寒くなってきました。今年の12月は当地松阪と伊勢で「第9」が演奏されます。両方ともオケは伊勢管なので、どちらかは聴きに行きたいです。
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」
石川県音楽文化協会合同合唱団
アサヒコーラス、グリーンエコー
アイヴィ・コーラス、大阪メンズコーラス
平田恭子(ソプラノ)
伊原直子(アルト)
林 誠(テノール)
高橋修一(バリトン)
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:朝比奈 隆
録音:1972年12月
たくさんの録音がある朝比奈氏のベートーヴェン。
我が家にも(全部集めるつもりはなかったのだが)いつの間にやらたくさん集まってきて、第9だけでも8種ある。これは、その中で最も早い時期の録音。ライヴである。
この「第9」をライヴで録った後、翌73年の7月から8月にかけて、一気に他の8曲をセッション録音したという。
岩城=N響に次いで2番目の「オールジャパン・ベト全」であった。
手元には、そのうちの3、5、6、9番がある。全部聴きたいが、そのうちにどこかのレーベルから廉価再発売されそうな気がしてて、それを待っている。
朝比奈=大フィルの「第9」は大学在学中の76年~79年の4年間、大阪フェスで聴いた。
そのころの朝比奈第9は、昨今の原典主義とは全く違う、彼流「楽譜通り」のアプローチを頑固に貫きながらも、所々で「大見得を切る」ような局面があり、それが嫌味も無く何とも言えず「華」を感じさせるものだった。
しかし、この盤で聴く「第9」は、そんな私が毎年聴いていたタイプとは少し違う。
「大見得」の部分は、ここではずっと控え目。そして、頑固なまでのオーソドックス路線が、内に大いなる激情を秘めつつも決してそれを表に出さない「寸止め」モードがじわじわと続いていく。
たぶんの話だが、今ほどにライヴ・レコーディングもなかった頃であり、指揮者もオーケストラも格別の覇気を持って演奏に臨んでいたのではないだろうか。
聴いていて、その静かな熱気が伝わって来る。
第1楽章の再現部のティンパニの扱いは、76年以降に私が聴いた時とほぼ同じで、ひところは常套的に為されていた強弱の変化やトレモロ化は無く、淡々粛々と一定音量の16分音符が連続する。
ああ、頑固親父の面目躍如。いいぞ朝比奈、なんて言いたくなるひとときである。
第3楽章も終始テンポは速く、その中で各声部のどれもが「厚い目」に重ねられては消えていく様は大雑把一歩手前みたいな豊かな歌である。それは、今聴くと、とんでもなく新鮮である。
(たぶん)大阪フィルハーモニー合唱団設立前の複合合唱部隊の熱気も素晴らしい(ちょっとアマっぽいけども)。
終結部の煌びやかさを聴いて、あの大阪フェスティバルホールの片隅に座して、この「暮れの浪速の華」であった「第9」を全身で浴びていた頃を思い出していた。
伊勢にやって来てくれた朝比奈=大フィルを実際に聴いて、思いっきりカウンターパンチを食らったのは、この録音から11ヵ月後だった。
そうだったとしたらそのコンサートは私が企画したものです。が、プログラムはもう私の記憶にはまるで消え去ってしまっています。
もし、覚えていらしゃったら教えてください。
私が聴いたプログラムは「ルスランとリュドミラ」序曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、最後がチャイコフスキー「悲愴」でした。アンコールは「アンダンテ・カンタービレ」だったと思います。
私が聴けなかった方のプログラムは、たしか「皇帝」(ピアノ:園田隆弘)が含まれていたような???でも、定かではありません。何しろチラシをチラッと見た程度ですので。
あのころは労音があったおかげで、いろんなコンサートに行けました。
森正指揮の名古屋フィルとかマンフレート・シェルツァーのヴァイオリン・リサイタルとか、家から歩いて数分の会場で貴重なクラシック生演奏が聴けたのですからね。