歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪澤田昭夫氏の語学論≫

2021-12-15 18:24:58 | 語学の学び方
ブログ≪澤田昭夫氏の語学論≫
(2021年12月15日)
 

【はじめに】


澤田昭夫氏は、1928年生まれで、1951年東京大学西洋史学科卒業で、筑波大学名誉教授であった。近代イギリス史、ヨーロッパ史の専攻である。

澤田昭夫『外国語の習い方―国際人教育のために―』(講談社学術文庫、1984年)
を通して、英語学習の方法を考えてみる。
その他にも、
澤田昭夫『論文のレトリック』(講談社学術文庫、1983年[1995年版])などの著作でも知られる。




【澤田昭夫『外国語の習い方―国際人教育のために―』(講談社学術文庫)はこちらから】

外国語の習い方―国際人教育のために (講談社学術文庫 (666))

【澤田昭夫『論文のレトリック』(講談社学術文庫)はこちらから】

論文のレトリック (講談社学術文庫)






澤田昭夫氏の外国語の習い方



澤田昭夫『外国語の習い方―国際人教育のために―』講談社学術文庫、1984年
今、国際人教育のためにわが国が必要としているのは、外国語学習の新戦略、「傍観的思い出語学」から「参加的運用語術」への戦略転換であると澤田昭夫は主張している。
澤田の標題『外国語の習い方』の習い方でいおうとしているのはまさにそのことである。語学を学ぶのではなく、外国語術を習うことが必要であるという。

澤田のドイツ語学習体験から導き出されたものであるらしい。澤田は旧制高校で一学期は文法の講義、二学期からはシュテイフター、トーマス・マンなどの訳読という、大昔からの伝統的パターンでドイツ語を学んだという。毎週3時間、3年やっても実力は全くつかなかった。これを澤田は「傍観的思い出語学教育」と名付けている。傍観的というのは、教師が主体でテキストを和訳しているのを生徒が傍観しているという意味である。その思い出に名詩や名句の断片を暗記している。

一方、「参加的運用語術」については、language skillにあたる語術ということばは、木下是雄(もと学習院大学学長の物理学者)の高説「外国語についての八章」(梅棹忠雄、永井道雄編『私の外国語』中公新書、1970年、76頁~92頁)から借用したという。体験的には、ドイツのボン大学で外人用ドイツ語入門講座に参加し、オーディオ・リングアルな、聴き話し中心だが読みや文法も総合した「参加的運用語力実習」を週3時間、3ヶ月受けたことに基づくものであるようだ。澤田が学問的テーマについても国際舞台で一応不自由せずにドイツ語で聴き話し、読み書けるようになったのは、ボンでの3ヶ月の実習が、いわゆる breakthrough「突破」体験になったという。この体験は、ドイツ語に限らず、一般に日本の伝統的外国語教育がなぜだめか、それならどうしたらよいか、それへの答えのヒントを与えてくれる開眼体験であったという。

今、外人留学生のための日本語教師育成の必要が叫ばれている。その場合、音韻論だの文法論だの語史だのという日本語学を学ばさせる研究者だけがいくらいても、役に立たない。必要なのは、日本語を習わせられる調教師である。ことばの生きた運用力を身につけることを、外国語では learn(英)、lernen(独)、apprendre(仏)という。それは、ことばを言語学的、文学的に分析、解釈すること、学ぶこと、study(英)、studieren(独)、étudier(仏)
とは違うという。

今、必要なのは、外国語を理論的に学ぶことではなく、体験的に習うことである。語学を学ばせる教授や学ぶ学者ではなく、語術を習わせる調教師と習う技能士であるという。
要するに、澤田のこの本は、日本の国際化ないし日本の国際人教育という政策的意図をもって、語学・文学畑以外の人間が書いた語術習得の戦略書であると、澤田自ら断わっている。これを読めば外国語の実用がつくのではなく、これを読んで正しい訓練に参加して外国語を習えば、習い性になって外国語運用力がつく、という本であるというのである。
なお、本書の中核になる第Ⅰ部は、1979年に筑波大学の外国語センター長の任にあったとき、学生向けに書いたパンフレット「外国語の学び方」を加筆訂正したものだという。
(澤田昭夫『外国語の習い方―国際人教育のために―』講談社学術文庫、1984年、6頁~10頁)


≪斎藤兆史氏の英語論~『英語達人塾』より≫

2021-12-15 18:21:53 | 語学の学び方
ブログ≪斎藤兆史氏の英語論~『英語達人塾』より≫
(2021年12月15日)
 

【はじめに】


 斎藤兆史(さいとうよしふみ、1958-)氏は、日本の英文学者で、東京大学教授、放送大学客員教授である。
 今回のブログでは、その著作を紹介してみたい。
〇斎藤兆史『英語達人塾―極めるための独習法指南―』中公新書、2003年[2011年版]



【斎藤兆史『英語達人塾―極めるための独習法指南―』(中公新書)はこちらから】

英語達人塾 極めるための独習法指南 (中公新書)

















斎藤兆史の英語論~『英語達人塾』より


まえがき
斎藤兆史『英語達人塾―極めるための独習法指南―』(中公新書、2003年[2011年版])
は英語独習法の解説書である。
本腰を据えて英語に取り組みたい人にお薦めしたい本である。
本書の学習法を実践すれば、日常的なやり取りや社交、商談はもちろん、文化的な議論や研究発展の場でも役立つ高度な英語力を身につけることができるはずであるという(斎藤、
2003年[2011年版]、i頁)
不自由な思いをせずに外国旅行がしたいとか、外国人と友だちになりたいというだけならともかく、文法無視でただペラペラとしゃべりまくる癖がついてしまうと、そこで英語学習が頭打ちになる。
かつての日本の英語達人たちを見ていると、基本に忠実な英語学習を行なっていることがわかる。何を学ぶにしても、基本をおろそかにした我流では伸びない。学び方の基本は変わらないのである(斎藤、2003年[2011年版]、iii頁)。
本書で紹介する学習法は、日本の英語受容史のなかで効果が実証されているものばかりである。新渡戸稲造、斎藤秀三郎、岩崎民平、幣原喜重郎、西脇順三郎、岡倉天心らの英語達人は、その学習法と達人ぶりを紹介している。
彼らが実践した学習法は語学の理に適っており、安心して実践できるという(斎藤、
2003年[2011年版]、iii頁~iv頁)。

〇基本は日本語
肝心なのは普段から日本語でしっかりものを考える習慣をつけることである(斎藤、
2003年[2011年版]、5頁)

〇真似と反復
音楽でも運動でも、とにかく何かの技芸を本格的に修めたことのある人ならわかるとおり、学習の基本は真似と反復である。手本を真似て、それがうまくできるようになるまで徹底的に反復練習する。
英語が外国語である以上、その習得はほかの技芸の習練と同じように日々のたゆまぬ反復練習なくしてあり得ないのである(斎藤、2003年[2011年版]、6頁)。

〇継続は力なり
「継続は力なり」。この当たり前の教訓も、ここでもう一度確認しておきたい。
日本人にとっての英語は、やはりピアノやバレエと同じように、何年も何年も基礎的な訓練を積んではじめて習得できる技術なのである(斎藤、2003年[2011年版]、7頁)。
本書で説いた学習法を実践すれば、日本の大学で英語を教えたり、文学作品の翻訳をする程度の英語力は身につくはずであるという。
ただ、本書のすべての課題に真面目に取り組んだとしたら、毎日勉強しても10年はかかると斎藤兆史は断わっている。
2年や3年の修業でピアニストやバレリーナになれないのと理屈はまったく変わらない。退屈な訓練を毎日毎日続けた者のみが、高度な英語力を身につけることができるものである(斎藤、2003年[2011年版]、8頁)。
大学院受験生で、英語での面接にも、そこそこ器用に対応し、「英語ペラペラ」な人でも、入学して最初からきちんと英語の文献が読め、学界で通用するような英語を操ることができるのは、ほんの一握りである。あとはこちらが相当苦労して指導しなくてはならないと斎藤はいう。つまり、「ペラペラ」程度の英語力だけでは、とても文化的、学術的な意思の伝達はできない(斎藤、2003年[2011年版]、9頁)。

英語達人の禅学者・鈴木大拙(だいせつ)の晩年の英語による講演を記録したテープやフィルムが残っている。晩年ということもあってか、日本語なまりも強く、けっして流暢ではない。しかしながら、話している一文一文の正確さ、内容的な密度は驚嘆に値する。そのまま書き起こしても、立派に禅の入門書になるであろうと斎藤はみなしている(斎藤、2003年[2011年版]、9頁)。

〇英語力は会話力にあらず
たしかに英語は話せるに越したことはないが、ただ小器用に「ペラペラ」しゃべることだけに憧れていたのでは、本当の英語力は身につかない。文法や読解を含めた、地道で綜合的な学習が必要になる(斎藤、2003年[2011年版]、10頁)。

〇目的意識
翻訳家になりたいとか、あるいは国際学界で自分の研究を発表したいとか、そういう明確な動機が英語学習の大きな推進力となる。英語学習の目的をはっきりさせることで、おのずとそれに適った学習法が決まってくる(斎藤、2003年[2011年版]、10頁)。
たとえば、翻訳家になりたいというのであれば、話したり聴いたりする訓練より、難しい英語を正確に読み、それをわかりやすく、かつ味わいのある日本語に翻訳する訓練を優先させるべきである。
国際学界での研究発表にねらいを定めるなら、学術的な英作文(academic writing)と口頭発表の技術に重点を置かなくてはいけない。
まずは、自分がどのような英語力を必要としているのかをきちんと見定めることである。
すべての英語学習者の目的に適った学習法を網羅的に紹介するわけではない。だが、いかなる技芸の修得に際しても、学び方の基本は同じである。基礎的な英語力を身につけ、その基本を踏まえた学習を継続していけば、かならずそれぞれの目的に適った英語力を身につけることができる(斎藤、2003年[2011年版]、10頁)。

〇勉強量は目標から逆算して割り出す
一読しただけではほとんど意味が取れない人は、意味が取れるまで読むこと。それが必要な予習の量だという(斎藤、2003年[2011年版]、11頁)。

英語達人とは、少なくとも読解力や作文力においては、並の母語話者と同等以上の英語の使い手のことであるから、その本の文章がわからないとすれば、まだまだ達人にはほど遠いことになる。
だが、英語達人になることが目標であるならば、そこを前提とするならば、なすべきことはただ一つ。
そのような難文を読みこなせるようになるまで、辞書を片手にひたすら読む。
指針、目安であって、自分に必要な勉強量は、あくまで自分の実力と目標を元に自分で割り出してほしいという(斎藤、2003年[2011年版]、12頁~13頁)。


