夢をみる。
深い夜に、レールの向こうで
たくさんの蛍が光る。
そのうちにそれが、紫の羽を
持った無数の蝶に変わり、
なぜか白いシーツをバックに
舞っている。
それを小さな少年が、瞳をこら
して見ている。
横に、なぜかお下げ髪の少女に
なっている私がいて、怖くてそば
へ行けない。
「帰ってきて、帰ってきて」と、
叫ぶだけだ。
目覚めると、寝返りをうった彼
の寝息がかすかに聞こえる。
その体を、私はしがみつくように
抱きしめた。
朝、彼を送り出すときの、背中を
見るのがつらかった。
彼に妻子がいようがいまいが
どうでもよかった。
ただ、
いつも判然としない想いにおそわ
れる。
これが、最後ではないかと・・・・・。
背を向けて遠ざかる時、
一瞬、
カレの存在自体が消えるような
気がした。