妖怪大魔王・コバ法王日記

オートバイを分解して磨き、正確に組み立て独自理論でラインを探り、ストップウォッチと頭脳で感性を磨き、日々の想い語ります

フロント車高に関する考察(その1)

2022-04-05 22:23:14 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座

 
フロントの車高調整は、

タイヤ、リアのプリロード調整、そしてリアの車高の次に行なう最も基本的な調整項目だ。 雑誌やネット記事でよく目にする、「ダンパー(通称:ショック)は〇〇で、」とか、「このバイクのイニシャルはこうで」とかの記事しか目にしない人にとっては信じられなだろうが、どんなに高性能で高価なタイヤやダンパーをつけても、基本的な調整を正確に施さなければ性能を正しく発揮できないだけでなく、タイヤのグリップを失いやすく、却ってノーマルより悪くなる事は珍しい事ではない。 ダンパーやイニシャルのダイヤルを、秘密の金庫のダイヤルを回す様に、色々と回してみたって、基本的な調整がとれてなければ、厚化粧の様に誤魔化す事しか出来ないのだ。

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さて、話を戻して、基本調整項目の「フロントの車高調整」とは、リアの車高にフロントの車高を合せる調整の事だ。低速走行でチェックすれば、リアとフロントが同期して旋回を始める “フロント車高” は一ヶ所しかなく、それを外れると バランスが崩れた状態になる事は、少し慣れれば誰でも見ていて分かる程に簡単に出来る事。 ただ、今回、疑問に感じて考察をしてみたい事は、何故? フロントの車高の 1㎜の違いで フロント(前輪)の動きが変わってしまうのか? という事だ。
    
最初に考えてみた事は、フロント車高の調整によって キャスター角とトレール量が変わってしまうから、という仮説だ。しかし、ホイールベース が 1400㎜ 程ある車両で フロント車高の 1㎜ の変化で、果たしてどれ程にキャスター角やトレール量に変化が起きるかと計算してみても、乗って感じる変化の大きさとは較べられない程に小さい値の変化にしかならない。

そこで、次に考えてみた 仮想モデルが、フロントの車高を大きく変更しても キャスター角もトレール量も変化しない車両だ。実際には実在はしないだろうが、フレームのステム部の構造だけの問題なので、そういう仮想モデルは実現可能だ。それが 下の図だ。

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左側がフロント車高が低く、右側へいく程にフロント車高が高くなる。 キャスター角もトレール量も変化しないし、ホイールベースも同一にすれば、どの仮想モデルでもホイールアライメントは完全に同一だから、挙動も同じになる筈だが、現実の体験としては大きな違いが生まれる筈なのだ。この事が、悩みの本質であり、探究を深めて考察を深めて、明確な物理法則を見つけ出して、誰にも理解しやすい形で説明できる様になりたいという探究心に火を点けたのだ。

そして、考えている内に考え付いた一つの考えをイラストで表すと以下の様になる。

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イラストのように、立っているモノを傾ける際、どこを持って傾けるかによって傾けやすさやコントロール感が違ってくる事は分かるだろう。それは、きっとオートバイ側からの反応にも違いを生む事は間違いないだろう、とは言える筈だ。しかし、もう一つ、決め手に欠ける気はするし、きっと 別な方面から解読していく必要があるだろう。 誰か、この「答え」を知っている人がいれば、是非、教えてください。




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前後の車高バランス調整の後、ストローク位置の確認が絶対必要

2022-04-05 16:19:19 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座

   
3月27日開催、『オートバイとライダーのための “クリニック” 』で利用したチェック用コースを掲載しましたので紹介します。

今回の “ クリニック ” には、フロントサスペンションのスプリングを 約 2割ほどスプリングレートが低い仕様に変更して、その変化の確認と「前後の車高バランス調整」を受けたい方が受診されました。 車両は GSX-R1000で、純正仕様のスプリングレートは 1.0 kgf/mm との事(一般車両の中では最もハードな部類)で、その操縦性や安定性に不満があり、よりレートが低いスプリングに交換しても納得できなかったとの事。そこで、今回(恐らく 3~4回目のスプリング交換)は、レートが 0.85 Kgf/mm のスプリングから 0.70 Kgf/mm へと交換されたとの事でしたので、当然、確認と調整作業が必要です。

 

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確認と調整作業について説明すると、おおまかに言って 3段階あります。 最初は、10 ㎞/h 程度の低速走行で、“前後の車高バランス” が崩れていないかを確認します。 正しくバランスするポイントから少しでもずれていると、車両の動きが変わるので簡単に確認ができます。(安全が確保された路面が完全に平坦で良質である必要はありますが)
そして、調整作業は フロントフォークの固定位置を上下方向に ミリ単位で変更して、前後の車高がバランスする “バランス(調和)点” を探し出して、基本的には “バランス点” に固定します。
    
残る 二つの段階は、速度域や荷重域で言えば「中速または中荷重域」と「高速または高荷重域」での フロントの車高の確認と調整が必要です。その理由は、オートバイの楽しさ・操縦性や安全性は、フロントサスペンションがストローク(伸び縮み)する範囲に大きく左右されるからです。 特に、フロントサスペンションの分解整備を行なった後では、内部のオイル量を分解以前と全く同じにする事は出来ないので、必ず特性は変化しますので調整が必要です。まして、スプリングレートを変更した後であれば、低速度・低荷重域以上の領域では、ストローク位置が大きく変わるので、必ず調整を行なう必要があります。この作業を怠ると、特に高速・高荷重域で不必要なストロークを許す事になり、最悪の場合は重篤な結果に繋がるからです。

そこで、今回のクリニックでは、低速・低荷重域で前後の車高バランスの調整を行なった後、先ず、中速・中荷重域でのフロントサスペンションの基本的なマナーの確認をしてもらう事にして、その為の「チェック用コース」です。
   

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フロントサスペンションの調整(セッティング)を緻密に行なった経験が豊富な方であれば別ですが、安全性確保の為に、「残ストローク量」(フルボトムストロークさせた時の車高値)が 何ミリ以上必要なのか、走行確認して導き出す事は簡単ではありません。車両とライダー、そしてフロントタイヤの銘柄や摩耗度、設定値によっても変化しますが、最も安全性を脅かす走行条件、例えば 高速道路のコーナーや山岳の有料道路の下り坂コーナーの途中で、路面のギャップ・凹に遭遇した場合、フロントサスペンションにはかなりの高荷重が掛かり、フロントサスペンションは一瞬フルボトム状態に近づきます。そんな時、安全性を失わない為にも、“クリニック” での「中速・中荷重」域と「高速・高荷重」域での確認が必要なのです。
    
今回の “クリニック” での現場の状況や、「前後の車高バランス調整」の解説などは、後日、改めて 公式Webサイトで行ないますし、待ちきれない方や質問・要望のある方は、遠慮なくご連絡ください。

※ なお、ストローク位置の調整は 油面レベル(空気量)の変更でしか行なえません。 プリロード(イニシャル荷重)やダンパー調整は全く目的が違う為、便法でしか利用するべきではありません。


【 20220327・クリニック、中速域・チェック用コース 】
https://gra-npo.org/data/course/2022/20220327_c.html



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https://gra-npo.org

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