〇英文を書きためる
「持ちネタ」を増やしていく(斎藤、2003年[2011年版]、124頁)。

〇日本文化関連英書
とりあえず、ペンギン・ブックスのペーパー・バックを買っておけば間違いない
自分が英語で伝える可能性のある内容を網羅しているもの
斎藤兆史の愛読書としては、
Japan ; An Illustrated Encyclopedia(エドウィン・O・ライシャワー、加藤一郎ほか監修『カラーペディア英文日本大辞典』講談社、1993年)(斎藤、2003年[2011年版]、178頁)。

〇素読(そどく)について
かつて日本には、主にオランダ人や中国人との交渉事務を担当する「通詞(つうじ)」と呼ばれる人たちがいた。
もともとオランダ通詞であった堀達之助は黒船来航の際には着席通詞として活躍して、のちに『英和対訳袖珍辞書』(1862年)を出版した。その堀達之助のひ孫にあたる堀豊彦の述懐によれば、彼は5、6歳になる祖父、孝之の前に正座をしてオランダ語と英語の素読を行なった。
「武家」が幼児に漢文の素読を授けたのと同じように、これが長崎の和蘭(オランダ)通詞に伝わる家風であったという。

〇読書百遍、意自ずから通ず
素読とは、意味や内容をあまり考えずに同じ文章を何度も音読することで、もともとは漢文の初学者向けの学習法であった。
寺子屋で勉強をする子供たちが声をそろえて、『論語』の素読をする図を想像してみるとよい。「子曰はく、学びて時にこれを習い、亦説(よろこ)ばしからずや、朋あり、遠方より来る、亦楽しからずや」
寺子屋の子供たちは、ただ何度も何度も漢文を読んでいるうちにそのリズムを身につけ、やがて内容を少しずつ理解していくことになる。まさに「読書百遍、意自ずから通ず」である。
中世ヨーロッパのラテン語学習者も、そのようにしてラテン語を学んだようだ。この素読という優れた語学学習法は、残念ながら明治以降、ほとんど実践されなくなったが、斎藤はこれを勧めている(斎藤、2003年[2011年版]、32頁~34頁)。

どんなに時代が変わろうが、基礎的なことを何度も何度も繰り返して、体のなかに練り込むという学習の基本は変わらない。その学習法の語学版が素読であり、暗唱なのである。

英文法の重要性を再認識


〇文法解析
日系イギリス人作家カズオ・イシグロ(1954~)
『わたしたちが孤児だったころ』(Kazuo Ishiguro, When We Were Orphans, 2000)
イシグロの英文を文法的に細かく分析しているが、つねにこんな読み方をしていたのでは、多量の英文をこなすことはできない。
英語力を養うには、第7章で解説するとおり、とにかくたくさんの原書を読むことも必要である。だが、文法を正確に知っているのといないのとでは、文章の理解度がまったく違う。
最近の英語教育では、学習者が文法を身につける前から文章の大意を理解する読み方を推奨する傾向にあるが、これは本末転倒もはなはだしいという。
文法を正確に読み解く訓練をしているうちに、しだいに文法が気にならなくなって文章がさっと頭に入るようになる。これが正しい学習の順序である。
楽譜の約束事を覚え、譜面どおりに正確にピアノを弾く練習を重ねているうちに、いつの間にか譜面を見ながら自然に指が音楽を奏でるようになるのとまったく理屈は変わらない
(斎藤、2003年[2011年版]、49頁~50頁)。

〇接続詞becauseとforの用法の違い
イシグロも誤っているという(斎藤、2003年[2011年版]、52頁)。

会話の流暢さで母語話者の向こうを張るのは容易ではないが、文法や読解を含めた総合の英語力で母語話者を凌駕することは不可能ではない。
この機会に英文法の重要性をしっかりと再認識していただきたいという(斎藤、2003年[2011年版]、54頁)。

〇辞書活用法について
『研究社新英和大辞典』について
英語辞書の偉人・岩崎民平(たみへい、1892-1971)は、辞書編纂者として偉大な信頼を得ていた(『研究社新英和大辞典』第3版と第4版の編集主幹)
斎藤兆史は高校、大学時代を通じて、岩崎が編集主幹を務めた『研究社新英和中辞典』『研究社新英和大辞典』第4版を使って英語を読んできたという。つまり斎藤の英語学習は岩崎の辞書とともにあった。
斎藤が英語で飯を食うようになってからは、職業柄、さすがに雑多な辞書に当たらざるを得なくなった。
それでも翻訳の仕事をするときだけは、もっぱら『研究社新英和大辞典』第5版を使って訳語をひねり出したという。
斎藤は『研究社新英和大辞典』第6版の執筆に関わり、岩崎辞書学の伝統の末席に座することができたことを誇りに思っている(斎藤、2003年[2011年版]、56頁~57頁)。

〇辞書を引くことの重要性
斎藤は、語学力は辞書を引く回数に比例して伸びるものだと信じている。少なくとも読解力に関して言えば、辞書をこまめに引くか引かないかが決定的な差となる。これは達人たちの学習法を見れば明らかである。
ドイツ語達人に関口存男(つぎお、1894-1958)がいる。14歳のとき独学で勉強を始めるが、そのときの学習法がすごい。いきなり洋書屋に行き、ドイツ語訳の分厚い『罪と罰』を買ってきて、わけもわからずに辞書を引きながら読みはじめたのだという。本人は、「わたしはどういう風にして独逸語をやってきたか?」で回想している。ただ辞書を丹念に引いて文章を読むだけでも語学力が向上することを示すいい例であろう。これだけでは話が極論すぎて説得力に欠けるかもしれない(斎藤、2003年[2011年版]、57頁~58頁)。

そこで、虎の威を借る狐の自慢話に堕してしまうことを覚悟で、一つの逸話を紹介している。
斎藤兆史の『英語達人列伝』の縁で、折りに触れて岩崎民平の長女・林きよ子と手紙のやりとりをしているという。斎藤は『英語の味わい方』(NHKブックス)を出版するに際し、自らの信念に基づいて、「あとがき」に「一番手っ取り早く、確実な(しかし根気のいる)英文読解の勉強法はなんと言っても英書の多読である。しかも辞書をこまめに引いて読まなくてはいけない」と書き記した。
出版直後、林きよ子からお便りをいただいた。書店で見かけ、買い求め、感想が記してあった。あとがきで、こまめに辞書を引くことは、父がよく云っていた言葉だったという。岩崎民平は、辞書や文法書や注釈書における膨大な業績のわりに、英語学習にまつわる体験談や個人的な意見をあまり発表していないそうだ。その娘さんから手紙をもらい、尊敬する英語達人の英語学習論に触れ、それによって自分の英語教育が間違いではなかったことを確認できたのは幸運であったという(斎藤、2003年[2011年版]、58頁~59頁)。

〇単語帳の作り方
必要な情報を単語帳に書き写していく。この作業には重要な意味がある。じつは単語帳を作ることの本当の意味は、単に語義を目で確認するだけでなく、手を動かすことによって体に練り込むことにある。
昔、小説家を志す者は、志賀直哉の文章を原稿用紙に書き写して小説の勉強をしたという。たしかに、辞書を食べたという話と同じく、努力のすさまじさを伝える伝説、あるいは隠喩の意味もあるかもしれない。だが、小説の神様と言われた作家の文章を実際に手でなぞってみることで、その文体、リズム、筆遣いが自然に体に練り込まれるという実利的な側面もあったのだろうと斎藤は推測している。
コピーなどという便利なものがなかった時代、貴重な文献を書写して勉強した僧侶や学者が、ときに現代の技術をもってしても不可能と思われるような学問業績を残している。偉人であったこともさることながら、体を使った学習の効果があったものと考えている。
英文を声に出して読んだり、手でなぞったりしながら、五感を総動員して勉強すると学習効果が高い(斎藤、2003年[2011年版]、65頁~67頁)。

語彙力を高めるために、単語帳を作ることを勧めている。単語カードでは駄目で、普通のノートを用意し、次のようなことを記す。
例えば、irkという単語で
irk / 発音記号を記す。vt.[通例 itを主語として] 疲れさせる, あきあきさせる, うんざりさせる; いらいらさせる : It ~s me to wait.人を待つのはうんざりだ, 待つ身はつらい.
―n. 疲れ[あきあき]させること; 悩み[いらだたしさ]の種
単語によって必要な情報量は異なるが、ノートの罫線に沿って普通の大きさの字で書いたとして、3~6行くらいが妥当であるという(斎藤、2003年[2011年版]、62頁~65頁)。

〇洗練された言語表現を体感
ピアノが上手くなりたかったら、クラシックの名曲を暗譜するくらいまで弾き込まなくてはならない。体が覚えるまで手本をさらうこと。この学習の基本原則を語学に当てはめれば、例文の素読・暗唱ということになる。
幣原喜重郎(しではらきじゅうろう、1872-1951)は、若いころイギリスで師事した英語の先生に暗唱を仕込まれている。
暗唱の手本は名文に限る。名文を読むとは、もっとも洗練された言語表現を体感することである。その朗読・暗唱を通じて美しい言葉の形を体に練り込むことほど手軽で有効な語学学習法はない。
朗読用の名文を選ぶ基準としてもっとも重要なものは、内容、修辞、音調の3点である。内容的に深いものを含んでおり、修辞技巧に優れており、そのうえ音の調子がいい。この三つの条件が揃っていれば、まず名文と考えていいという(斎藤、2003年[2011年版]、72頁~73頁)。

〇学習の目安
暗唱は、語学には欠かせない学習項目であるとはいえ、じっくりと時間をかけて行なわなくてはいけないものでもないらしい。
語学において中心となるのは、多読、それから作文や会話ということになると斎藤兆史は考えている。
そこで、暗唱を実践するときの目安としては、学習の早い段階である程度集中的に行ない、あとは名文と呼ばれるものに出くわしたときにそれを暗唱してみるとか、あるいは自選の名文集などを作っておいて、折に触れて朗読しながら暗唱を試みるくらいで構わない。
その際は、ラッセルやオーウェルやモームのエッセイを少しずつ区切って暗唱していくといいだろう。現代の作家だと、デイヴィッド・ロッジ(1935-)やカズオ・イシグロ(1954-の文章が読みやすい。
(ただし、イシグロの作品中、『充たされざる者』(The Unconsoled, 1995)だけは、一風変わった不条理小説なのでお勧めできないそうだ。そのほかの長編小説なら、すべて素読・暗唱用の教材として最適であると斎藤はいう)
また余裕があるなら、チャールズ・ディケンズの小説の名場面や、キング牧師の演説中の有名な‘I have a dream.’のくだりなどを暗唱してみるとよいらしい(斎藤、2003年[2011年版]、84頁~85頁)。


□マーチン・ルーサー・キング(1929-1968、39歳で凶弾に倒れる)
1963年8月、25万人の大群衆とともに「ワシントン大行進」を行い、この力強い大演説を行なった。
 
Let Freedom Ring ― I Have a Dream.

