静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

平和へのねがい2017~講演と音楽の夕べ~(ハートプラザみその、伊勢市)

2017年09月23日 22時33分25秒 | コンサート
様々な視点から「平和」を考え、平和を想うコンサートでした。



国際平和デー・イベント
平和へのねがい2017
~講演と音楽の夕べ~


第1部:講演「国連平和の鐘に込めた成果平和への願い」
講師:高瀬聖子(国連平和の鐘を守る会代表)


第2部:平和コンサート

≪歌≫
さとうきび畑(寺島尚彦作詞作曲)
里の秋(斉藤信夫・詩 海沼 實・曲)
死んだ男の残したものは(谷川俊太郎・詩/武満 徹・曲)

ソプラノ:廣めぐみ
ピアノ:中瀬あや



≪ピアノ≫
花の歌(ランゲ)
乙女の祈り(バダジェフスカ)

ピアノ:中瀬あや


≪ヴァイオリン≫
タイースの瞑想曲(マスネ)
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番≪バラード≫(イザイ)

ヴァイオリン:高橋真珠
ピアノ:中瀬あや


≪アンサンブル≫
For the beauty of the eaeth(ジョン・ラター)
故郷(高野辰之・詩/岡野貞一・曲)

~アンコール~
To love you more(デイヴィッド・フォスター&ジュニア・マイルス 詩・曲)



 第1部は、「国連平和の鐘」の発起人である中川千代治氏の御息女、高瀬聖子さんの講演でした。
 私は恥ずかしながら「国連平和の鐘」のことも千代治氏のことも、今回の講演で初めて知りました。

「平和、平和」とよく口にもするし見聞きもしますが、「平和」とは何なのでしょう?
 どういう状態を言うのでしょう?
 そして、それを守るとは何を為すことなのでしょう?
 そんな、普段あらためて考えないことを考えさせてくれる講演でした。
 中川千代治氏は、二度の出征の経験から、戦後まもなく、この「平和の鐘」活動を(ひとりで)始めたとのことでした。
 世界の硬貨を集めて鐘をつくるという、それがどうして平和につながるのかと疑問をいだく人もいるでしょうが、講演を聴きながら千代治氏のそうせざるをえなかった気持ちに寄り添い、考えることでその答えは見えてきた気がしました。
 国連平和の鐘を守る会のホームページに、今回の講演と概ね同じ内容が紹介されています。
 ご覧になってみてください。私も読み返してみます。


第2部は「平和コンサートと銘打たれたミニ・コンサート。
(実は、こちらがお目当てだったのですが・・・)



 演奏は、おなじみの廣めぐみさん(ソプラノ)、中瀬あやさん(ピアノ)に、今回、初めて聴かせていただいたヴァイオリンの高橋真珠(またま)さんでした。


さとうきび畑」は、先日書いたように、我が家ではずっと前から上条恒彦氏のバージョンで耳に馴染んでいますが、今回はフルバージョンの歌詞で歌われました。
 上条氏や森山良子氏よりもちょっと速い目のテンポで歌い出され、どこかシューベルトの有節歌曲のようでした。
 歌いだしは淡々としていましたが次第に胸に迫る局面へと盛り上げていくあたりは見事でした。

 2曲目の「里の秋」は、1番はア・カペラで歌いだされました。

  ああ父さんよ 御無事でと 
  今夜も母さんと 祈ります

 平易な言葉と優しい旋律に母子の切実な願いや祈りがこめられた歌であり、これも胸にしみました。

 3曲目は「死んだ男の残したものは」。
 以前に当ブログでも採り上げていました。
 また、8月に林光編曲の合唱版を聴いたところでもあります。
 主に合唱で聴き親しんできた曲ですが、今回、初めてソプラノ独唱で聴きました。
 これは、鎮魂歌のようでありララバイのようでもあり静かな抗議の歌のようでもある独特の曲です。
 最初から最後までをどのように歌うのか、ソロでも合唱でも演奏する側にとっては大変難しいのではないでしょうか。
 小室等や高石友也は、そのあたりはなんとなく「雰囲気」で乗り切ったような印象を持っていますが、廣さんも大変だったと思いました。
 谷川氏の詩で時々感じるのは「ソフトフォーカスのように焦点を外して何が言いたいのか分からないようでいて、言葉から起こるイメージの連なりが恐ろしいくらいにリアルに迫ってくる」ということですが、このときの演奏も、まさにそうでした。

