私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

ドーヴァーの浜〔1~5行目〕

2014-09-27 12:17:40 | 英詩・訳の途中経過
Dover Beach

Matthew arnold

The sea is calm tonight.
The tide is full, the moon lies fair
Upon the straits; on the French coast the light
Gleams and is gone; the cliffs of England
Glimering and vast, out in the tranquil bay.



ドーヴァーの浜

         マシュー・アーノルド

海は今宵は凪ぎはてて
潮はみち 月はまつすぐに
海峡に映つてゐる 仏蘭西の岸でひかりは
きらめいて消えさり 英国の崖は
ほのひかりながらはてなく 静まりかえつた入江からきりたつてゐる




 ※またも有名どころの短いのを。
  苦手の「ふつうの散文調」にするつもりが、原文の古雅な平凡さにつられてつい旧かなづかひなどを。全文をまとめるときに書き直す…かもしれません。そもそも正しいのか心もとない。

 しかし、この五行は本当に絵のようです。古今集の調和といいますか、退屈なほどバランスのとれた優美さがある。ドーバー海岸のホワイトクリフは、ずいぶん以前に見に行ったことがあります。とにかく本当に白かった。あれなら月夜にはたしかに光るでしょう。絵のようでありながらけっして幻想的ではないのですね。単純で精緻な写実。そこがイギリスらしい気がする。