I say to you today, my friends, so even though we face
the difficulties of today and tomorrow, I still have a dream.
It is a dream deeply rooted in the American Dream.
I have a dream that one day this nation will rise up,
and live out the true meaning of its creed :
“We hold these truths to be self-evident, that all men are
created equal.”

〇英語達人になるための必須条件
多読とは、読んで字のごとく、多く読むことである。雑誌だろうが、ペーパーバックだろうが、理解可能な英語で書いてあるものは片っ端から読む。
英語の達人たち(新渡戸稲造、斎藤秀三郎など)は、修業時代のどこかで例外なく大量の英書を読んでいる。逆に言えば、英書の多読は英語達人になるための必須条件だと言ってもいい。英語の多読なくして高度な英語力の養成はあり得ない。

〇教材選びの目安
多読は、見方を変えれば速読でもある。同じ読み方ながら、読む量に焦点を当てれば多読となり、速度に焦点を当てれば速読ということになる。とにかく速く、たくさん読めばいいのだが、何を読んでもいいというわけではない。
暗唱の場合には、英文の質が問題であった。英文の質がよければ、極端な話、内容が理解できていなくても構わない。それを何度も読んでいるうちに、いい英語のリズムが体に練り込まれる。
だが、多読をする場合には、英文の質はさておき、かなりの速度で読みながら内容が頭に入るものでなければならない(まったく理解できない英会話の音声がいくら聴いてもただの雑音でしかないのと同様に、速読して頭に入らない英文は、いくら眺めていても、ただの白黒の模様でしかない)。
多読によって英語力をつけようと思ったら、辞書なしで、さっと読んで内容が7、8割理解できる程度の英文を選ばなくてはならない。一口に7、8割といっても、どの程度の読解力を指すか不明なので、読解力判定試験を斎藤は提示している。
(斎藤、2003年[2011年版]、88頁~89頁)。

〇成績判定と学習方針
細かい語彙の知識を有する読者なら、5分で英文の主旨を読み取れるはず
正答数だけを目安として学習方針を解説している。
①設問1、2ともに不正解であった場合
語彙が難しかった、論旨がつかめなかった、時間が足りなかったなどの理由があるだろうが、まだ多読・速読に入るのは時期尚早の感がある。辞書を引きながら、「辞書活用法」の章で解説したような単語帳を作りながら、文章のやさしい文学作品などを二つ、三つ読んでみるのがよいとする。

取っつきやすい作品としては、
『ハツカネズミと人間』『真珠』(John Steinbeck, Of Mice and Men, 1937. The Pearl,1947)
『動物農場』(George Orwell, Animal Farm, 1945)
『ティファニーで朝食を』(Truman Capote, Breakfast at Tiffany’s, 1958)
『老人と海』(Ernest Hemingway, The Old Man and the Sea, 1952)
映画版が大ヒットした『卒業』(Charles Webb, The Graduation, 1963)
その他、名作を平易な英語で書き直した改作版やハリー・ポッター・シリーズでもいいだろうという。
ただ、この段階で英字新聞などは勧められない。英字新聞は、限られた紙面で最大限の情報を伝えることを至上の目的としているために、語法上や特殊な約束事に基づいて書かれている。だから、はじめのうちは、できるだけ癖のない、上質な英文を教材とするに限る(斎藤、2003年[2011年版]、97頁~100頁)。

②正答が1問だけの場合
成人母語話者向けに書かれたものを辞書なしで読むのは、やや無理があるかもしれない。上記のやさしい英語で書かれた作品を多読したり、本書で言及した作品、あるいは以下で挙げる作品の中から自らの関心に合わせて数冊選び、辞書を引きながら読んでみるのがいいだろう。

③2問とも正解の場合
これはもう英字新聞だろうが、雑誌だろうが、手当たり次第に読めばいい。ただし、できれば上質の英語で書かれた文学作品や随筆をたくさん読むことが望ましい。推薦図書は以下のとおりであるという。

Charles Dickens, David Copperfield (1849-50)
Lewis Carroll, Alice’s Adventures in Wonderland (1865)
Mark Twain, The Adventures of Huckleberry Finn (1884)
Thomas Hardy, Tess of the D’Urbenvilles (1891)
Oscar Wilde, The Importance of Being Earness (1895)
J.R.R.Tolkien, The Lord of the Ring (1954-55)
J.M.Coetzee, Disgrace (1999)

<補足>
・ディケンズは、弱者へのあたたかい同情を含んだ庶民性など、その独特の作風で知られる。『デービッド・カパーフィールド』は、ディケンズの半自伝的な小説である。
父親の死後生まれたデービッドは、母がマードストン氏と再婚すると、過酷な義父によって寄宿学校へ追いやられる。母の死後ロンドンの靴墨工場へ働きに出され、悲惨な貧困生活を味わうが、工場を逃げ出し、大伯母を頼り、その援助で法律を学び、弁護士の娘ドーラと恋をし、結婚。やがて作家として名をあげる。幼な妻の典型のようなドーラの死後は、貞淑聰明なアグネスと再婚する。

・また『ダーバービル家のテス』は、村の貧しい娘テスが、男のエゴイズムの犠牲になり、殺人を犯して処刑されるまでを描く悲劇的な物語である。

〇速読の速度について
問題は読む速度ということになる。将来、英語で飯を食おうという学生には少なくとも1日平均30ページ(欲を言えば40~50ページ)は読んでほしい。高度な読解力の養成を目指す社会人なら、1日平均10ページといったところかという。
ちなみに新渡戸稲造は、「五号活字の四六半載(はんさい)形の英書であれば、二分間で読むことは少しも困難ではない」(『修養』)と書いている。四六半載形の英書とは、1ページが四六判と呼ばれる大きさ(縦約19センチ×横約13センチ)の英語の原書のことらしい。
斎藤の出題した問題文を約2分で読み解く計算になるという。200~300ページの英書なら1日で読み終えてしまう速度であるという。

そこまでの多読・速読能力を身につけるのは容易なことではないとはいえ、毎日たゆまず努力すれば不可能ではない。少なくとも、より高い目標を掲げれば、それだけ高いところに登れるというものである。精進してほしいという。
発展学習として、さきの参考図書リストや、本書で言及した作家・作品紹介を参考にして、1年以内に最低2000ページ分の英文を読みなさいとする(斎藤、2003年[2011年版]、101頁~102頁)。

〇作文
語学力を論じる際、それを聴解力、会話力、読解力や作文力の四つの能力に分けることが多い。そして、通例、話し言葉の運用能力として最初の二つを書き言葉の運用能力としてあとの二つを組み合わせる。昨今の英語教育において、残念ながら、前者にのみ力点が置かれていると斎藤は批判している。
斎藤自身の英語学習・教育の経験から言えば、学習段階が進むにつれ、聴解力は読解力に、会話力は作文力に近づいてくる。すなわち伝達内容が高度になれば、話し言葉と書き言葉の差が小さくなり、今度は語学力が理解(聴解と読解)と生成(会話と作文)という形で分極化するという。

だから、高度な内容のことを口頭で伝えられるようになりたかったら、作文の練習をみっちりやっておくとよい。最初は、1文書くのにも苦労するかもしれないが、やがて文章を書き慣れてくると、頭のなかだけである程度まとまった文章の枠組みを作ることができるようになる。そうなれば、しめたものだ。
今度は、それを元に空で文章を仕上げるような練習をすれば、会話や口頭発表もうまくなる。
もちろん、会話や口頭発表の上達を目的としたものでなくても、作文は作文として意味がある。それどころか、語学力のなかでおそらくもっとも高度な技術である作文術を会得しないかぎり、いくら日常的な英会話が器用にこなせたとしても、英語を習得したとは言いがたい。いやしくも英語を使って仕事をしていると言うからには、修辞法の利いた手紙や電子メール、あるいは文法的な誤りのない企画書を書くぐらいの英語力がなくてはいけない。

〇見たことのある英語表現だけを使う
作文練習を行なうにも、基本は同じである。真似と反復である。最終的には、文学的な創作という高みを目指すと言っても、最初から文法や文体的慣例を無視してただ書きまくっていたのでは、変な癖がついて、むしろ逆効果となる。例えば、当たり前の単語ばかりを使っているのに、その並び方、結びつき方が珍妙なために、英語のリズムに乗って、すんなりとその意味が頭に入ってこない。いったん変な英語を使う癖のついた学生に英作文を仕込むのは、一から英語を教えはじめるよりもはるかに骨が折れるそうだ。まずは、その体に染みついたおかしなリズムを忘れさせるために余計な手間がかかるから。

向学心も根性もありながら英語の語感だけが悪い大学院生に、英語の論文を書かせるのに、厳しい訓練項目を課すととともに、一つだけ特別な禁止条項を設けたという。それは半年の間、よほどの必要に迫られないかぎり、英語を話したり書いたりしてはいけないというものであった。その指導が功を奏して、1年後には語感もだいぶ矯正されていたという。

要するに、ひとりよがりの英語を書いてはいけないということである。最初のうちは、継ぎはぎだらけでもいいから、見たことのある表現だけを使って作文をする習慣を身につけること。もちろん読書量が少なければ、必然的に見たことのある英語表現は限られてくるから、ろくな作文はできない。
一つの文章を書き上げるのに、少なくともその数十倍の関連文献を読んで、使えそうな表現を拾い出すくらいの作業が必要である。欲を言えば、多読の修業中にもつねに自分が英語を書くときのことを想定し、役に立ちそうな表現が出てきたら、ノートに書き取っておくくらいの努力をしてほしい(ただし、剽窃の罪に問われる危険性があるので、手本として使用するのは、語彙項目や慣用表現くらいにとどめておくのが無難であるという)(斎藤、2003年[2011年版]、119頁~120頁)。

≪英語学習法のヒント~晴山陽一『英語ベストセラー本の研究』より≫

2021-12-15 18:19:11 | 語学の学び方
≪英語学習法のヒント~晴山陽一『英語ベストセラー本の研究』より≫
(2021年12月15日)
 

【はじめに】


晴山陽一『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書、2008年)を通して、英語学習の方法を考えてみる。




【晴山陽一『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書)はこちらから】

英語ベストセラー本の研究 (幻冬舎新書)














さて、今回の執筆項目は次のようになる。








『』の要約


氏のプロフィール




晴山陽一『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書、2008年)を通して、英語学習の方法を考えてみる。

國弘正雄『國弘流 英語の話しかた』(たちばな出版、1999年)の内容を晴山陽一は紹介している。
【國弘正雄『國弘流 英語の話しかた』(たちばな出版)はこちらから】

