それは全く予期せぬ事だった。
まるで戦車が近くを走るようなエンジンの音のようにも聞こえた。
がたがたと小刻みに家がふるえ、地鳴りが次第に強くなった。
よほど大型のトラックが家の近くに来たのかとさえ思った。
次の瞬間、今まで経験したことのないような激震が襲った。
それは体が横に振られるような横揺れで、すさまじい音の地鳴りが
繰り返し繰り返し押し寄せ、横揺れがピークに向かって激しさを増す。
火の元の確認に台所に駆けつけると、茶箪笥から食器がガラガラと
飛び散り、片っ端から砕け散った。
流しに積み上げられた鍋や釜も、けたたましい音で飛び散った。
それでも割と冷静でいられたのは、我が家が地震に強いと言われた
パネル工法だったからである。
30分以上も繰り返し地震が襲ってきた。
外はどうなのだろうと、玄関に出ると、一戸建てが建ち並ぶ団地の
空に、砂煙の様なホコリが舞い上がっていた。
たぶんあれは、家が激しく揺すられて、たまったホコリが舞い上がった
ものだろう。
テレビをつけると、家や車や船を飲み込んで、畑を流れていく津波の
恐ろしいばかりの光景が写し出された。
これは未曾有の災害になるなと予感する光景だった。
三陸沖から始まった地震は、宮城沖、茨城沖と連鎖して南下し
プレートの隆起は、数百キロにも達するかもしれないという。
岩手の実家に何度も電話したが、通じる訳もなかった。
余震が続くので、火が使えず、食料の買い出しに出かけたら
家の周りは停電していないのに、商店の有るあたりは、軒並み停電で
スーパーもコンビニも真っ暗で閉まっている。
もっとも棚が崩れて商売にならないかもしれないが。
自販機も停電は使えない。
よく見ると、路地のブロック塀があっちでもこっちでも崩れている
信号は消えているし、車で走るまわるのは非常に危険だ。
食料調達はあきらめて早々に帰宅した。
津波被害でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします