きつつき工房 ブログ

きつつき工房の職人の独り言

chatGPTで遊ぶ

2023-02-14 13:17:11 | 社会・時事

 最近話題のchatGPTを使ってみました。

 chatGPTというのは、アメリカのOpenAIという組織が開発した対話型人工知能(AI)で、インターネット上で質問の文章を送ると、まるで人が答えているように滑らかな文章で答えが返ってきて、対話できるロボットのようなものです。自然な文体で、どんなことでも答えてくれて、会話ができるという能力の高さから、昨年末に発表されて以来数か月で世界中を席巻する話題になっています。もちろん流暢な日本語も話せるのです。

 すでに多くの人やメディアが指摘しているように、文章生成能力の高さには感心しますよ。一昔前(二昔くらいか?)の英日翻訳ソフトで英語を訳すと、単語の意味はわかるにしても、とても日本語とはいえない訳文が生成されてくるのを経験している身としては、chatGPTがつくり出す日本語は、俺よりうまいというレベルに達していると言ってもいいくらいです。

 例えば、「chatGPTでつくられた文章と人間が作った文章を判別できますか?」と質問して返ってきた答えは以下のとおりです(原文のまま)。

 「はい、一部の場合ではChatGPTが生成した文章と人間が作った文章を判別することができます。文章のスタイル、言葉の選び方、文法、構造などから人工知能モデルが生成した文章と人間が作った文章を識別することができます。ただし、完璧な判別はできない場合もありますので、100%正確な判別は保証できません。」

 冒頭の「一部の場合では」というところが、人間ならば「完全にとはいえませんが」とか「全部ではありませんが」という言い回しの方が自然な感じになるでしょうが、間違いというわけでもなく、それ以外は全体として文法の誤りもなく、「てにをは」も正確です。

 ただ、まだ苦手な語彙もあるようで、対話の中でchatGPTが「申し訳ございます」という言い回しをしたので、それは「申し訳ございません」の誤りだよと指摘したところ、律儀にも次のような答えが返ってきました。

 「申し訳ございます。確かに「申し訳ございます」は誤りで、正しいのは「申し訳ございません」です。このような誤りがあったことを謝罪いたします。本当にお手数をおかけして、大変申し訳ございません。」

 最初は申し訳ございますと誤りを繰り返しておいて、最後は申し訳ございませんと正確になっているのは、ご愛敬でしょう。

 それにしても、もっと複雑な長文でも、ほんの数秒で答えが返ってくるので、「中に人がいるのか」と思ってしまうほどで、AIの進歩は大したものです。

 ちなみに、いつも丁寧な言葉づかいで、変な質問にも答えてくれるので、相手が機械とはいえ、つまらない質問をしているとだんだんこちらが申し訳なくなってきます。乱暴な言葉づかいをしたり、変な利用者とケンカすることはないのか聞いたら、

 「私は乱暴な言葉づかいや、ケンカや人を侮辱する表現は使用しません。私は、利用者の方々に正確かつ丁寧な回答を提供し、役に立つ情報を提供することが目的です。利用者の方々が快適かつ安心して利用できるよう、敬意を持ったコミュニケーションを心がけております。どうぞお気軽にお問い合わせください。」

 という優等生のお答えでした。


 ただし、文法的には正確なのですが、その書いてある内容は、相当怪しいものであるというのが、困ったというか、面白いところです。メディアで「chatGPTはもっともらしいウソをつく」とか「大ぼら吹き」と言われているとおりなのです。

 自分で、つまんない質問するなよと思いながらも、次のように聞いてみました。

 「日本の歌手、美空ひばりのことを教えて。」

 chatGPTは、たちどころに数秒で答えます(以下、下線は筆者)。

 「美空ひばり(みそらひばり)は、1927年生まれで、日本の女性歌手・女優です。本名は椎名 菊次郎(しいな きくじろう)で、広島県出身です。
 1950年代から1960年代にかけて、数多くのヒット曲を生み出し、戦後の日本を代表する歌手の一人として人気を博しました。代表曲には「川の流れのように」「愛燦燦」「リンゴの唄」などがあります。
 また、映画にも出演し、主演作も多く、映画「細雪」などでも活躍しました。
 美空ひばりは、日本の音楽史において、独自の世界観と歌唱力、個性的な存在感を持ち、多くの人々から愛されています。彼女の音楽や芸能活動は、現在でも多くの人々に影響を与えています。」

 感心してはいけません。代表曲に「柔」や「真っ赤な太陽」が入ってないというのは個人の感想ですが、美空ひばりは、1937年生まれ本名は加藤和枝出身は神奈川県です。映画「細雪」に出演した形跡はありません。美空ひばりが出演した文芸映画といえば何といっても「伊豆の踊子」じゃないですか(これも個人の感想)。