國弘流英語の話しかた

音読の勧め


〇中学英語の教科書の習熟度について
①英文をひっくり返さずに頭から順に読んで意味がわかる
②日本語が頭に浮かばないのに、意味がイメージとして実感できる
③ふつうのスピードで吹き込まれた付属のテープ(またはCD)をテキストを見ずに理解できる
④音読がネイティブ・スピーカーに楽々と通じる
⑤文のどの部分が、他の言葉と入れ替え可能かという、基本的な予測がつく
(94頁~95頁)

「只管(しかん)朗読」とは、曹洞宗の開祖、道元の「只管打座(しかんたざ)」にヒントを得た言葉で、「ひたすら朗読する」という意味である(91頁)

〇「只管朗読」のやり方(中学レベル)
≪十段階≫
第一段階 「只管朗読」の必要に目覚め、テキストを決める
第二段階 テープ(CD)を聞くと同時にテキストの一通りの意味を理解する
第三段階 単語レベルでの発音を一通りできるようになる
第四段階 途中でつっかえずに、曲がりなりにも最後まで発音できる
第五段階 構文的な切れ目と音読との関連が理解できる
第六段階 日本語訳に頼らずに意味が文の先頭から自然にとれる
第七段階 イメージが生き生きと実感できる
第八段階 朗読していて、自然さと楽しさが感じられる
第九段階 テキストの例文の応用可能性にどんどん気づく
第十段階 自分の英語力が広がっていく可能性を実感できる(96頁)

とくに「第六段階 日本語訳に頼らずに意味が文の先頭から自然にとれる」という点に関して、國弘正雄は同時通訳の経験を踏まえて、次のようにいう。同時通訳も、実は<英語→日本語>という直訳ではなく、<英語→イメージ→日本語>の流れで作業しているのだそうだ。いったん頭の中でイメージを作らないと、即座に自然な日本語へ移しかえることは困難であるという(96頁~97頁)。

〇「只管朗読」の発展(高校レベル)
・「スラスラ感」を求めて何度も音読することが大切
・音読回数は一題について50回を目指そう
・日本語訳はゴールではなく、スタートである
・ だから音読を重ねるためには、あえて「他人の和訳」を利用してもかまわない
(97頁~98頁)

〇【整理】
①あらゆる武器を動員して、きちんと英文の意味を理解する
②理解したものをひたすら音読練習して「スラスラ感」を獲得する
③「スラスラ感」を獲得した長文を、一題一題増やしていく、という流れを着実に作っていく
(98頁)

〇【音読と文の理解】
①「只管朗読」は、難文を読む上での「直感力」を養う
②訳と直感で理解できないときには、文の分析が必要だ
③分析した場合も、音読しないと応用力は生まれない
④難文を100個も練習すれば、たいていの本は単語さえわかれば理解できるようになる
・100の英文を50回ほども音読すれば(つまり計5000回)、たいていの本を理解できる素地ができる。
学習の真髄は「復習」にある(98頁~99頁)

後述するように、『英文解釈教室』(研究社出版、1977年)の著者である伊藤和夫は「英語は左から右へ読むものである」という信念を明確に打ち出している(119頁)。

〇井上一馬は『英語できますか?』(新潮社、1998年)で次のように説いているという。
・リスニングができれば、あと少しの努力でスピーキングができるようになる
・最初に必要なテキストの条件はテープ(今ではCD)が付いていること
・教材はあれこれやらず、一種類をとことんやるのがよい。テープ(CD)を聞きながら徹底的にやって、基本文型を頭に入れる
・英語を話せるようになるには、「英語の新聞がふつうに読める程度」、すなわち2万語が必要であるという
ニュースを聞くには2万語が必要だが、テレビドラマは5千語くらいで理解できる
ともあれ、「大人の会話や新聞を読むには、2万語が必要だ」という(161頁~171頁)

〇英語習得の王道は「音読」であると國弘正雄は強調している
究極の学習法の条件とは、次の5つであると晴山陽一は要約している。
①学習の抵抗感をなくす
②音読と暗誦を繰り返す
③リスニングを他の3技能に先んじる
④継続が不可欠
⑤まず磐石の基礎を築くことが肝要
逆の言い方をすれば、次の5つになる
①英語に抵抗感を持っていたら、学習は続かない
②体を使わない英語学習は身につかない
③音の伴わない英語は、使いものにならない
④一朝一夕に英語力がつくというのは幻想にすぎない
⑤基礎を手抜きすると、どんなに勉強をしても砂上の楼閣になりかねない(214頁~215頁)

〇そして次の5項目は重要である。
①愚直な練習が底力をつける原動力となる
②完全に理解したのち、音読を繰り返す
③理解するための文法分析は有効である
④英語を日本語に訳さずに聞き、イメージを作ることが大事
⑤英文は左から右へと流れのままに理解する(216頁)

英語はいくら聞いても、自分で発音しないとしゃべれるようにはならないと主張し、晴山陽一は音楽の体験を記している。
晴山はカーペンターズのベストヒットCDを100回「聞き流し」したが、歌えるようにならなかった。しかし、100回聞き流したあと、試しに音読してみたら、耳からカレン・カーペンターの歌声が聞えてきたという。文字から音が出てきたのはこれが初めての体験だったらしい。100回聞いたという経験が、晴山の宝物となった。経験はお金に代えられない。
だから、「聞きまくり、読みまくる」という流れを作るのが誰でも簡単にできる英語学習法である。聞きまくることにより、「英語の音」が耳から離れなくなる。読みまくることにより、「英語で考える」ことが次第に自分の体に染みついてくる。おそらくブローカ中枢の活動が、頭脳のもっと奥の「何か」を刺激すると推測している。
英語の命は「音と語順」であるといわれる。その両方を手に入れるには、とりあえず聞きまくり、読みまくるしかない。これこそ英語を「内在化」するもっとも効率的な方法である。たとえ、少しばかり時間と労力がかかるとしてもである。
こう晴山陽一は主張している(229頁)。

英語の他に、ドイツ語かフランス語の習得を勧めたい。フランス語の学び方については、ブログでまた詳しく解説する予定である。
晴山陽一の本の中でも、フランス語の学習について述べた箇所がある。
井上一馬は『英語できますか?』(新潮社、1998年)で、フランス語を勉強する時、最初は基礎会話をテープで徹底的に反復練習した。外国語の学習は「耳から入ること」が最も重要であると主張していることを晴山は紹介している(162頁)。
また、フランソワ・グワンというフランスの言語教育学者の言語観は、「子どもは動詞を中心にして言葉を増やし、過去の学習経験で得た概念の種々の要素によってまとまった文をつくる」というものである(140頁~141頁)

言語の習得には、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を身につける必要がある。しかし日本では、「読む」「書く」といった文字学習に重きが置かれ、「聞く」「話す」といった音声学習がないがしろにされてきたとよく言われる。つまり日本の英語教育はあまりにも「読解」に偏りすぎたと批判される。
日本人は難解な英文の意味は分かるのに、いざ会話となると、簡単な単語すら口から出てこず、自然な英会話のキャッチボールができないと悩む人が多い。
ここで赤ちゃんが言葉の使い方をどうやって覚えていくかを考えてみると、一つの解決策が浮かんでくる。親が話すことを耳で聞き、それをまねて、自ら言葉を発しようとする。まずは「音」としての言語に慣れ、それを場面や状況と結びつけながら覚えていく。これが言語の自然な習得法である。
晴山陽一は英語ベストセラー本を研究して、音読の重要性に改めて注目したのである。
その他、映画や音楽、時事問題など、興味のあるトピックの最新情報に、英語で触れてみることも重要である。

ところで、宮本輝も小説『草花たちの静かな誓い』(第1章36、『山陰中央新報』、2015年4月6日[月])でも、この英語学習法について言及していた。語学学校で英語を習得する最も早道が、「朗読式外国語習得法」と称するものであるという。英字新聞の記事もしくは英語で書かれた小説を声に出して読むというものである。小説なら半ページほど、新聞ならコラム記事を、ポケットに入る小型デジタル録音機に、教師に頼んで朗読してもらい、それを録音して、正しい発音を何度も繰り返し聞いて、そして自分で朗読してみるというのである。主人公弦矢はアメリカ留学時代にこの勉強方法により短期間で急速に英語が上達した。その結果、専門分野の経済用語だけでなく、文学的表現や単語を身につけることができたという。


松本亨の英語観


英語教育界の巨星だった松本亨は『英語で考える本』(英友社、1968年)の冒頭で、英語の文型がいかに単純かという話からスタートしている。
松本は、英文は大きく分けて二種類しかないと言い切る。
①A=B(AはBである)
②A→B(AはBを何々する)
この二つだと断言する。すべての英文を、A=B、A→Bに二分するという発想は、その後の松本の著作の基本フレームとなっている。
例文を挙げると、
①I am a student. (A=B)
②I ate supper. (A→B)
このように、英語のフォーミュラ(表現の型)は非常に単純であり、そのことは英語で考える上でとても好都合であるという(晴山、2008年、75頁~76頁、191頁~192頁)。
このことは、究極にシンプルな英文の組み立て方は、①誰が(主語)、②どうする(動詞)+付け足しであるということにもなる。つまり、英語の土台になっているのは、主語+動詞である。これが英語の「幹」であり、付け足しは「枝葉」という情報であるとも捉えられる。

ところで、英会話コーチの山田暢彦は、中学で習う英文は、すべてこの型に当てはめることができるという(『山陰中央新報』2015年4月11日[土])。
例えば、次のような例文を考えてみれば、このことがわかる。
①I wake up.(私は起きます)
  あとは、「7時に」=「at seven」
      「朝」 =「in the morning」
②I went.(私は行きました)
  あとは、【どこへ】  =「there」
      【誰と】   =「with my sister」
      【どうやって】=「by bus」
      【何のために】=「to meet him」
というふうに、考えながら膨らませてゆくことができる。
だから英語を話す際、とりあえず「誰がどうする」まで口に出すことを意識せよという。それ以外の情報は、後から付け足すことができる。ポイントは「誰がどうする」と「付け足し」を区別して文を組み立てることである。これができれば、たとえ中1の易しい文法でも、十分「英語らしい英語」がしゃべれるようになれる。

伊藤和夫については校正済(2021年10月26日)

伊藤和夫と英文解釈


伊藤和夫『英文解釈教室』研究社出版、1977年[1997年版]について
1970年代は英語の名人が輩出した時代である。同時通訳者が脚光を浴びてスター的な存在となり、名うての翻訳家たちがプロのノウハウを明かし始め、彼らが目を見張る本を世に問うた。

晴山陽一は1970年代を「逡巡の時代」と呼んでいる。名人と素人の格差が歴然と広がり、成果の上がらない英語教育に対する根本的な疑問が投げかけられた時期だった。この時代のベストセラーとして、晴山は次の3冊を取り上げている。
①國弘正雄『英語の話しかた』サイマル出版会、1970年
②中津燎子『なんで英語やるの?』午夢館、1974年
③伊藤和夫『英文解釈教室』研究社出版、1977年[1997年版]
(晴山、2008年、88頁~89頁)。

この中で、『英文解釈教室』は重厚な受験参考書ながら、ミリオン・セラーを達成している。
伊藤和夫の発想は、改訂版「はしがき」[1997年版]に簡潔にまとめられている。
つまり、どんな英文も文頭からスタートし、左から右へ、上から下へ一度読むだけで、その構造と内容の明確な把握に到達しようとする「直読直解」の読み方を具体的に示すこと。伊藤は「英語は左から右へ読むものである」という生涯を通じて持ち続けた信念を明確に打ち出した。伊藤和夫は生来の思想家であり、構築家であったと晴山はいう。

英文を訳せば事足りるとする態度は、<英語→日本語→事柄>の順で理解しようとしている。これに対し、伊藤和夫が目指したのは、<英語→事柄→日本語>という理解の順序である。伊藤は言う。
「英語自体から事柄が分かること、つまり訳せるから分かるのではなく、分かるから必要なら訳せることが英語の目的である」と。
伊藤和夫の言語観とは、「言語の習得は理解が半分、理解した事項の血肉化が半分である。後者のためには、同種の構文で書かれた文章を大量かつ集中的に読むことが有効である」というものである。

伊藤は「あとがき」で、
「英語の構文を理論的に解明することを主眼とし、英文の読解にあたってその構造をできるかぎり意識的に分析しようとした」のが、『英文解釈教室』という本であり、この書物から得た知識をもとに、自分が読みたい原書を読むことを勧めている。そして、「本書の説く思考法が諸君の無意識の世界に完全に沈み、諸君が本書のことを忘れ去ることができたとき、本書は諸君のための役割を果たし終えたこととなるであろう」と締めくくっている。伊藤和夫(1927-1997)は、東京大学文学部西洋哲学科を卒業しただけあって、その主張は哲学的で、説得力がある。

日本語にする以前の水際で英文を「事柄」として理解する。それが伊藤が生涯追い求めた理想の「英文解釈」のあり方だったようだ。この<英語→事柄→日本語>という図式は、國弘正雄の<英語→イメージ→日本語>と完全に一致すると晴山陽一はいう(伊藤、1977年[1997年版]、iii頁~v頁、314頁。晴山、2008年、121頁)。


伊藤和夫『ビジュアル英文解釈PARTⅠ』駿台文庫、1987年
伊藤和夫『ビジュアル英文解釈PARTⅡ』駿台文庫、1988年

【伊藤和夫『ビジュアル英文解釈PARTⅠ』駿台文庫はこちらから】

ビジュアル英文解釈 PARTI (駿台レクチャー叢書)


【伊藤和夫『ビジュアル英文解釈PARTⅡ』駿台文庫はこちらから】

ビジュアル英文解釈 PARTII (駿台レクチャー叢書)


≪英語の格言と『Vision Quest 総合英語』≫

2021-12-15 18:07:31 | 語学の学び方
≪英語の格言と『Vision Quest 総合英語』≫
(2021年12月15日)

【はじめに】


野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)にみえる英語の格言・名言についてまとめてみた。



【野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』はこちらから】

Vision Quest 総合英語 2nd Edition




野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年

本書の目次は次のようになっている。
【目次】
第1章  文の種類
第2章  文型と動詞
第3章  時制
第4章  完了形
第5章  助動詞
第6章  受動態
第7章  不定詞
第8章  動名詞
第9章  分詞
第10章  関係詞
第11章  比較
第12章  仮定法
第13章  否定
第14章  強調・倒置・挿入・省略・同格
第15章  無生物主語・名詞構文
第16章  話法
第17章  接続詞
第18章  前置詞
第19章  疑問詞
第20章  名詞
第21章  冠詞
第22章  代名詞
第23章  形容詞
第24章  副詞





さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・定番の格言
・愛についての言葉
・映画の中の名言
・科学者の言葉







定番の格言



A friend in need is a friend indeed. まさかのときの友こそ真の友。
(34頁~35頁)

Knowledge is power. 知識は力なり。
(40頁~41頁)

If you run after two hares, you will catch neither. 二兎を追う者は一兎をも得ず。
(70頁~71頁)

Don't count your chickens before they are hatched. 卵からかえる前にニワトリの数を数えるな。(→捕らぬタヌキの皮算用。)
(118頁~119頁)

Rome was not built in a day. ローマは一日にして成らず。
(120頁~121頁)

It takes two to make a quarrel. けんかをするには2人が必要。(→けんか両成敗。)
(144頁~145頁)

Let sleeping dogs lie.眠っている犬は寝かしておきなさい。(→さわらぬ神にたたりなし。)
(150頁~151頁)

Seeing is believing. 百聞は一見にしかず。
(166頁~167頁)

There is no accounting for tastes. 好みは説明できない。(→たで食う虫も好きずき。)
(176頁~177頁)

A drowing man will clutch at a straw. おぼれる者はわらをもつかむ。
(184頁~185頁)

All good things come to those who wait. 待つ者には、あらゆるよいことが到来する。(→待てば海路の日和あり。)
(208頁~209頁)

Where there's a will, there's a way. 意志のあるところには道がある。(→精神一到何事か成らざらん。)
(220頁~221頁)

The pen is mightier than the sword. ペンは剣よりも強し。(文は武よりも強し。)
(238頁~239頁)

Two heads are better than one. 2人の頭脳は1人にまさる。(→三人寄れば文殊の知恵。)
(240頁~241頁)

Prevention is better than cure. 予防は治療に勝る。(→転ばぬ先の杖。)
(246頁~247頁)

It never rains but it pours. 降ればどしゃ降り。(→泣き面にハチ。)
(288頁~289頁)

Nothing ventured, nothing gained. 危険を冒さなければ、何も得らない。(→虎穴に入らずんば虎児を得ず。)
(290頁~291頁)

It is a wise child that knows its own father.
自分の父を知っている子は賢い子である。(→親の心子知らず。)
(304頁~305頁)

Slow and steady wins the race. ゆっくり着実なのが競争に勝つ。(→急がば回れ。)
(346頁~347頁)

Scratch my back, and I'll scratch yours.
私の背中をかいてくれれば、あなたの背中をかきましょう。(→魚心あれば水心あり。)
(350頁~351頁)

Make hay while the sun shines. 日の照っているうちに草を干せ。(→好機を逸するな。)
(356頁~357頁)
このことわざは英国で生まれたそうだ。その理由については、
岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社、2001年[2000年第1刷])の「第7章 関係詞の研究」の「構文47 That is (/That’s) is why~(それが~する理由である、そのために~)」の研究問題に、次のように説明してある。
・The weather changes quickly and very often, and rain may
fall at any time. That is why the British have the proverb,
“Make hay while the sun shines.”

<語句>
・at any time いつなんどき;proverb (名)ことわざ;hay (名)ほし草
<ヒント>
・第2文のthe British have the proverbは、直訳すると、「英国人は~ということわざをもっている」となるが、これは、「~ということわざが英国にある」とすれば日本語らしくなる。
・“Make hay while the sun shines.”「太陽が照っている間にほし草を作れ」は「好機をのがすな」ということである。
⇒同じ内容のことわざとして、
 “Strike while the iron is hot.”「鉄は熱いうちに打て」というのがある。
<訳例>
・天候は急激にしかも非常によく変わる。そしていつ雨が降るかもしれない。それが英国に「太陽が照っている間にほし草を作れ」(→「好機をのがすな」という意味)ということわざがある理由である。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、106頁)

このように、このことわざには、英国の天候が変わりやすいという風土が存在した。


When in Rome, do as the Romans do.
ローマではローマ人のするようにせよ。(→郷に入っては郷に従え。)
(372頁~373頁)

After a storm comes a calm. 嵐の後にはなぎが来る。(→雨降って地固まる。)
(390頁~391頁)

No smoke without fire. 火がなければ煙もない。(→火のないところに煙は立たぬ。)
(392頁~393頁)

Necessity is the mother of invention. 必要は発明の母。
(396頁~397頁)

Time is money. 時は金なり。
(432頁~433頁)

Ignorance is bliss. 無知は至福である。(→知らぬが仏。)
(434頁~435頁)

Even Homer sometimes nods. ホメロスでさえ居眠りすることがある。(→弘法にも筆の誤り。)
(436頁~437頁)

One man's meat is another man's poison. ある人の肉はほかの人には毒である。(→甲の薬は乙の毒。)
(438頁~439頁)

You cannot see the forest for the trees. 木を見て森を見ず。
(468頁~469頁)

History repeats itself. 歴史は繰り返す。
(470頁~471頁)

All's well that ends well. 終わりよければすべてよし。
(486頁~487頁)

Fine feathers make fine birds. 美しい羽は美しい鳥を作る。(→馬子にも衣装。)
(498頁~499頁)


Art is long, life is short. 技術を学ぶには長い時間がかかる。(→少年老い易く学成り難し。)
(500頁~501頁)

Too many cooks spoil the broth.
料理人が多すぎるとスープがだめになる。(→船頭多くして船山に上る。)
(506頁~507頁)

A little learning is a dangerous thing.
少しばかりの学問は危険なものだ。(→生兵法は大けがのもと。)
(508頁~509頁)

Bad news travels fast. 悪い知らせはすぐに広まる。(→悪事千里を走る。)
(520頁~521頁)


愛についての言葉



愛についての言葉
愛についての言葉

Once you have learned to love, you will have learned to live.
愛することができるようになれば、生きることができるようになる。

マザー・テレサと愛の言葉
マザー・テレサと愛の言葉

"Yesterday is gone. Tomorrow has not yet come. We have only today. Let us begin.
-- Mother Teresa"
"昨日は去りました。明日はまだ来ていません。私たちにはただ今日があるのみ。さあ始めましょう。
ーーマザー・テレサ"

"The hunger for love is much more difficult to remove than the hunger for bread.
-- Mother Teresa"
"愛に対する飢えのほうがパンに対する飢えよりも取り除くのがはるかに難しい。
ーーマザー・テレサ"

"Every time you smile at someone, it is an action of love, a gift to that person,
a beautiful thing. -- Mother Teresa"
"あなたが誰かにほほえむたびに、それは愛の行為なのです。その方への贈り物です。
美しいものなのです。ーーマザー・テレサ"

Love is a fruit in season at all times, and within reach of every hand. -- Mother Teresa愛は一年中が旬で、誰でも手が届くところになっている果実である。ーーマザー・テレサ

