ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー 演奏会
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ヴァイオリン:森 彩香
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調
管弦楽:ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー
指揮:エド・デ・ワールト
2012年6月17日(日) 午後3時開演
桑名市民会館大ホール
【主催】公益財団法人 岡田文化財団
エド・デ・ワールト。実演では初めて聴いたが、やはり素晴らしい指揮者だった。
指揮ぶりは、所謂「パーフォーマンス」じみた気配は全く無く「実務的」で的確・冷静という感じ。終始、楽譜とオケに目を配りつつ職人のように振り続けた。
しかし、その実直な指揮から生まれ出る音楽は実に雄弁。これは、オーケストラの美質でもあろうが、派手さのない乳白色のパステル画のような色彩を基調としていながら、次第に熱を帯びてくるその演奏は、淡い表層の下に真っ赤な炎を垣間見せる。
メンデルスゾーンでのソリスト森さんは当地三重県出身。
ウチの長男よりも若い期待の星。
最初こそ音楽も音もやや硬く、ピッチもぶらさがり気味だったが、木管の第2テーマのあたりからすっかりピントが合ってきて、エド氏の音楽性と融合した直向な演奏が続いた。ひたひたと丁寧に弾くかれたメンデルスゾーンだった。
マーラーはさらに素晴らしかった。
エド氏のアプローチは、決してのたうち回ったり絶叫したりはしない。
強奏部の迫力は十二分にあったが、ことさらに煽ったり芝居がかったデフォルメを施したりは全く無し。
第1楽章終結のピッチカートも、やんわりとしており、これみよがしな音の出し方は注意深く避けているかとも思えた。
しかし、その姿勢は、じわじわと作品の中に引きずり込む強い力を秘めており、それを知った時はもう遅く、とてつもない5番の大鍾乳洞から二度と戻れないのだった。
こうなると、もう翻弄されるだけ。次々と訪れる局面に引き込まれたりのけぞったり・・・。
特に静かな部分、叙情的な部分の説得力は圧倒的だった。
ディスクで様々な5番を聴いているが、「あんなにバタバタしなくても」ここまで連れて来られるんだ。あれは何だったんだ、とその時思った。
終楽章の最後の最後まで、完璧なバランスで弦の速いパッセージを思いっきり聴かせつつ終わった。
オケの乗り気というか、プロ根性も清々しい雰囲気に満ちていた。
最後列に並んだ打楽器5人組のカッコ良さ、ホルンや木管のソロの神技に唸った。
さて、今回も去年のミスターSの時と同じ、岡田文化財団による無料招待コンサート。客層も、当然「普通」のクラシック・コンサートとはやや異なる。
しかし、客席は沸いたなぁ。
すごい熱狂だった。
スタンディング・オベイションは見つけられなかったが、たくさんの人が頭上に腕をかざして拍手を送っていた。
ワールト氏も、満足そうな笑顔でカーテンコールに応えていた。
初めて生でクラシックを聴いた人もいただろう。知らない曲だった人もいただろう。私の席は2階最前列だったが、周りの会話や空気・ノイズから、そういうことを感じた。
隣の(たぶん年配の)女性は、数人と連れ立って来たようだった。演奏直前まで、しきりにお喋りしていたが、演奏中は、私よりずっと惹き込まれているかのようだった。
コンチェルトが終わった時の彼女の熱狂的な反応は忘れ難い。
初めて聴いたヴァイオリン協奏曲に大きな印象を受けたことは間違いなかった。
マーラーでは、第4楽章が始まった時、小さな声で「これや!」と呟くのが聞いて取れた。
また、後方からは、時々「すげぇ・・・」という声も聞こえてきた。主にパーカッションの見せ場で・・・。
まあ、私語はやめてもらうに越したことはないのだが、この日の私の席で聞こえたものに限って言えば、いずれも鑑賞の妨げというほどではなかった。いずれも音楽に反応してのものだったからか?
こういう素晴らしい実演に接して、また次に(今度はお金を払って)聴きに行くようになるかも知れない。そうなってくれたら、なんか嬉しいことだな。
3年前に大阪フィル定期を聴いて以来、私や妻の病気もあり、津市と伊勢市以外のコンサートには行ってなかったが、今回、津市以遠にひさしぶりに出かけた。
朝から家族の夕食仕込みとかで忙しかったが、無事に聴くことができて何よりうれしかった。
FBで交流しているKさんともお会いすることができ、短い時間だったが楽しい話に花が咲いた。彼女はエド氏を追っかけて前日の大阪公演に続いての来県だったとのこと。いやぁ、エネルギッシュですなぁ。
彼の演奏の特徴として、アクの強くないピュアな響きが好きです。(もちろん、アクの強い別の指揮者の演奏もいいですが)
私もワールト氏の音源は手持ち少ないです。オランダでのマーラーは全部ありますが、あとペール・ギュント・・・。
その他は協奏曲の「伴奏」ばかりだったと思います。
文句無く凄い指揮者だと思いますが、どういうわけか音盤の世界では脇役に納まっている印象ですね。
私も、他の演奏をもっと聴いてみようと思います。
デ・ワールト氏は、SF響で小澤さんの後任だったり、ミネソタ響では大植さんの前任だったり・・・と日本人指揮者を贔屓している自分としにはよくお見かけするお名前だったんですが、ぜひ、音源を当たってみます。
でも、実演こそ聴くべき指揮者かも知れませんね