何の保証もなく、社会的信用度の低いフリーランス家業。
それでも店でも持ってはっきりと姿が見えればまだ良いが我々の様な世間からは何処にいるのかも判らない存在は一番弱い。
特に田舎から出てきて一国一城の主になる事を夢見てきた人にとって現実は非常に厳しいものとなる。
大体私がフリーになった頃はクレジットカードを持つ事が出来なかった。
何の保証もない何処の馬の骨とも知れぬ輩にカードは夢の話だ。
今じゃあ犬猫でも持てる時代だが…
知り合いのライターは郊外に一戸建てを購入し子供達も私立大学へ進学させかなり頑張った。
とは言えそれを可能にしたのは奥さんの実家があればこそ。
出版不況化で収入が減ったのを機会に都内にある奥さんの実家へ移り住んだ。
郊外の家は貸してその家賃が大切な収入となるが彼の威信は大きく傷つく。
城を明け渡したのだから。
田舎の出だから余計に家長としての意識が強く結局義母と憎しみあう関係になってしまう。
子供が独立するのを待って田舎に帰ろうかととも考えていたが奥さんは付いて来ない。
奥さんとも子供とも完全に修復不能の状態になっていた。
そしてその日はやって来る。
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