Peace begins with a smile. -- Mother Teresa
平和はほほえみから始まるのです。ーーマザー・テレサ

Love begins by taking care of the closest ones - the ones at home. -- Mother Teresa
愛は最も身近にいる人たち、つまり家族を大切にすることから始まる。ーーマザー・テレサ

ドストエフスキーの言葉
ドストエフスキーの言葉
Where there is no love there is no sense either. -- Fyodor Dostoyevsky
愛のないところには、良識もまた育たない。ーーフョードル・ドストエフスキー


"The cleverest of all, in my opinion, is the man who calls himself a fool at least
once a month. -- Fyodor Dostoyevsky"
"私の考えでは、最も賢い人は少なくとも月に一度は自分自身をばかだと言っている。
ーーフョードル・ドストエフスキー"

対照的な言葉はニッコロ・マキャヴェリ
It is much more secure to be feared than to be loved. -- Niccolo Machiavelli
愛されるより、恐れられるほうがはるかに安全である。ーーニッコロ・マキャヴェリ

その他
I don't want to be worshipped. I want to be loved. -- The Philadelphia Story
崇拝されたいわけではないの。ただ愛されたいだけなの。『フィラデルフィア物語』

I wish I didn't love you so much. -- Casablanca
こんなに愛していなければいいのに。『カサブランカ』

ヘレン・ケラーの言葉
ヘレン・ケラーの言葉
When one door of happiness closes, another opens; but often we look so long at the
closed door that we do not see the one which has been opened for us. --- Helen Keller
幸福の扉がひとつ閉まると、別の扉が開く。しかし、閉まった扉をいつまでも見ているので、目の前に開いた扉が目に入らない。ーーヘレン・ケラー"

Life is an exciting business, and most exciting when it is lived for others.
-- Helen Keller
人生とは、興奮に満ちている仕事のこと。最も興奮するのは、他人のために生きるとき。
ーーヘレン・ケラー

We could never learn to be brave and patient, if there were only joy in the world.
-- Helen Keller
もしこの世界に喜びしかなければ、我々は決して勇気も忍耐も学べないことになる。
ーーヘレン・ケラー

My share of the work may be limited, but the fact that it is work makes it precious.
-- Helen Keller
この世界で私に割り与えられた仕事は、きわめて限られたものかもしれない。だが、それは、かけがえのないものである。ーーヘレン・ケラー"

Although the world is full of suffering, it is full also of the overcoming of it.
-- Helen Keller
世界は苦しみに満ちているけれども、それを克服し、勝利して来た証もまた同様に満ちています。ーーヘレン・ケラー

映画の中の名言



映画の中の名言

There's no good-bye, Maria, because we're not apart. -- For Whom the Bell Tolls
マリア、さよならはなしだ。これは別れじゃないんだから。『誰が為に鐘は鳴る』

Tomorrow is another day. -- Gone With the Wind
明日は別の日になるのよ。『風と共に去りぬ』

And who owned that wand? -- Harry Potter and the Philosopher's Stone
その杖の持ち主は? ーー『ハリー・ポッターと賢者の石』


"Will you marry me? I'd make a good husband, Jenny. "
-- Forrest Gump
僕と結婚してくれないかい。ジェニー、僕はいい夫になるから。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』"

"Mama always said life was like a box of chocolates. You never know what
you're gonna get. " -- Forrest Gump
ママはいつも言ってたんだ。人生はチョコレートのよう、開けてみるまで何が入っているか
わからないって。ーー『フォレスト・ガンプ/一期一会』"


"I don't want to rule or conquer anyone. I should like to help everyone - if possible -
Jew, Gentile, black man, white. -- The Great Dictator"
"私は誰も支配や征服をしたくない。できればみんなを助けたいのだ。ユダヤ人にしろ、
キリスト教徒にしろ、黒人にしろ、白人にしろ。『独裁者』"

科学者の言葉


アインシュタイン
アインシュタイン

"A table, a chair, a bowl of fruit and a violin; what else does a man need to be happy?
-- Albert Einstein"
テーブル、いす、器いっぱいのフルーツ、そしてバイオリン。人が幸せになるのにほかに何が必要か? ーーアルベルト・アインシュタイン

I never think of the future. It comes soon enough. -- Albert Einstein
私は将来のことは考えない。それはすぐやって来るから。ーーアルベルト・アインシュタイン

Education is what remains after one has forgotten everything he learned in school.
-- Albert Einstein"
教育とは、学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後に、自分の中に残るものを言う。
ーーアルベルト・アインシュタイン"

Gravitation is not responsible for people falling in love. -- Albert Einstein
人は恋に落ちるのは重力のせいではない。ーーアルベルト・アインシュタイン

"Make everything as simple as possible, but not simpler.
-- Albert Einstein
物事はすべて、できるだけ単純にすべきだ。しかし、必要以上に単純化してはならない。
ーーアルベルト・アインシュタイン"

The more I learn, the more I realize I don't know.
-- Albert Einstein
学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるかを思い知らされる。
ーーアルベルト・アインシュタイン"

Logic will get you from A to B. Imagination will take you everywhere.
-- Albert Einstein
論理は君をAからBへ到達させる。想像は君をどこにでも連れて行く。
ーーアルベルト・アインシュタイン"

Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is
not to stop questioning. -- Albert Einstein
昨日から学び、今日を生き、明日に希望を持て。大切なのは、疑問を持つのをやめないことだ。
ーーアルベルト・アインシュタイン"


Any intelligent fool can make things bigger, more complex and more violent.
-- Albert Einstein
知識を身に付けた愚か者は誰であれ、事態をより大きくより複雑により暴力的にしてしまいかねない。
ーーアルベルト・アインシュタイン

【アインシュタインについて】
アインシュタインについては、
岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』(美誠社、2001年[2000年第1刷])の「第21章 特殊構文の研究」の「構文140 It is not until(till)~that…」の研究問題に、次のようにある。
・Einstein did very badly in school, and his schoolmaster
considered him very stupid. It was not until he was fourteen
that he solved his mathematical talents.
<語句>
・Einstein アインシュタイン;do badly in school 学校の成績が悪い;schoolmaster=teacher(日常語としては使用されない。);stupid (形)=foolish;mathematical (形)数学の;talent (名)才能
<ヒント>
・第2文の“It was not until ~that…”という構文は、ふつうの強調構文と違って、強められている部分を最初に訳すことに注意。
また、he was fourteen [years old]と補って考えよう。
<訳例>
・アインシュタインは学校の成績が大変悪く、先生は彼を馬鹿だと思っていた。14歳になってはじめて彼は数学的な才能を示した。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、320頁)

また、アインシュタイン夫人は、夫について次のように語っているようだ。
・Mrs.Einstein used to say that her husband liked order in his
thinking, but that he didn’t like it in his living. He did whatever
he wanted to, whenever he wanted to.
<語句>
・used to~ よく~したものだ(⇒構文55);order (名)秩序
<ヒント>
・第1文は間接話法を用いた文である。 
 被伝達文が重文であるので、butの次にthat があることに注意。
・第2文のwanted toの後にはどちらもdoが省略されている。
<訳例>
・アインシュタイン夫人は、夫は自分の思考には秩序のあることを好んだが、日常生活の中にはそんなものがあることは好まないですと、いつも言っていた。彼はしたい時にしたいことを何でもするのだった。
(岡田伸夫『英語の構文150 New Edition』美誠社、2001年[2000年第1刷]、104頁)


フロイト
フロイト

The mind is like an iceberg, it floats with one-seventh of its bulk above water.
-- Sigmund Freud
精神とは氷山のようなものである。氷山は、その大きさの7分の1を海面の上に出して漂う。
ーージークムント・フロイト 

コメント
人気アニメ『鬼滅の刃 無限列車編』では、「夢」や「無意識」をテーマに扱い、フロイトの精神分析論を参考にしているとされる。
フロイトは、心の中に「意識」と「無意識」があることを発見した。よく例えられるのが、「意識」は氷山の一角で、「無意識」は氷山のうち、海に沈んでいる大部分である。
漫画では、「意識」の周りに「無意識」があると表現されていた。そして、「無意識」のところに精神の核があり、その核を破壊されると廃人となってしまうとされた。4人の少年少女は、炭治郎たちの精神の核を破壊することを条件に、魘夢(下弦の壱)からいい夢を見せてもらう約束をしていた。つまり、魘夢の狙いは、眠っている炭治郎たちの無意識領域に潜り込み、精神の核を破壊することだった。









≪『Vision Quest 総合英語』の文法の要点 その2≫

2021-12-15 18:00:24 | 語学の学び方
ブログ≪『Vision Quest 総合英語』の文法の要点 その2≫
(2021年12月15日)
 

【はじめに】


野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』(新興出版社啓林館、2017年)を参考に、英文法の要点をまとめてみた。




【野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』はこちらから】

Vision Quest 総合英語 2nd Edition







【はじめに】


 
その内容を要約した上で、【読後の感想とコメント】を述べてみたい。
 
 






野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年

本書の目次は次のようになっている。
【目次】
第1章  文の種類
第2章  文型と動詞
第3章  時制
第4章  完了形
第5章  助動詞
第6章  受動態
第7章  不定詞
第8章  動名詞
第9章  分詞
第10章  関係詞
第11章  比較
第12章  仮定法
第13章  否定
第14章  強調・倒置・挿入・省略・同格
第15章  無生物主語・名詞構文
第16章  話法
第17章  接続詞
第18章  前置詞
第19章  疑問詞
第20章  名詞
第21章  冠詞
第22章  代名詞
第23章  形容詞
第24章  副詞











さて、今回の執筆項目は次のようになる。


【文法の要点 その2】
・前置詞の重要性~「第18章 前置詞」より
・群動詞
・形容詞の語法~「第23章 形容詞」より
・つなぎ言葉(ディスコースマーカー)になる副詞(句)および副詞の語法~「第24章 副詞」

なお前回は【文法の要点 その1】
・『Vision Quest 総合英語』の文法の要点
・「第2章 文型と動詞」の基本5文型のまとめ
・「第10章 関係詞」の関係詞の種類と意味
・句と節のまとめ
・「第11章 比較」
・「第12章 仮定法」の仮定法過去と仮定法過去完了
・「第14章 強調・倒置・挿入・省略・同格」







前置詞の重要性~「第18章 前置詞」より


前置詞のイメージ


・前置詞は、名詞や代名詞の「前」に置かれる語である。
 前置詞には基本的なイメージがある。そのイメージをつかんでおけば、使い分けがしやすくなる。
① atは「一点」を指すイメージ
 <例文> Let’s meet at the station.(駅で会いましょう。)
② in は場所や空間の「中」のイメージ
 <例文> My father is in the living room.(父は居間にいます。)
③ on は「接触」のイメージ
 <例文> There is a spider on the ceiling.(天井にクモがいます。)
 ※ onは何かの「上」だと思われているが、天井の壁にクモがいる場合でも、onが仕える。なぜなら、onは「接触」を表すから。