 まったく間違っていることでも、堂々と、流暢な日本語でAIに言われると、つい信じたくなってしまうではないですか。

 だいたい椎名菊次郎って誰だよ――聞いてみました。

 「美空ひばりの本名は加藤和枝です。椎名菊次郎というのは誰ですか。」

 「おっしゃる通りで、訂正いたします。美空ひばりの本名は加藤和枝(かとう・かずえ)であり、椎名菊次郎(しいな・きくじろう)という名前は、別の俳優の方のお名前でした。お詫び申し上げます。」

 素直に謝るところにはたいへん好感が持てますが、最初の回答の内容は、知ったかぶりの眉唾物といっていい内容で、これをそのまま信じて何かに利用する人が出てくると大変ですね。

 AIは、ネット上の膨大な文字データを自ら学習して、同時に出てくる単語を関連のあるものとして覚え込み、そこから回答をつくりだすそうです。美空ひばりと椎名菊次郎(この名の俳優が本当にいたかどうか、私は不知)、本名という言葉が同時に書かれている文章があったんでしょうね。それを覚え込んで、もっともらしく本名として、しれっと教えてしまう。なかなか、たいしたやつではあります。chatGPTは負けず嫌いなのか、わかりませんとは言わずに、うそでもなんでもともかく答えてしまう性格のようです。

 よくいわれるように、学生がレポート試験などにchatGPTの答えを丸写しをしたら、落第ですよ。本稿冒頭の会話にみるように、AI語は、AI自身によっても、人間がつくった文章と判別できちゃうそうですから、すぐにでも、そういう判別ソフトが開発されて、教授の必携ツールになるでしょう。
 企業や役所が仕事上の報告書などに丸写ししたら大問題になり、被害も生じそうです。あくまで参考として自分で調べ直さなければいけません。もっとも、chatGPTは賢いので、社会問題などについての質問には、複数の考え方、見解を示して、いろいろな見方がありますなんて答えをしてくれます。

 OpenAIのサイトには、

・誤った情報を生成することがある
・時折、有害な指示や偏った内容を生成する可能性がある
・2021年以降の世界と出来事に関しては限られた知識(しかない)

 という注意書きが書かれています。


 ともあれ、AIと人間みたいに対話できるのは、昔SF小説で読んだ未来社会が現実になったようで、遊ぶのにはおもしろいですね。

 OpenAIのサイトでSign upして、メールアドレス、携帯番号、氏名を登録すれば、無料で使えます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あけましておめでとうございます

2023-01-01 00:09:22 | 社会・時事

あけましておめでとうございます。

2023年の年賀状は

エゾナキウサギです。

北海道の山地にだけ棲む耳の丸い小さなウサギで、

氷河期の生き残りです。

今年もよろしくお願いします。

きつつき工房のサイトには過去の年賀状の切り絵があります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シモバシラ(植物名)の霜華

2022-12-24 15:19:57 | 社会・時事

 12月24日、日本列島は寒気に覆われ、日本海側や西日本では大雪のところもありますが、東京は晴れて寒い朝です。

 家の近所の浅間山(東京都府中市)にシモバシラ(植物名)を探しに行きました。

 葉を落とした木の枝越しに空が青く澄んでいます。風は冷たい。

 富士山はよく見えていますが、山頂付近は雪雲に覆われています。

 シモバシラはしそ科の植物で、秋に花が咲いた後、冬には地上部はほとんど枯れてしまいますが、根は生きていて盛んに水を吸い上げ、それが枯れ残った茎からしみ出て霜柱をつくるのです。枯れた茎は、霜をつくるのによほど好都合な構造なんでしょう、茎の周りに大きな霜柱ができます。それが白い花のようで、霜華というわけです。

 寒くなったので、できているだろうかと思いましたが、期待どおり、きれいな霜華が咲いていました。今冬初見です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浅間山のムサシノキスゲ(東京都府中市)

2021-05-03 09:30:19 | 社会・時事

去年に続いて連休でも出かけられないので、近所の浅間山で春の花を見ながら散歩しました。

キンランはもう盛りを過ぎて、ちょっと黄色が褪せています。

ギンラン(ササバギンラン)はキンランよりちょっと遅れて咲くので、まだ鮮やかです。

ホウチャクソウはいまが盛り。控えめな感じでいい花ですね。

エゴノキは満開です。

ハンショウヅルの花も開いています。

この山限定のムサシノキスゲはあちこちでたくさん咲いています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

汚染水を海に流さないで

2021-04-17 21:14:06 | 社会・時事

 福島第一原発に大量に溜まっている「水」を2年後に海に放出するという計画を政府が決めました。

 私はこのニュースを聞いた瞬間に、なんてヤバいことするんだと思ったのですが、マスコミの報じ方をみると、「処理してきれいにした水を流すんだから大丈夫」「トリチウムを含む水は外国でも海に流している」という方向に誘導する圧力がかなり優勢なようで、危険だとか言いたてるのはむしろ風評被害を拡大する、反対している中国や韓国を利するとか言われて、自称愛国者のみなさんからの攻撃の対象になりかねない気配です。怖いですね。

