいな」と語り掛けたいと思っています。
今回の考察も予定より長くなってしまいました。次回は高校生アイドル・白石結月さんの高校生活や参加の背景等について考察します。