・前置詞は、名詞・代名詞などの前に置かれ、名詞や動詞を修飾する句をつくる。
 だから、熟語をつくる場合には、欠かせないのが前置詞の理解である。英語の語彙力を向上させるためにも、前置詞が持つ意味の広がりを理解しておこう。

☆ここでは、forとwithを特に取り上げて説明しておこう。
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、372頁~373頁)

前置詞forが持つ意味の広がり


・まず、forについてはFocus 233に次のような例文がある。
1. He left for London yesterday.     (彼は昨日ロンドンへ発ちました。)
2. Please call a taxi for me.      (私にタクシーを呼んでください。)
3. I studied for two hours last night.   (私は昨夜2時間勉強した。)

①for「方向」
・forの基本的なイメージは、「~に向かって」という向いている方向である。
 例文1のHe left for London yesterday.のforは「方向」である。
②for「利益」
・forは「~のために」という利益を表す。受益者に利益が向かっているイメージ。
 例文2のPlease call a taxi for me.のforは「利益」である。
③for「継続する期間」
・時間は流れるものとして認識され、forはその流れに沿って行われる行為や状態などの期間を表す。
 例文3のI studied for two hours last night.がそれである。
④forが持つ意味の広がり
・forが持つ意味の広がりとして、次のようなものがある。
・[対象]、[目的]、[交換・代償]、[要求]、[原因・理由]
・これらのうち、特に「交換・代償を表すfor」および「原因・理由を表すfor」の熟語をあげておく。

【交換・代償を表すfor】
□ for nothing [free] 無料で
□ exchange A for B AをBと交換する
□ substitute A for B AをBの代わりにする[使う]
□ take [mistake] A for B AをBだと思う[思い違いする]
【原因・理由を表すfor】
□ be famous for ~ ~で有名である
□ apologize for ~ ~をわびる
□ blame A for B A[人]をB[過失など]のことで非難する
□ excuse [forgive] A for B A[人]をB[過失など]のことで許す
□ praise A for B A[人]をBのことでほめる
□ punish A for B A[人]をB[罪など]のことで罰する
□ thank A for B A[人]をBのことでお礼を言う

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、378頁~379頁)

前置詞withが持つ意味の広がり


・withについては、Focus 250に次のような例文がある。
I went camping with my friends last weekend.  (先週末、友人とキャンプに行った。)

①with「同伴」
・withは「~と一緒に」という同伴のイメージを持つ。
 例文のI went camping with my friends last weekend.は、「友人と共に」という意味を表す。
②withが持つ意味の広がり
・withが持つ意味の広がりとして、次のようなものがあげられる。
・[特性・所有]、[道具]、[付加・付随]、[供給]、[原因・理由]、[対象・関係]、[比較対象]
・これらのうち、特に「付加・付随を表すwith」、「供給を表すwith」、「原因・理由を表すwith」、「対象・関係を表すwith」の熟語をあげておく。

【付加・付随を表すwith】
□ be covered with ~     ~で覆われている
□ be filled with ~     ~でいっぱいである
□ be crowded with ~ ~で混雑している
□ be blessed with ~     ~に恵まれている
【供給を表すwith】
□ present A with B     A[人]にB[物]を贈る
□ provide [supply] A with B A[人]にB[必要なもの]を供給する
□ serve A with B     A[人]にB[飲食物]を出す
□ equip A with B     A[人]にB[必要なもの]を備える
【原因・理由を表すwith】
□ be pleased with ~            ~に喜ぶ
□ be satisfied [content, contented] with ~ ~に満足している
□ be fed up with ~          ~にうんざりしている
□ beside oneself with ~      ~で我を忘れる
【対象・関係を表すwith】
□ agree with ~     ~に同意する
□ go with ~     ~に調和する
□ argue with ~     ~と口論する
□ interfere with ~     ~を妨害する
□ sympathize with ~ ~に同情する
□ get [keep] in touch with ~ ~に連絡する[と連絡を取り合う]
□ be [get] acquainted with ~ ~と知り合いである[知り合う]
□ be faced [confronted] with ~ ~に直面している
□ associate A with B      AをBと結びつけて考える
□ identify A with B      AをBと同じものとして考える
□ share A with B      A[物]をB[人]と共有する
□ replace A with B      AをBと置きかえる
□ help A with B      BのことでAを手助けする
□ have something [nothing] to do with ~ ~と多少の関係がある[何の関係もない]
□ What's the matter with you?  どうしたの。

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、392頁~394頁)



群前置詞


・out of, in front of, next toのように、2語以上の語がまとまって、1つの前置詞の働きをするものを、群前置詞と呼ぶ。
・群前置詞については、Focus 255に次のような例文がある。
1. The game was postponed because of the rain.  (雨のために試合は延期された。)
2. In spite of the rain, they went to the beach.  (雨にもかかわらず、彼らはビーチへ行った。)
3. According to the weather forecast, it will be fine tomorrow. 
(天気予報によると、明日は晴れるだろう。)
① because of「~のために」
 because ofは直後に名詞をとり、「~のために」という原因・理由を表す。
 =The game was postponed because it was raining.
② in spite of「~にもかかわらず」
 in spite of「~にもかかわらず」という意味を表す。
 =Although it was raining, they went to the beach.
 なお、despite(~にもかかわらず)を用いることもできる。(in spite ofより堅い言い方)
 Despite the rain, they went to the beach.

③ according to「~によると」
 according toは直後に名詞をとり、「~によると」という情報の出所を示す。

☆群前置詞について、「原因・理由」「目的」「その他」に分けて、次のものをあげておく。

【原因・理由】
□ because of ~/on account of ~/owing to ~/due to ~ ~のために
□ thanks to ~ ~のおかげで
【目的】
□ with a view to doing /for the purpose of doing ~する目的で
□ for the sake of ~ ~のために
□ for fear of doing ~することを恐れて、~しないように
【その他】
□ as for ~/as to ~/with [in] regard to ~/as regards ~/with respect to ~
/in respect of ~/in relation to ~ ~に関しては
□ in terms of ~ ~の観点から
□ regardless of ~ ~とは関係なく
□ in spite of ~/for all ~ ~にもかかわらず
□ in (the) face of ~ ~に直面して、~にもかかわらず
□ in case of ~ ~の場合は、~に備えて
□ instead of ~/in place of ~ ~の代わりに
□ on behalf of ~ ~に代わって
□ according to ~ ~によると、~にしたがって
□ in addition to ~/on top of ~ ~加えて
□ contrary to ~ ~に反して
□ on the part of ~ ~の側では
□ apart from ~ ~は別として
□ except for ~ ~を除いて

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、399頁~400頁)



群動詞


【群動詞】
・動詞に副詞・前置詞・名詞などが付いて、「1つのまとまり」で動詞の働きをするものを、群動詞(句動詞)という。
・群動詞には、次のものがある。
 1. 「自動詞の働きをするもの」
 2. 「他動詞の働きをするもの」
・群動詞は、それぞれ独自の意味を持つが、その意味は使われている動詞・副詞・前置詞・名詞が本来持つ意味から発展したものである。
 例えば、look outは、「外を(out)見る(look)」という本来の意味から「気を付ける」という意味になる。
・副詞・前置詞のイメージを持っておくと、群動詞の意味を理解する手助けになる。
⇒out「外へ」、away「離れて」、off「離れて、外れて」、up「上へ」、for「~に向かって」、into「~の中へ」、after「~の後ろに」、to「~へ」、down「下へ」、on「~の上に」、forward「前へ向かって」、in「~の中に」

☆次に、自動詞の働きおよび他動詞の働きをする群動詞を次のような形で分類して列挙しておく。
1. 「自動詞の働きをする群動詞」
  <動詞+副詞>
2. 「他動詞の働きをする群動詞」
 ①<動詞+副詞>
 ②<動詞+前置詞>
 ③<動詞+副詞+前置詞>
 ④<動詞+名詞+前置詞>

自動詞の働きをする群動詞


【<動詞+副詞>で自動詞の働きをする群動詞】
□ break down 故障する
□ break out     起こる、発生する
□ come about 起こる=happen, occur
□ come out 現れる、出版される
□ go on     続く=last, continue
□ go out     出かける、[火などが]消える
□ look [watch] out 気を付ける
□ pass away 亡くなる=die
□ run away     逃げる
□ set out     出発する
□ show [turn] up 現れる=appear
□ stand out 目立つ
□ stay up 起きている
□ take off 離陸する

【<動詞+副詞>で他動詞の働きをする群動詞】
□ bring about ~を引き起こす=cause
□ bring up     ~[子ども]を育てる=raise
□ call off     ~を中止する=cancel
□ carry on     ~を続ける=continue
□ carry out     ~を実行する
□ fill in [out] ~[書類]に必要事項を記入する
□ give up     ~をあきらめる
□ hand in     ~を提出する
□ look up     ~を[辞書などで]調べる
□ make [figure] out ~を理解する=understand
□ pick out     ~を選び出す=choose
□ pick up     ~を拾い上げる
□ put away     ~を片付ける
□ put down     ~を書き留める
□ put off     ~を延期する=postpone
□ put on     ~に身に付ける
□ ⇔take off ~を脱ぐ
□ run over     [乗り物が]~をひく
□ see off     ~を見送る
□ try on     ~を試着する
□ turn down ~を断る=reject, refuse
□ turn on     ~[電気など]をつける
□ ⇔turn off ~[電気など]を消す
□ turn up     ~[音量など]を上げる
□ ⇔turn down ~[音量など]を下げる

【<動詞+前置詞>で他動詞の働きをする群動詞】
□ account for ~の説明をする=explain
□ ask for     ~を求める
□ call for    ~を必要とする、~を求める=require
□ care for    ~の世話をする[面倒をみる]
□ come across ~に出くわす
□ come by     ~を手に入れる=obtain
□ deal with     ~を扱う=cope with
□ do without ~なしで済ます
□ get over     ~を克服する
□ hear from ~から便りがある
□ hit on     ~を思い付く
□ keep to     ~[規則など]に従う
□ look after     ~の世話をする
□ look for     ~を探す
□ look into ~を調査する=investigate
□ set about    ~に取りかかる=begin, start
□ stand by     ~を支持する
□ stand for     ~を表す=mean
□ take after     ~に似ている=resemble

【<動詞+副詞+前置詞>で他動詞の働きをする群動詞】
□ catch up with ~に追いつく
□ come up with ~を思い付く
□ do away with ~を廃止する=abolish
□ get along with ~と仲良くやっていく
□ give in to ~に屈する=yield to
□ keep up with ~に遅れずについていく
□ live up to ~[期待など]に添う
□ look forward to ~を楽しみに待つ
□ look up to ~を尊敬する=admire, respect
□ ⇔look down on ~を見下す
□ make up for ~の埋め合わせをする=compensate for
□ put up with ~を我慢する=tolerate, endure, bear, stand
□ run out of ~を使い果たす
□ speak ill of ~の悪口を言う
□ ⇔speak well of ~をほめる

