妖怪大魔王・コバ法王日記

オートバイを分解して磨き、正確に組み立て独自理論でラインを探り、ストップウォッチと頭脳で感性を磨き、日々の想い語ります

セッティング講座 ・ リアの車高(調整)編 <その 3>

2014-07-24 23:08:40 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座

では、いよいよ! 「スィングアームの垂れ角」の大切さ(作用)を図解を入れて説明をしよう。

これが理解できて、実際にセッティング(調整)へ応用できれば、間違いなく皆のオートバイは今よりずっと楽しく安全に走るようになるぞ。
だから、もし分からない説明や用語が出てきたら、コメント欄を利用して質問を送信した方がイイぞ。


【 オートバイを前に進めるのがスィングアーム 】

この講座の最初に、「 オートバイは、どうやって前に進むか、知っているか? 」と質問したが、「 スィングアームがあるから前に進む 」が正解じゃ!

では、それを下の図を使って説明しよう。


リアタイヤ(ホイール)は、エンジンの力で回転する事は皆もよく知っているじゃろう。 でも、回転するだけでは前には進まんのじゃ。

実は、リアタイヤ(ホイール)は、その中心を 車軸(アクスル)という軸(棒状の部品)で固定されておる。
そして、リアタイヤ(ホイール)がエンジンの力で回転すると、その回転につれて車軸(アクスル)が路面と平行に前方に動く・移動するのじゃ。

ここまでは分かるかな。
では、次の図に移ろう。


路面と平行に前方へと移動する 車軸(アクスル)は、スィングアームという長い棒状の部品に固定されていて、そのスィングアームの前方はピポット(スィングアームピポット)という所でオートバイの車体に固定されとるのじゃ。

だから、リアタイヤが回転すると ⇒ 車軸が前方へ移動 ⇒ スィングアームも前方へ移動 ⇒ 車体も前方へ移動、という 具合にオートバイは走るようになっているのじゃ。
皆のオートバイも、電動バイクも、シャフトドライブのオートバイも、前へ進めるのは スィングアーム という大切な部品があるからなのじゃ。


【 効率良く進むための スィングアームの角度は? 】

2回前の講座で、「人力車」の説明したじゃろう。

 


人力車の場合には、人が前から引っ張るから力の入り方が逆になるが、タイヤ(ホイール)と車軸、そして梶棒(スィングアーム)との関係はオートバイと同じじゃ。

では、人力車を引く場合には梶棒(スィングアーム)は水平(路面と平行)にする方が効率良く引けると書いたが、オートバイの場合も同じだろうか?


先に出した図を見ると分かると思うが、オートバイを前へと押しているのがスィングアームだから、スィングアームは水平(路面と平行)になっていた方が良い! と考えるのが当然だろう。


【 スィングアームが水平の場合を考えてみよう 】

では、ここでスィングアームが水平の場合を考えてみよう。
下の図を見てほしい。
図の右側は オートバイが静止状態 (ライダー乗車時 = 1G'時)で、左側が エンジンの力でタイヤを回転させて加速した場合じゃ。


発進直後(加速直後)は スィングアームは水平で効率良くオートバイを前進(加速)させるが、困った事に発進(加速)させると「荷重移動」という現象が必ず起きるのじゃ。
この「荷重移動」というのは、電車やバスに乗っている時、その加速や減速(ブレーキ)につられて、身体が前や後ろの方向へ力を受けるのと同じなのじゃ。

オートバイの場合にも、発進(加速)した場合には、オートバイ(とライダー)は後ろの方向へと力を受けて、その重み(荷重)も前から後ろへと移動(荷重移動)してしまう。
後ろ側へと荷重が移動してしまうと、オートバイにはサスペンションがあるから、サスペンションの働きで車体の後ろ側が沈み込むのじゃ。

車体の後ろが沈み込むと、スィングアームが車体に固定されとるピポット(スィングアームピポット)も一緒に下へと移動する。でも、リアタイヤ(ホイール)の中心の車軸(アクスル)の高さは変わらないから(ちょっとだけ変化するが)、結果としてスィングアームは“前下がり”になってしまうのじゃ。

一旦、スィングアームが前下がりになってしまうと始末が悪い。
エンジンの力で車軸(アクスル)が前方へと進もうとするほど、その力でピポットを下側へと押し下げようとするのじゃ。

効率良く前へと進めないのも問題だが、それ以上にオートバイの走行安定性を大きく損ない、乗っていても不安感が強く、タイヤのグリップ力を大きく損なってしまうのじゃ。
だから、スィングアームは水平の設定は無く、ほとんどのオートバイのスィングアームには“垂れ角”がついていて“後ろ下がり”になっているのじゃ。

( 加速時にリアサスペンションが沈み込む設定では、リアタイヤのグリップ力が発揮し難く、特にターン中の加速で転倒へと繋がる恐れがあり、ライダーも不安定感を感じます)

では、次回の講座では、最適な“垂れ角”について説明して、実際に皆のオートバイで「最適な垂れ角」にする調整方法を説明する。
また楽しみにしてくれ!
 












