日頃、何気なく使用している母国語であるが、ふと立ち止まって考えると、何やらおかしい使い方をしていることがある。外国人に日本語を教えているときにも、同じような戸惑いを覚えることがある。
今年は、いつまでも寒い。3月も中旬に差し掛かろうかというこの時期(3月9日)、真冬のような北風が吹き荒れている。あまりの寒さに、セーターを買い足そうと用品店に行くと、「もう冬物は全く置いていない」ということだった。暦と相談して、ある時期に一斉に季節が変わるという仕組みもおかしいと思うのだが、春先にセーターを求めるのもさらにおかしいのかもしれない。春や夏に、「季節外れ格安コーナー」でも作れば、意外に好評を博すかもしれないと思うのだが……。
さて、「あったか灯油」についてである。
文法構造としては、「修飾語+被修飾語」の関係であって問題はなさそうだ。しかし、「丸い+四角」、「赤い+黄色」も問題はないか。これらは、形式/構造ではなく、「意味」の観点からおかしいのである。外国人に、「あたたかい灯油」の意味を教える状況を考えてみよう。外国人は、意外に、こういうことに拘るものである。そこで、説明の案を想定しておこう。
① 「燃料である灯油自体が温かいのではないが、それを使って暖房すると温かくなる 灯油」
② 「暖房器具の燃料として使用する(と温かくなる)灯油」
といったところか。なかなか難しい。
では、業者が、スピーカーで呼びかける「あったか灯油を持ってきました。」というアナウンス並びに「♪あったか灯油でぽっかぽか♪」という歌詞は間違いで、「灯油はいがですか」「♪灯油(を焚いて)ぽっかぽか」でよいのか。ちょっと味気ないが、こちらの方が正しいということになる。そもそも燃料そのものが熱を持つと危険である。