菅首相が、日本学術会議が推薦した新会員105人のうち6人を任命しませんでした。
過去に例がないことで、菅首相は、この6人が嫌いだったのでしょうが、法律に根拠をもって内閣から独立した地位にある学術会議の会員を、好き嫌いで任命拒否することは許されません。
公選制から推薦制に変わった学術会議法改正時の1983年の国会で、再三にわたって政府は、首相の任命権は形式的なもので、学術会議が推薦した人はそのまま任命する、拒否権はないと答弁しています。あの中曽根首相も、そう答えているのです。
それなのに、菅首相は(安倍前首相の判断の継承だとしても)、6人の任命を拒否して、その理由も全く説明しません。法律に基づいて任命したと言っていますが、まったくの法違反を犯しているのです。
6人の学者は、戦争法(安保法制)や共謀罪に反対するなど政権に批判的な言動をしたことのある人で、菅首相はそのことを恨みに思って任命拒否の意趣返しをしたつもりなのでしょうが、権力者にたてつくものは人事で干すということがまかり通れば、独裁政権になってしまいます。
まして、戦争を止められず、国策に沿った科学しか研究できなかった戦前の科学者のあり方の反省の上に立って、内閣から独立して、科学の立場から自由に意見を述べる学術会議の人事を支配しようというのは、学問の自由の侵害、思想信条によって特定の人を差別する行為です。
戦前の日本がなぜ戦争に突き進んだのかを、膨大な史料を実証的、俯瞰的に研究して記述した日本近現代史の第一人者の加藤陽子先生も6人に含まれているというのが、きわめて象徴的です。
政府におもねる学者しか生き残れないような日本にしてはなりません。その弾圧は、すぐに庶民にまで及びます。
菅首相は、なったばかりですが、このようなファシズムに通じる暴挙をおこなうようでは、もう、すぐにやめてもらわなければなりません。
これはそれくらいの重大事件です。菅首相が、やりすぎたと後悔するような大問題にしなければならないと思います。