 今回の廣さんの選曲は、一見「親しみやすい」「耳に馴染んでいる」ようでいて、実は3曲とも現実的で戦争による悲劇をリアルにイメージさせる3曲だったと私は感じました。


 そういうこともあって、次の中瀬さんのピアノ独奏は本当に美しく別世界のように聴けました。
花の歌」は初めて聴いた曲ですが、極彩色の派手な花ではなく、淡い中間色の控えめな花々を思わせる佳曲でした。
乙女の祈り」は有名過ぎる曲ではありますが、「ちゃんと」聴く機会は少ないです。
 作曲者バダジェフスカの作品は第二次大戦中に、そのほとんどが消失してしまったということです(中瀬さん談)。
 サイン・ミュージックやオルゴールなどに頻繁に使われてきたこの曲ですが、そんな不遇な作曲者への寄り添いを感じさせるような、まるで宗教曲でも聞いているような思いにさせられる演奏でした。
 速く細かいパッセージも一音一音の艶やかさや粒ぞろいに気を配り丁寧に丁寧に演奏していたのが印象的でした。

 あやさんのピアノを聴くのは去年の12月以来で、このような「ちゃんとした」静かなコンサートで聴くのは久しぶりでしたが、音が温かく深くなっている気がしました。


 次はヴァイオリンの高橋真珠さんによる2曲でした。

 先のお二人と違って高橋さんは登場してMC無しで演奏に入られました。
タイースの瞑想曲
 すばらしかった。
 過度に情緒的にならず引き締まったテンポの中で十二分に歌い波打って、この曲が好きな私はクラクラしてしまいました。
 そして、ヴァイオリンのよく鳴ること。
 2曲目のイザイは当日の圧巻でした。
 実は、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタのCDは3枚ほど持っているのですが、今まであまり聴き返しておりませんでした。
 イザイは私にとっては、まだ、ちょっと遠い部分が多い作曲家だと、ついさっきまで思っていたのに、眼前で弾かれる3番が終わったときには、完全にやられていました。
 ディスクや放送音源で聴いていたときに感じた「とりとめのなさ」や唐突さ、平たく言えば「ついていけん」感みたいなものが全く無くなって、イザイが自分の中に入っていました。
 約8分くらいだったと思いますが、私には時間の過ぎる感覚が無く3分くらいの曲かと思えました。
 高橋さんはイザイの前に少し作曲者や時代背景などについてお話されたのですが、その中身は演奏と見事に通じていました。
 帰宅して、CD(演奏:加藤知子)で聴き返したくらいです。
 それにしても、伊勢にこんな(失礼!)ヴァイオリニストがいたなんて。
 ちょっと調べさせてもらったら、クリーヴランド室内シンフォニィ、香港シンフォニエッタやオークランド管弦楽団などに在籍されていたとのこと。
 これからもぜひ聴いていきたい演奏家が、また一人増えました。

 最後のステージは3人によるアンサンブルでした。
 ラターの曲は初めてでしたが「祈り」の心が表れた美しい曲でした。
故郷(ふるさと)」は、会場皆で歌いましょうということでしたので、私も珍しく大きく声を出して歌いました。
 廣さんが歌いながら客席の間を回っておられましたが、ちょうど3番の開始部分のころ私に最接近(!)しました。
 それで、ここぞとばかりに3番の出だしを大きく歌ったところ、なんと突然の転調で、調子はずれな声を響かせてしまいました。
 歌の開始部分での転調は、そりゃぶっつけで歌っている者には無理ですよね。
 そこだけがこの日のコンサートで唯一残念なところでしたね(笑)。

 アンコールでは「To love you more」という曲が演奏されました。
 葉加瀬太郎とセリーヌ・ディオンのコラボで有名な曲とのことです。
(実は曲名を聞き漏らしてて、さっき中瀬さんに教えてもらいました。)
 知識がないので、これについてはどうともこうとも言えませんが、三人の演奏は興に乗ったすばらしいものでした。

 いや~、この日は松阪第九の練習日でしたが、こっちに行って本当によかった!








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