ウクライナ紛争のその後を分けた岐路がルハンスク州セベロドネツクの激戦とその後の、ロシア軍の進撃路だと思います。
2022年6月24日 23時11分
激戦地セベロドネツク、ウクライナ軍が撤退開始か 米CNN報道
https://www.asahi.com/articles/ASQ6S6S7MQ6RUHBI051.html
去年の6月約1か月間、セベロドネツクСєвєродонецькでウクライナ軍とロシア軍の激戦が戦われました。当時は、まだロシア軍が圧倒的に優勢に戦いを進めていました。ウクライナ軍は、大きな犠牲を払いながら約1か月戦ったのち撤退しました。
ウクライナ軍が、ここで犠牲覚悟の防衛戦を行った理由は、あとで考えるとドネツク州の他の軍事拠点の防御を固めるためであったと思います。その1か月の間にウクライナ軍は、ドネツク州スラビャンスクСлов'янськ、クラマトルスКраматорськ、バフムト(アルチェモフスクБахмут)などの拠点都市の防御の準備を整えたと思います。これらの都市をロシア軍が制圧するとドネツク州は北部からロシア軍が進出をしたと思います。ウクライナ軍がドネツク州を守ろうと思えば、スラビャンスクСлов'янськ、クラマトルスКраматорськを守り切ることは、絶対条件でした。
ロシア軍は、セベロドネツクСєвєродонецькの激戦に勝利した後、ドネツク州リマンЛиманからハルキウ州イジュームІзюмへと進撃し、ハルキウ州攻略に進路を取りました。この部隊は、ハルキウ市郊外まで迫りました。今回、そちらは省略。
別の部隊は、なぜかバフムト(アルチェモフスクБахмут)攻略に向かいました。
これが、この戦争の岐路になっていると思います。
つまり、ロシア軍の進路を考えると普通ならリマンЛиманの近くである、スラビャンスクСлов'янськ・クラマトルスクКраматорськ方面に進路を取るのが当然だからです。これなら同じ流れの延長線上にあります。補給も同じ経路でできます。もし、ロシア軍がこのように攻撃していればウクライナ軍は、かなり危うかったと思います。
ロシア軍は、そうしませんでした。なぜかバフムト(アルチェモフスクБахмут)攻略に向かいました。
これでウクライナ軍は、救われたと思います。去年の7月頃からバフムトを攻め始めました。バフムトは難攻不落の要塞でした。そのため去年の12月までロシア軍は犠牲を出すばかりでバフムト攻略に大きな兵力を釘付けにされました。その間に起きたウクライナ軍の反撃作戦の成功を考えるなら、バフムト攻略に大きな兵力を振り向けたことがロシア軍のその後の不利を招いたと言えます。バフムト攻めがロシア軍の劣勢を決定付けたと言えると思います。
その後のバフムトの攻防です。
バフムトは、西と南に切り立った大地のような地形です。ロシア軍は、この方角から攻撃したために全く進撃できませんでした。流れが大きく変わったのがワグネルが約5万人の囚人兵を伴う推定6万人の大部隊でバフムト攻略に加わってからです。
ワグネルの指揮官は、それまでの作戦を変更しました。ワグネルの大部隊は、東を大きく迂回してバフムト郊外北東方面から攻め始めました。そして今年の1月に大きな犠牲を払いながら、ソレダルSoledarの攻略に成功します。そのままバフムト郊外北部方面を制圧します。バフムトとその北の拠点都市であるスラビャンスクСлов'янськを遮断しました。これでウクライナ軍は、スラビャンスクСлов'янськ方面からの補給路を失います。
その後、はっきりウクライナ軍が劣勢になります。補給路が西の拠点都市であるコンスタンチノフカКостянтинівкаからの1本だけになったからです。補給が少なくなりバフムト東側の郊外もワグネルが攻略しバフムトの東から市街に迫り市街戦になりました。こうなれば数に勝るワグネルが優位です。
結果、ウクライナ軍は市街を放棄しバフムト市街の西の郊外に拠点を移して防衛戦を継続するしかありませんでした。そしてその西の拠点に対してロシア軍は、南側から猛攻を仕掛けます。これが今年4月から5月初めです。おそらくこのままロシア軍とワグネルが攻め続けたらウクライナ軍は、撤退する以外になかったと思います。
ここでもウクライナ軍に「神風」が吹きます。
ロシア国防省の「ワグネル潰し」を回避するためにワグネルは、バフムト市街を占領した段階で勝利宣言を出してロシア軍と交代して、後方に撤退しウクライナ戦線から離脱しました。
こうしてロシア軍最強の突撃部隊であるワグネルはバフムトを去り、その後消滅しました。もし、ロシア国防省の「ワグネル潰し」が、なければ?
西側からの圧力がなくなったウクライナ軍は、南側からのロシア軍の猛攻を防ぐだけで良くなりました。ロシア軍の猛攻を守り切ったウクライナ軍に今度は、反撃のチャンスが巡ってきました。大規模な攻撃に失敗すると、それに比例して大きな損害を被ります。南側から攻めていたロシア軍は弱体化しました。
そこに付け込んでウクライナ軍の反撃が始まりました。
ウクライナ軍、東部バフムート周辺で前進
2023.07.26 Wed posted at 06:35 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35206988.html
現在、クリシチウカ村Klishchiivka方面で激戦が続いているようです。しかし、ウクライナ軍はその南の(約1km)アンドリーウカ村Andriivkaを攻略中のようです。ここをウクライナ軍が制圧するとその北側のクリシチウカ村Klishchiivkaは、南と北から挟撃されます。
幹線道路のT-0513沿いにウクライナ軍は、順調と言うほどにスピードは速くありませんが着実に前進しているようです。前にも書きましたが、この付近をウクライナ軍が完全に制圧すると、バフムト市街のロシア軍への補給路は、その東にある幹線道路M-03だけになります。幹線道路のT-0513から幹線道路M-03までは、東に約10kmくらいです。
幹線道路のT-0513を完全にウクライナ軍に制圧されると、次は幹線道路M-03が、ウクライナ軍の攻撃目標です。
2本の幹線道路をウクライナ軍が制圧すると、その北側にいるロシア軍は、補給路を失います。
幹線道路のT-0513の東側にウクライナ軍が進出するとその可能性が高まります。この幹線道路の攻防でロシア軍が負けると、バフムトの攻防はウクライナ軍が勝利する可能性が高くなります。距離がどれだけ進んだかではなく、2本の幹線道路をロシア軍が守れるか、ウクライナ軍が制圧するかの戦いです。ロシア軍にとっては、日を追う毎に状況は、悪化しつつあると言うのが現状です。
この戦争では、ウクライナ軍に「神風」が4回くらい吹いています。その理由は、ロシア軍の作戦計画の誤りと内部の権力闘争です。負けるべくして負けつつあると言えます。