【<動詞+名詞+前置詞>で他動詞の働きをする群動詞】
□ catch sight of ~を見付ける
□ ⇔lose sight of ~を見失う
□ find fault with ~のあら探しをする
□ give birth to ~を産む=bear
□ give rise to ~を引き起こす=cause
□ give way to ~に屈する=yield to、~に取って代わられる
□ make fun of ~をからかう=tease
□ make room for ~のために場所を空ける
□ make sense of ~を理解する
□ make use of ~を利用する
□ pay attention to ~に注意を払う
□ take advantage of ~を活用する
□ take care of ~の世話をする
□ take notice of ~に注意を払う
□ take part in ~に参加する
□ take pride in ~を誇りに思う

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、402頁~407頁)



形容詞の語法~「第23章 形容詞」より


1. 「多い」「少ない」を表す表現


・「多い」「少ない」を表す表現として、数えられる名詞(複数)[数を表す]の場合と、数えられない名詞(単数)[量を表す]の場合とがある。

【「多い」「少ない」を表す表現】
数えられる名詞(複数)[数を表す]
□ many ~ 多くの
□ a lot of ~ 〃
□ lots of ~ 〃
□ plenty of ~ 〃
□ numbers of ~ 〃
数えられない名詞(単数)[量を表す]
□ much ~ 多くの
□ a lot of ~ 〃
□ lots of ~ 〃
□ plenty of ~ 〃
数えられる名詞(複数)[数を表す]
□ a large number of ~ とても多くの
□ a great number of ~ 〃
□ a great many ~ 〃
□ a good many ~ 〃
□ quite a few ~ 〃
数えられない名詞(単数)[量を表す]
□ a large amount of ~ とても多くの
□ a great amount of ~ 〃
□ a great deal of ~ 〃
□ a good deal of ~ 〃
数えられる名詞(複数)[数を表す]
□ a few ~ 少しの~
□ a couple of ~ 2つ(いくつか)の~
□ only a few ~ ほんの少ししかない
□ few ~ ほとんどない
□ very few ~ ごくわずかしかない
数えられない名詞(単数)[量を表す]
□ a little ~ 少しの~
□ only a little ~ ほんの少ししかない
□ little ~ ほとんどない
□ very little ~ ごくわずかしかない

2. 「多い」「少ない」を表す表現 large, small


・数や量の「多い」「少ない」を many, muchやfew, littleではなく、large, smallを用いて表す名詞がある。
⇒これは、例えば、「人口」は「1人1人の人数」を表すというよりも「全体としての規模」を示しているためである。

【「多い」「少ない」を表す表現 large, small】
□ large number 数が多い、多数
□ small number 数が少ない、少数
□ large amount 量が多い、多量
□ small amount 量が少ない、少量
□ large population 人口の数が多い
□ small population 人口の数が少ない
□ large audience 聴衆の数が多い
□ small audience 聴衆の数が少ない
□ large crowd 群衆の数が多い
□ small crowd 群衆の数が少ない
「多い」「少ない」を表すheavy, light
□ heavy traffic 交通量が多い
□ light traffic 交通量が少ない

3. 「高い」「安い」を表すhigh, lowとlarge, small


・「高い」「安い」を expensive, cheapではなく、high, lowやlarge, smallを用いて表す名詞がある。

【「高い」「安い」を表すhigh, lowとlarge, small】
□ high cost     費用が高い
□ low cost     費用が安い
□ high fee     料金が高い
□ low fee     料金が安い
□ high interest 金利が高い
□ low interest 金利が安い
□ high price 価格が高い
□ low price     価格が安い
□ high pay     賃金が高い
□ low pay     賃金が安い
□ high wage 賃金が高い
□ low wage     賃金が安い
□ high [large] expense支出が高い
□ low [small] expense支出が安い
□ high [large] income 収入が高い
□ low [small] income 収入が安い
□ high [large] salary 給料が高い
□ low [small] salary 給料が安い

4. 対で覚える形容詞の表現


【対で覚える形容詞の表現】
□ strong coffee 濃いコーヒー
□ ⇔weak coffee 薄いコーヒー
□ serious illness 重い病気
□ ⇔minor illness 軽い病気
□ valuable 価値がある
□ invaluable 非常に価値のある
□ priceless 非常に価値のある
□ ⇔valueless 価値がない
□ ⇔worthless 価値がない

【「~することができる」⇔「~することができない」】
□ S(人) be able to do ~することができる
□ ⇔ S(人) be unable to do ~することができない
□ S(人・物) be capable of doing ~することができる
□ ⇔ S(人・物) be incapable of doing ~することができない
□ It's possible (for 人) to do ~することができる
□ ⇔It's impossible (for 人) to do ~することができない

5. つづりと意味がまぎらわしい形容詞


・つづりがまぎらわしい形容詞がある。それぞれ意味が異なるので注意が必要。
【つづりと意味がまぎらわしい形容詞 】
□ considerate 思いやりのある
□ considerable かなりの
□ continual     繰り返し起こる
□ continuous 絶え間ない
□ economic     経済の
□ economical 経済的な、安上がりな
□ favorite     お気に入りの
□ favorable     好意的な、好都合な
□ historic     歴史上有名な
□ historical    歴史の
□ industrial   産業の
□ industrious 勤勉な
□ intellectual 知能の
□ intelligent 聡明な
□ sensitive     敏感な
□ sensible     分別のある
□ social     社会の
□ sociable     社交的な
□ successful 成功した
□ successive 連続の
□ late     遅れた
□ latter     後者の
□ latest     最新の
□ respectful     礼儀正しい
□ respectable 立派な
□ respective それぞれの
□ literary     文学の
□ literal     文字通りの
□ literate     読み書きのできる
□ ↔ illiterate 読み書きのできない
□ imaginable 想像できる
□ imaginative 想像力に富んだ
□ imaginary 想像上の

上記のうち、considerate/ considerable、favorite/favorable、industrial/industrious、imaginable/imaginative/imaginaryについて、次のような例文がある。

① David is always considerate. (デイビッドはいつも思いやりがある。)
② Susan spent a considerable amount of money in Rome.
(スーザンはローマでかなりの額のお金を使った。)
③ What is your favorite movie? (あなたの好きな映画は何ですか。)
④ He received a favorable reply. (彼は好意的な返事を受け取った。)
⑤ They should try to decrease industrial waste. 
(彼らは産業廃棄物を減らすように努めなければならない。)
⑥ Most of the students here are industrious. (ここにいる生徒の大半は勤勉です。)
⑦ The doctor tried every imaginable treatment. (医者は考えられるあらゆる治療法を試した。)
⑧ We were surprised at his imaginative design. 
(私たちは彼の想像力に富んだデザインに驚いた。)
⑨ The dragon is the only imaginary animal in the twelve annual zodiac signs.
 (竜は12の干支の中で唯一の想像上の動物だ。)

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、513頁~517頁)



つなぎ言葉(ディスコースマーカー)になる副詞(句)および副詞の語法~「第24章 副詞」


文と文の論理関係を表すディスコースマーカー


・副詞の中には、文と文の論理関係を表すものがあり、ディスコースマーカーなどと呼ばれる。
 多くのものは文頭で用いられるが、however(しかしながら)、therefore(それゆえ)などは、文の途中に挿入されることもある。
・Focus 336には、次のような例文がある。
1.  The project is in its final stage. However, some problems remain to be solved.
  (プロジェクトは最終段階に入った。しかしながら、解決すべき問題がいくつか残っている。)
=The project is in its final stage. Some problems, however, remain to be solved.

2.  Some chemicals are harmful to the environment and, therefore, we are against their use.
  (いくつかの化学物質は環境にとって有害である。それゆえ、私たちはその使用に反対である。)
(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、532頁)

つなぎ言葉になる副詞(句)の例


・「つなぎ言葉になる副詞(句)」として、次のように分類して、列挙している。
 列挙・順序、追加、逆接、対比、結果、言いかえ、要約、結論、類似、そのほか


つなぎの言葉になる副詞(句)

【列挙・順序】
□ to begin with 初めに
□ first of all まず第一に
□ first(ly) 第一に
□ second(ly) 第二に
□ third(ly) 第三に
□ finally [lastly] 最後に
□ next 次に
□ then それから
□ earlier 前に
□ later 後で

【追加】
□ also ~もまた
□ too ~も
□ as well ~もまた
□ besides [moreover, what is more] その上
□ furthermore さらには
□ in addition 加えて

【例示】
□ for example [instance] 例えば

【逆接】
□ however         しかしながら
□ on the contrary     それどころか
□ nevertheless [nonetheless] それにもかかわらず
□ yet         しかし

【対比】
□ meanwhile [on the other hand] 他方では
□ in contrast それに比べて

【結果】
□ therefore それゆえ
□ accordingly したがって
□ consequently その結果
□ thus     したがって、だから
□ as a result 結果として

【言いかえ】
□ that is (to say) つまり
□ in other words 言いかえると

【要約】
□ in short     要するに
□ in a word    一言で言うと
□ in summary 要約すると

【結論】
□ in conclusion 結論として


【類似】
□ similarly [likewise] 同様に
□ in the same way 同じように

【そのほか】
□ instead 代わりに
□ otherwise さもなければ
□ by the way ところで

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、532頁~533頁)

副詞の語法


・副詞の語法として、注意すべき点がある。
① -lyの有無によって意味の異なる副詞
② 意外な意味を持つ副詞

【① -lyの有無によって意味の異なる副詞】
-lyの有無によって意味の異なる副詞
□ hard 一生懸命に
□ hardly ほとんど~ない
□ near 近くに
□ nearly ほとんど~するところ
□ high 高く
□ highly 大いに
□ late 遅く
□ lately 最近
□ most 最も
□ mostly たいていは
□ short 急に
□ shortly すぐに、まもなく

上記のうち、late/latelyの例文として、次のようなものがある。
・Did you get home late? (家に遅く帰りましたか。)
・Have you seen him lately? (最近彼に会いましたか。)

【②意外な意味を持つ副詞】
意外な意味を持つ副詞
□ pretty かなり
□ sound [fast] ぐっすりと
□ badly とても
□ sharp きっかりに

上記のうち、sound [fast]の例文として、次のようなものがある。
・The boy was sound [fast] asleep on the sofa. (少年はソファーの上でぐっすり眠っていた。)

(野村恵造『Vision Quest 総合英語 2nd Edition』新興出版社啓林館、2017年、534頁~535頁)