実技試験は米子の法勝寺にある射撃場で射撃指導員のもとで行われる。
この試験の為に、銃の仮所持許可証が発行されたのだ。試験の前日までに散弾
を百発、購入しておかなければならない。弹を買うのにも購入許可証が必要で、使
用目的や必要事項を記載し警察署に出向き申請する。兎に角、お役所仕事で申
請の日と許可の下りる日は別でしかも平日ときているから時間を都合するのに苦労
する。実技講習の午前は分解組立てや扱い方で簡単だった。他人に銃口を向けな
いことは絶対条件で何があっても守らなければならない。銃を持ち誰かに声をかけ
られて振り向くと銃口が人に向かつてしまうので銃は必要時以外、地面か上を向け
ておく。
一緒に受験していた年配の爺さん指導員が何度も『人に銃口を向けないように』と注
意するが、散漫なのか性格的にいい加減なのか分からないが効き目がなく、注意され
舌が乾かない内に向けてしまう。
遂に指導員も業を煮やして『xxさん、試験は不合格ですから帰宅して下さい』と宣告
してしまった。これは当たり前の処置で、もしも弾倉に弾が入っており、そんなことにな
ったら事故になって『済みません』では済まない。
午後から実際に鉄砲を撃つ射撃教習に入る。説明を受け指導されながら実弹を発射
する。銃床を頰にしっかリ当てて、両目で照準を見つめ、発射時にも目を開けて見て
おく。誰もがこうした時、片目をつむって照準をみるが人には効き目というのがあり、必
ず右とか決まっていない。目の前30センチの所に指を出し、片目ずつで見てみると指
の見える位置が変わって見える。両目で見た位置に見える方が効き目。もし片目で見
た目が効き目でなかったら、物の正しい位置確認が出来ないことになる。
鉄砲の打ち方について細かい注意を聞きやってみる。
引金に指を入れ軽く引く。
バーンと大きな音がし硝煙の臭いがパッと走る。衝擊は肩よりも頬の方が強く感じる。頰
と銃床に隙間が開くとガッンと衝撃がきてとても痛いし、何度かすると頬が腫れてしまう、
それだけ大きな衝撃がある。撃った瞬間に銃身が上方向に向かうためだ。
実際に的となる皿を撃つクレー射撃が最終試験になる。試験は25発使うので残りの75発
は練習で使う。クレー射撃にはトラップとスキートの二種類あり、ここではスキートで練習し
た。スキートは皿の出る場所、飛ぶ方向は一定しているが撃台を移動するので撃つ角度
が変わってくる。また銃は腰の所に持っておき皿が出てから構えて撃つ。
一方、トラップは中心の撃台に立ち発射体制で構える。
皿は足先から皿が飛び出し、皿はどんな方向にどんな角度で飛ぶのか決まっていない。
『ハーッ』と合図すると皿が出るのでそれを狙って撃つ。
いよいよ、試験になった。撃台に立ち、皿を待つ、出た!バーン。
試験は25枚の内、僅か3枚当てればいいのに大変に難しい。2枚までは簡単に取れたの
に合格までのあと1枚が遠く感じた。結局、5枚の成績で合格し正式に銃の所持が許可さ
れた。