私は田舎のとある工場に勤務しています。製造ラインは、「三班二直」で、昼も夜も土曜も日曜も止まる事無く稼動しています。
私はそんなラインの生産計画を組んでいるのですが、生産に不具合が出ると、しばしば取り締まり役から「お前は会社を潰す気か」と怒られます。
私は会社を潰せるような力を持ってるとは思いませんが、本当にそんな力が有ったら、6年前に会社を潰してます。その当時は本気で「こんな会社潰れてしまえ」と思ってましたから。当時は私が死ぬのと、会社が潰れるのと、どちらが速いかのサバイバルゲームでした。
さて、話を戻して、なぜ私は取締役にそんな風に起こられるのか、それは、試作品とか、量産品でも初回の投入品とかを夜勤や土曜日曜に投入し、不具合が出ると、技術や開発スタッフのいない時に計画を組んだ私の責任になってしまうからです。
取り締まり役からは、「試作品や量産の初回品は、トラブルが出てもスタッフが対応できるように平日の昼勤に計画を組まなあかんやろ。今回の不具合はおまえの責任や。」と叱られます。
言うは易しとはよく言ったもので、三班二直のラインでは、平日の昼勤は14分の5、約3分の1しか有りません。この限られた時間の中に、試作品と量産の初回品をすべて組み入れるのは至難の技なのです。
まず、試作品の製造依頼ですが、1年間に400件くらい私のところに持ち込まれます。もちろん、すべて試作するわけですが、1つの試作品を作るのに、平均4工程くらい有るので、1年に1600工程を生産ラインに組み入れている事になります。
そして、量産の初回品ですが、これは1年に200件くらい有り、これも平均4工程有るので、1年に800工程くらいになります。
合計して1年で2400工程になります。1年に平日が240日有るとすると、試作品と初回品だけで1日に平均10工程組まなくてはなりません。昼勤を1日10時間とすると、1時間に1工程です。物理的にこんなのは無理です。
まあ、私はこんな訳の分からん叱責は軽く聞き流して、「はい分かりました」と返事して、知ったことかと仕事をするから別にいいんですが。ショーも無い指示を馬耳東風で聞き流す術は、長い会社員生活のなかで身に付いてます。
それより腹が立つのは、製造に良品が作れない条件を指示し、強要して、現場の確認もせず、その結果ロットアウトを連発させて、それからやっと重い腰を上げて対策会議を開くアイツらだ。
会社を潰す気が有るのは、俺じゃなくてアイツらやろ。
あんた、怒る相手を間違えてるで。