セッティング講座 ・ リアの車高(調整)編 <その2>

2014-07-14 22:52:43 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座


前回の解説では、オートバイの「 スィングアームの垂れ角 」はオートバイにとって大切な要素(ジオメトリー)と書いたが、実は少し話をはしょり過ぎたようだ。

早速に、読んでくれた方から「スィングアームの垂れ角って・・? わかりません!」と指摘を受けたんじゃ。

いくら大切じゃ!と言ったって、「スィングアームって何?」と思っている人も居たじゃろう。
きちんと解説を進めんかった事をお詫びする。
既に言葉(用語)が理解できている人も居ると思うが、大切な所じゃから、もう一度説明させてくれ。


【 スィングアームって? 】

みんなの乗っている殆どのオートバイには、「スィングアーム」という部品が付いていて、その「スィングアーム」はとても大切な働きを任されている事から説明しよう。


上の図を見て欲しい。
「スィングアーム」という部品は、リアホイール(タイヤ)とオートバイの車体(フレームまたはエンジン)を結びつけている部品じゃ。
リアホイールが取り付けられている車軸(アクスルとも言う)と車体側のピポットの間にある部品で、上の図(CB1300SF)の場合にはアルミの地肌色(銀色)の部分じゃ。

その「スィングアーム」があるから、リアホイールは外れたりせず地面にエンジンからの力を伝えられるし、リアサスペンションの大切な働きが出来るのじゃ。

ぜひ、皆も色々なオートバイの「スイングアーム」を観察しておくれ。
色や形や大きさなど、オートバイによって色々と違っているけど、どのオートバイでも共通する特徴に気付く筈じゃ。

そう、「スイングアーム」は斜めになっとる。
リアタイヤの車軸(アクスル)側は低くて、車体側のピポット側が高くなっとる。
これが、「スィングアームの垂れ角」と言って、ほとんどのオートバイに必要なんじゃ。


【 スィングアームの垂れ角の目的 】

では、もう一度、図を見ながら説明しよう。( モデルは、Ninja 1000嬢だ )


Ninja1000 の場合、スィングアームは黒いからちょっと見にくいが、リアホイール中心部を固定している車軸(アクスル)と、車体側でスィングアームを固定しているピポットを確認して欲しい。
その間にあるのがスィングアームだ。

では、実際にライダーにまたがってもらおう。
(※ 実際にライダーが乗車した状態=1G'時 で考えるのが基本じゃ )


1本の赤色線は スィングアーム(車軸とピポットを結ぶ線)で、もう一本の赤色線は地面と平行の線で、2本の赤色の線が交わる角度が“ スィングアームの垂れ角 ”なのじゃ。

この説明で、「スィングアームの垂れ角」の事はある程度理解してもらえたじゃろう。
それに、ほとんどのオートバイには 「スィングアームの垂れ角」がある事もわかってくれたじゃろう。

そこで、ワシから皆に質問じゃが、いいかのぅ?

質問 1.は、 「スィングアームに垂れ角がつけられている理由は知っとるか?」
質問 2.は、 「スィングアームの垂れ角は何度でもいいのか?」


【 ほとんどの人が知らない垂れ角の重要性 】

実は、「スイングアームの垂れ角」(乗車時 = 1G'時)は、オートバイの走行時の安定性を左右する大きな要素だから、その角度が適切に調整されていないと乗っていて怖く感じるばかりか、時にはリアタイヤのグリップが不安定になって転倒する危険性さえ大きくなるのじゃ。

しかし、そんなに大切な「スィングアームの垂れ角」なのに、その角度がつけられている理由や、最適な角度の求め方(調整の仕方)をきちんと解説されている本は殆ど無い。それに、ベテランライダーや熟練整備士でも正しく回答できる人は少ないのじゃ。

だから、質問の1.と2. の答えが分からなくても当たり前だし安心して欲しい。
そんな皆の為に、出来るだけ分かりやすく説明をしていくので、一緒に付いて来て欲しいんじゃ。

そうすれば、オートバイの事をもっと身近になって感じてやれるようになるし、以前に解説したリアサスペンションの「プリロード調整」のもう一つの大きな目的を知る事に繋がるのじゃ。

ここで、最初に“プリロード調節の結論”を言っておこう。
「 プリロード調整は、スィングアームの垂れ角調整のために優先して行なうべきで、1/3調整は補足的に考えるべき 」

一般的によく言われている、リアサスペンションは乗車時(1G'時)に作動域の1/3の位置を基本に調整する、という事に反している様に聞こえるが、スィングアームの垂れ角の重要性を考えれば、垂れ角を適切にする調整を優先するのが当たり前だという事は理解できると信じている。

また、最適なスィングアームの“垂れ角”はライダーに合わせて一つしかなく、それ以上でもそれ以下でもオートバイは本来の能力は十分に発揮させられず、オートバイとの一体感は味わえないという事も理解できるじゃろう。

では、この続きは次項まで、楽しみにしといてくれ。
 













セッティング講座 ・ リアの車高(調整)編 <その1>

2014-07-11 22:40:03 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座

オートバイのセッティングの進め方には、守るべき順番がある。
一番目は“タイヤのエア圧調整”(タイヤが一番大きな影響を与えているので当然!)で、二番目は前回まで説明していた“リアサスペンションのプリロード調整”じゃ。

そして、次に続くのが“リアの車高調整”だが、みんなの乗っている殆どのオートバイには調整機構は付いていない。
付いているのは、一部の車種(イタリアの赤いのとか・・)とリアサスペンションのダンパースプリングユニットを交換しているオートバイだけじゃ。


【 リアの車高(スィングアームの垂れ角)の大切さ 】

じゃあなぜ? リアの車高調整の説明をしようとしているのか?

「 俺のには無いから、読まなくていい? 」
「 オートバイを買い替えろって? 」

いやいや、慌てるでない。
“リアの車高”(スィングアームの垂れ角)は、オートバイにとって、とても大切な要素(ジオメトリー)だし、“リアの車高”の大切さを知れば“プリロード調整”の隠れた大切さにも気付く筈じゃ。


【 オートバイはどうやって前に進むか、知っているか? 】

「“リアの車高”はオートバイの正しい前進に関係している」と、急に言っても理解できる者は殆どおらんじゃろう。
残念ながら、オートバイ雑誌や専門的な本には一切書いてないから、殆どの者が知らなくて当然だろう。

では、理解がしやすい様に、もう少し簡単な事から説明をしよう。
ここで、質問じゃが、「 オートバイは、どうやって前に進むか? 」知っているだろうか?

アクセルを開けるから・・?
エンジンが回っているから ・・ ?
タイヤが回るから ・・ ?

どれも近いけど正解とは言えん。
実は、ここに“リアの車高”(スィングアームの垂れ角)と密接で甘い(?)関係があるのじゃ。

では、ここで「人力車」(じんりきしゃ)の解説から“リアの車高”(スィングアームの垂れ角)の大切さへと進めて行こう。


【 人力車のアレコレ 】

人力車は時代によって、国によって様々な形がある。


おおまかに構造を図に書いてみれば次の様だ


人(車夫)が前方へと押す力は、手で握っている梶棒へと伝わり、梶棒が固定された車体へと伝わり、車体と(サスペンションを介して)固定された車軸へと伝わり、車軸に伝わった力で車軸が(地面と平行に)前方へと移動し、車軸と繋がっている車輪が回転して進む、という仕組みだ。

つまり、簡単に言えば、車軸を前方へと(地面と平行に)移動させる事で車輪が回転して、人力車は前に進む訳だ。

では、ここで、二つ目の質問じゃ。
「人が手に持つ梶棒、その最適で効率の良い角度(垂れ角)は?」

(垂れ角とは、地面との間で成す角度で、地面と平行なら 0度となる)
(人の体格、力の入れ易さは無視したとして)

判るじゃろうか?
そうじゃ! 、梶棒は地面と平行で、可能ならば 車軸と同じ高さで平行になっているのがベストじゃ!

何故なら、車軸を地面と平行に前方へと引くのが一番効率が良いからなのじゃ。


次に挙げるような人力車は、ちょっと見ただけで効率が悪そうなのが判るだろう。

 


意外だか、そういう意味でいくと、牛車(ぎっしゃ)は効率が良いかも知れん。


人力車の話はここまで。
勘の良い人は、オートバイと人力車との似た関係に気付いた頃だろう。

そう!人力車の梶棒はオートバイのスィングアームと同じと考えて良い。
だから、「オートバイのスィングアーム(梶棒)も地面と水平が一番効率が良い!」・・と、言えるか?

実は、オートバイにサスペンションが無ければ「水平が一番」じゃ。
しかし、オートバイにはタイヤのグリップを保つ為にサスペンションがあるから、ちょっと違うのじゃ。
そこのところは、(長くなったので)次まで待っとくれ。


 

  
 
 
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