この番組(フジテレビ)での視聴者投票結果は、
安保法の廃止だけでなく、東京オリンピック・パラリンピックの予算問題やマイナンバーという安倍政権の政策がことごとく否定された。
まさに“日本の本音”を可視化した、当然の結果だった。
リテラ http://lite-ra.com/2015/11/post-1662.htmlより転載
フジの生放送で松坂桃李、指原莉乃、長嶋一茂が「安保法制は廃止すべき」、視聴者調査でも66%が廃止に賛成
上・TOP COATホームページより松坂桃李/下・指原莉乃オフィシャルブログより
安保法成立から2カ月、「安保法は廃止すべき」と考える国民は約66%。しかも、あの人気アイドルや若手俳優もNOと答えた──。
こんな結果が叩き出されたのは、昨日フジテレビで3時間にわたって生放送された『日本のダイモンダイ』でのこと。
視聴者にデジタルテレビのdボタンで「AかB」の二択で民意を問い、“日本の本音”を明らかにするという視聴者参加型バラエティ番組で、司会は爆笑問題の太田光と田中みな実、スタジオには自民党の片山さつきや民主党の菅直人をはじめ、松坂桃李や指原莉乃、SEALDsメンバーの諏訪原健氏などという幅広いゲストが集まっていた。
そんななかで行われたのが、冒頭で紹介した安保法制に関する質問。
「安全保障関連法が成立して、まもなく2カ月/A・この国際情勢では、成立して良かった。B・廃止すべき。」というものだった。
単純に賛否を問わずに「この国際情勢では成立して良かった」と賛成側に回答を誘導している点が、いかにも安倍チャンネル化しているフジテレビらしいやり口だが、それでも視聴者約24万人(この質問の投票締切30秒前の時点で23万7220人)のジャッジは、65.7%もの人が「廃止すべき」、賛成は34.3%にとどまった。これは9月の安保法制国会採決後に産経新聞とFNNが合同で行った世論調査(安保関連法成立を評価するか、評価しないか)の「評価しない」と答えた56.7%を上回る数字だ。
しかも、スタジオゲストの投票でも「廃止派」が圧倒的だった。ゲストがどっちを選ぶかは視聴者の投票中に発表されたが、菅や諏訪原氏が安保法に反対なのは当然のこととして、爆笑問題・田中裕二や小島慶子、長嶋一茂も「安保法は廃止すべき」と回答。さらに驚かされたのは、なんとイケメン人気俳優の松坂桃李に、日頃バラエティ番組では場の空気を読みがちなハライチの澤部佑、そして安倍首相とベッタリの秋元康にプロデュースされている指原莉乃までもが「廃止すべき」としたことだ。
安保法制の議論では、吉永小百合や渡辺謙、笑福亭鶴瓶、大竹しのぶ、坂上忍、石田純一らが反対の声を挙げ、ラジオやSNSでは土田晃之やSHELLYらも安保法制を批判していた。だが、法案成立後とはいえ、ゴールデンタイムの全国生放送で、まさか松坂や指原、澤部といったテレビの第一線で活躍中の、しかも人気商売である若手芸能人たちまでもが堂々と「廃止すべき」と表明するとは……。世論と同様に、芸能界の安保反対派は意外と多いのではないか、と感じさせる結果だった。
このように11名のゲストのうち、よもや8名が安保に反対するなか、逆に「成立して良かった」と答えたのは、片山と、中3で起業した“女子高生社長”の椎木里佳氏、俳優の古田新太の3名のみ。前者2名はともかく、演劇人の多くが安保反対を訴えていたことを考えると、古田が賛成としたのはちょっと意外でもあった。
一方、反対派として意外だったのは長嶋一茂だ。一茂は強い口調で「当然、廃止ですよ」と主張したうえ、こんな的を射た解説までしていた。
「(反対なのは)日本が主体的に決めたことじゃないからです」
「アメリカのジャパンハンドラーが進める法案だから。安倍さんが決めてることじゃない」
「日本にメリットがない。あるとすればアメリカを怒らせなかったことだけ」
すかさず片山さつきが「南シナをめぐる状況もいろいろ出てきてるし、ISILはISILでテロでねえ、ロシアの航空機爆破とかいう話もある」とお得意の脅威論を振りかざしたが、他方、SEALDsの諏訪原氏は「いまのままで抑止力がないのか、きちんと見る必要がある」と話し、憲法を無視して押し通すことは何でもありの状態なのでは?と指摘した。
このような議論の後に、前述した反対意見が過半数を超える視聴者投票の結果が発表されると、当然、Twitter上は大荒れ。「フジがまた偏向番組」「反対派のプロパガンダだ!」と賛成派が怒りを剥き出しにしていたが、とてもじゃないが“あの”フジテレビにそんな気があったとは思えない。思うにスタッフは「2カ月も経っているし、賛成と反対は五分五分か賛成が上回るのでは?」くらいにしか考えていなかったのではないだろうか。そうやって視聴者をナメてかかったら、まさかの結果が出てしまった……と考えるほうが自然だ。
しかも、安保法のみならず、「東京オリンピック・パラリンピックは/A・お金はかかっても、最高のものにして欲しい。B・出来る限り、節約して欲しい。」という質問でも、視聴者投票は「お金かけてもいい」が28.9%に対し、「節約して欲しい」が71.1%で上った(ちなみにスタジオゲストは「お金かけていい」派が田中、古田、松坂、指原の4名、「節約」派が菅、小島、長嶋、澤部、椎木、諏訪原の6名。片山は回答せず)。
さらに、「マイナンバー/A・色々便利になりそうで、賛成。B・なんだか怖い。」という質問では、「賛成」はたったの10%、「怖い」が90%という圧倒的な数字となった(ゲストは片山、菅、小島、古田の4名が「賛成」、「怖い」としたのは田中、長嶋、松坂、指原、澤部、椎木、諏訪原の7名)。
安保法の廃止だけでなく、東京オリンピック・パラリンピックの予算問題やマイナンバーという安倍政権の政策がことごとく否定された、この視聴者投票。まさに“日本の本音”を可視化した、当然の結果といえよう。
もっとも、残念だったのは、安保法を廃止すべきと回答した松坂や指原、澤部、田中裕二、小島といった芸能人の反対理由が一切、語られなかった点だ。司会の太田も田中みな実も、長嶋を除く芸能人には話を振らなかったことを考えると、もしかすると芸能人ゲストには賛成でも反対でも話をさせないという取り決めでもあったのかもしれない。それでも、反体制的な意見を表明すること自体がタブー化している芸能界にあって、安保法は廃止すべきという自らの考えを明らかにした松坂や指原らの勇気は買いたいものだ。
(水井多賀子)