真央のトリプルアクセル

Gシリーズ中国大会で真央が優勝した。ショートプログラムで僅差の2位。トップは柔らかい身体から繰り出すキャンドルスピンの１４歳の天才少女、ユリア・リプニツカヤ(ロシア)だった。
フリーでは、プレッシャーに負けたリプニツカヤが生まれて初めてジャンプに失敗。ひとりでこけてしまった形で、真央に優勝が転がり込んだ。

今年３月の世界選手権の６位惨敗に落ち込み、スケートを辞めたいとまで考えたらしい。佐藤コーチの勧めもあって二週間の休養を取ったらしい。完全休養とはいえたった二週間である。
しかし、そのおかげか真央は全体的にふっくらしていた。これまでどんどん痩せてきていたのは気になっていたのだ。このほうがずっといい。

ただ、優勝が決まった後のインタビューで真央が「今日の自分の出来は、そこまで、優勝できるようなところまでなかった」と言っており、演技終了後にもあの抜けるような笑顔は見られなかったのだ。
最後にこれからのことを問われ、「難しいエレメンツに挑戦していかなければならないと思いました」と彼女も言っているように、このままでは１２月にソチで行われるファイナルで勝ち負けできないだろう。

何が必要か。もちろん封印しているトリプルアクセルである。
真央はトリプルアクセルを跳ばなくてはならない。転倒を怖れていては栄冠を手にすることはできないのだ。ジャンプの改造を決意したときからこの茨の道は想像できた。この道を避けて真央は存在しない。
１２、３歳の頃をぜひ思い出してもらいたい。ただ楽しいだけでスケートをしていた頃を、難しいジャンプにどんどん挑戦して転倒なんか全然苦にならなかった頃のことを。

失敗してもいい。何度転んでもいい。真央にはトリプルアクセルが必要なのだから。
失敗を怖れていたら必ず失敗する。けれども、失敗してもいいと受容できた時、失敗の呪縛から解き放たれるのだ。

今年の１２月は無理だとしても、２０１４年のソチでは底抜けに明るい真央の笑顔にまた逢いたい。