【コラム】
放課後の長い時間を私はひとり、
学校ではなくて、町のはずれに
ある図書館で過ごすようになっ
ていた。
いつ閉鎖されてもおかしくない
ような、さびれた図書館だった。
日曜の午後、たいてい四時過ぎ
くらいに、西陽がまぶしくなっ
て私が席を移動したあとか、移
動する直前に、彼はふっと姿を
現した。
そうして、まっすぐに、私がそ
れまで座っていた椅子を目指し
て歩いてくる。それからそこに
腰をかけて、ぶあつい本を開く。
「こんにちは、あの・・・・」
ある日、思い切って、私の方か
ら声をかけてみた。
どうしていつも、ここに?私の
座っていた場所に。ここ、まぶ
しくないですか?
訊いてみたかったけれど、そこ
までの勇気はなかった。
声はかけたものの、何も言えな
くてもじもじしていると、彼の
疑問文が飛んできた。
「きみの方こそ、どうしていつ
もこの席に?」
そのあとに言った。目を細めて、
まぶしそうに、私の胸のあたり
に視線をのばして。
「ここ、僕の指定席なんだけど」
そんな風にして、私たちはぼつ
ぼつと会話をするようになり、
日曜ごとに図書館で「デート」
をするようになった。
デートだと思っていたのは、
――名づけていたのも――私だ
け、だったと思うけど。
あの、もしもよかったら、この
本」ある日、思い切って、私の
方から「告白」をしてみた。
好きです、つきあって下さい、
なんて言えるはずもなく、その
代わりに私は、私の気持ちを代弁
してくれているかのような恋愛
小説を選んで、彼に差し出して
みた。
63体のビスクドールを展示
野沢93番地十二町
ぴんころ地蔵通側
~柳田二助商店~
℡0267-62-0220
『創業122年』
放課後の長い時間を私はひとり、
学校ではなくて、町のはずれに
ある図書館で過ごすようになっ
ていた。
いつ閉鎖されてもおかしくない
ような、さびれた図書館だった。
日曜の午後、たいてい四時過ぎ
くらいに、西陽がまぶしくなっ
て私が席を移動したあとか、移
動する直前に、彼はふっと姿を
現した。
そうして、まっすぐに、私がそ
れまで座っていた椅子を目指し
て歩いてくる。それからそこに
腰をかけて、ぶあつい本を開く。
「こんにちは、あの・・・・」
ある日、思い切って、私の方か
ら声をかけてみた。
どうしていつも、ここに?私の
座っていた場所に。ここ、まぶ
しくないですか?
訊いてみたかったけれど、そこ
までの勇気はなかった。
声はかけたものの、何も言えな
くてもじもじしていると、彼の
疑問文が飛んできた。
「きみの方こそ、どうしていつ
もこの席に?」
そのあとに言った。目を細めて、
まぶしそうに、私の胸のあたり
に視線をのばして。
「ここ、僕の指定席なんだけど」
そんな風にして、私たちはぼつ
ぼつと会話をするようになり、
日曜ごとに図書館で「デート」
をするようになった。
デートだと思っていたのは、
――名づけていたのも――私だ
け、だったと思うけど。
あの、もしもよかったら、この
本」ある日、思い切って、私の
方から「告白」をしてみた。
好きです、つきあって下さい、
なんて言えるはずもなく、その
代わりに私は、私の気持ちを代弁
してくれているかのような恋愛
小説を選んで、彼に差し出して
みた。
63体のビスクドールを展示
野沢93番地十二町
ぴんころ地蔵通側
~柳田二助商店~
℡0267-62-0220
『創業122年』