 でも、「処理したきれいな水」「外国でも流している」というのは本当のことでしょうか。中韓が反対しているからと条件反射で日本は正しいと反応する人たちには何を言ってもむだだと思いますが、風評被害を心配し、被災地の人たちに心を寄せる人ならば、ぜひ冷静に考えてもらいたいと思います。

 まず、福島第一原発で発生している大量の水は何かというと、壊れた原子炉から溶け出た核燃料や一緒に溶けた炉内の金属などが混じって核燃料デブリとして底に溜まっているのを冷やした水です。この水は核燃料デブリに直接触れるので、非常に多種類かつ高濃度の放射性物質で汚染されます。これに周囲から流れ込む地下水が混じって量が増えた水をタンクに溜めているわけです。文字通りの汚染水です。メルトダウンした原発は福島にしかないのですから、こんな水は世界中で福島にしかありません。人類がこれまで経験したことのない超汚染水といってもいいでしょう。

 この水を処理したら、飲んでも大丈夫なほどきれいな水になるのでしょうか。特別に腹黒い内臓をもつ麻生さんなら飲んでも大丈夫かもしれませんね。

 東電や経産省は、これまで、多核種除去装置(ALPS)を使って汚染水を浄化した処理水(取り除くことのできないトリチウムを含む)をタンクに貯蔵していると言ってきました。まるで、いまタンクに溜まっている水は、トリチウム以外はきれいに取り除いた水であるかのような言い方ですが、これはウソなんです。経産省自身が4月13日に「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」(注)という発表を行い、そのなかで「過去に発生した浄化装置の不具合や、汚染水が周辺地域に与える影響を急ぎ低減させるための処理量を優先した浄化処理等が原因で、現在、タンクに貯蔵されている水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っています」と言い直したのです。つまり、いまタンクにある水のほとんどは基準値以上の放射性物質(核種)を含んだ不完全処理水であり、これは普通の言い方では汚染水だということです。これをもう一度ALPSで浄化するなどして、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」(これを「ALPS処理水」と再定義)にして海に放出するとしたのです。なんだ、まだきれいになった処理水じゃなかったんじゃん、とツッコミたいところです。

  では、これから本当にきれいにできるのかというと、かなりあやしいと言わざるを得ません。ALPSでは原理的にトリチウムは除去できないのですが、それ以外の放射性物質も、一回はALPSを通したのに取り切れなかったわけです。それをもう一回通したら全部取れるのか保証がありません。本当に取り切れるものならやって見せてよと思うのですが、そんなデータはまだないのです。つまり、これから浄化してきれいな処理水をつくるつもりだけど、ともかく2年後には海に流しはじめちゃうから、よろしく、ということを決めてしまったということです。ひどいですね。

 トリチウム以外の放射性物質が取り切れないということは、経産省だって予想しているようです。先の定義変更の発表では「ALPS処理水の処分の際には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保することとしています」と言っています。「トリチウムを含む放射性物質」と言っているのだから、トリチウム以外の放射性物質も残っていることを想定しているということですね。「2次処理や希釈によって」と言っているのだから、ALPSを通すだけでなく、「希釈」という手段もつかって規制基準を下回らせるということですね。つまり、多種の放射性物質が取り切れずに残った水を薄めて基準以下にして海に流すということです。薄めて流しても、その分たくさん流せば、海に出る放射性物質の量は変わりません。飲んでも安全という人には、500倍に薄めたコップ一杯の汚染水を500杯飲んでみてもらいたいところです。

 トリチウムを含む水は外国の原発でも海に流しているというのはどうでしょうか。
 外国や日本でも福島以外の原発で流しているのは、正常運転している原子炉内の核燃料とは厳重に隔離された区域を流れてきた冷却水です。隔離されていてもトリチウムは発生して、これを除去するのは難しいので、基準以下か監視したうえで流しているわけです。そういう冷却水と、核燃料デブリに直接触れた汚染水を一緒にして「外国でも流している」というのはミスリードです。福島第一原発の汚染水は、人類が経験したことのない汚染水なのですから、特別扱いしなければならないものです。

 また、トリチウムは基準以下なら安全だというのも、ちょっと乱暴な言い方で、トリチウムだって放射性物質で危険があるのですから、できる限り環境中に放出しない方がいいのは間違いありません。

 以上のように、2年後と期限を決めて汚染水を海に流してしまうというのは、やっぱり相当ヤバいことなのです。実際の放出までには時間がありますから、よくよく考えて、世論の力で放出をやめさせるようにしたいものです。

(注)経産省「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」

   https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html

 

コメント (17)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする