出会い
趣味に関する本を読むと『・・・は趣味の王様』と書かれているのを目にする。手前味
噌も甚だしい。全てのことをやり尽くし、極めた人が何か一つを選び王様を選択する
なら判るが、そうした人は自分のしてきたことだけで単に好きとか詳しい理由で言って
いるに過ぎない。勝手に王様なんて決めるな。色々やってみてから言え。
子供の頃の遊びはチャンバラや戦争ごっこで兎に角、外でばかり遊んでいた。刀や
鉄砲に見立てたものを使っていた。子供が武器に対して何故、あんなに興味を抱く
のか判らないがそれは今でもあまり変わりないかもしれない。また当時、どれだけ違
法性について考えていたのか知らないがカスミ網を使用して小鳥を捕まえて飼った
りもしていた。遊びの中の鉄砲、獲物を捕るこの二点は狩猟の下地が揃っていること
を示す。要するにきっかけがあれば抵抗なくその道に入っていけることでもある。
私の住む八雲村は松江市から約10キロ南に行った所にある。人口流出で過疎の村
になりつつあり、人口増加対策の一貫として住宅団地の造成に村が力を入れ入居の
先駆者となったのが私たちだ。自然に恵まれた環境で緑溢れる、人口6,000人ほど
の村である。
八雲村は歴史的にみると古く由緒ある土地柄で『出雲国風土記』にも登場する熊野
大社があり鑽火祭には出雲大社から火を貰いに使者が訪れ優位に立つ。
また、いたる所から古墳が発掘されどこかで道路拡張すれば横穴式の古墳が出たと
か、施設のために山を削ったらここでも古墳が出たとかよく聞く。それもそのはず出雲
国庁、出雲国分寺は源を八雲村に持つ意宇川(いうがわ)の下流にあり、川沿いに古
い文化があったことを物語っている。
熊野大社は狩猟の神さんでもある。毎年11月15日、狩猟解禁の日に御狩祭が催され
る。この団地に移ってから狩猟をしている友人が出来た。TさんとYさんの二人で私より
ちょっとだけ若い。猟をする土壌があったとは言え、鉄砲を持つことには些か抵抗があ
った。何故か、うまく説明は出来ない。
思案に思案を重ね決心するのに時間がかかった。しかし銃を手に持つまでには大変
な苦労が待っている。また試験はいつでも受けられるのではないし、相当、時間がか
かる。その年から猟期には鉄砲なしで丁稚奉公を勤めた。