≪漢文の句形~三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』より≫
(2023年12月17日投稿)
漢文の勉強法について考える際に、現在、私の手元にある参考書として、次のものを挙げておいた。
〇菊地隆雄ほか『漢文必携[四訂版]』桐原書店、1999年[2019年版]
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
〇幸重敬郎『漢文が読めるようになる』ベレ出版、2008年
〇小川環樹・西田太一郎『漢文入門』岩波全書、1957年[1994年版]
これらのうち、受験に特化し、効率的な勉強法を説いた参考書としては、次の2冊である。
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
今回のブログでは、次の参考書について、紹介しておきたい。
(共通テストにかわったが、センター試験の過去問は良問が多いともいわれるので、練習のつもりで取り組んでもらえたらと思う)
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
とりわけ、漢文の句形に関する問題、再読文字、使役、反語、抑揚についてみておこう。
あわせて、解釈の問題、語意を問う問題についても練習してみよう。
なるべく数多くの漢文の文章に触れて、漢文の句形や内容を知ってほしい。
(返り点は入力の都合上、省略した。白文および書き下し文から、返り点は推測してほしい。)
【三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)はこちらから】
三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
・センター試験の漢文は満点がとれるテストであると、三宅崇広先生はいう。
本書で十分な対策を講じて、第一志望合格という栄冠を勝ちとってほしいという。
〇センター試験で問われる「漢文の力」とは?
センター試験の漢文の配点は50点。ほかは現代文50点×2題、古文50点。
試験時間は国語全体で80分だから、漢文の配分は20分程度。
文章の長さは180~220字程度で、大学入試の漢文としては、比較的長い文章が出題されている。
・文章の内容は、逸話・説話か随筆がほとんど。
(特別な思想や時代背景等の知識を必要とするものは出題されない)
やや長い文章が出題されてはいるが、それだけ筋や主張のはっきりした素直な文章・読みやすい文章が選ばれている。
※高校課程修了時の受験生の、標準的な国語力・読解力が備わっているかどうかが、問われてくる。
・特別何も勉強しなくても文章が読めて満点がとれるかと言えば、そうはいかない。
「漢文」を読むためのハードルをクリアしなければならない。
現代文などとは比較にならないほど単純明快な筋の話でも、それを読むための道具である知識を持っていなければ、太刀打ちできない。
日本人としての教養の一つである、「漢文」を読む方法の基礎を身につけているかどうかも、もちろん問われている。
・対処する方法
①漢文を読むための基本的な道具である、句形・語法を覚えること。
漢文はある程度覚えることを必要とする科目であるが、裏を返せば、知識が得点に直結し、努力したことが報われる科目でもあるという。
しかも、使役や再読文字はほとんど毎年のように出題されている。
的を絞ることができ、覚えることも決して多くはない。
その意味では、漢文ほど短期間での得点アップが可能な教科はほかにないとも言える。
センター試験で毎年出題されている読み方や解釈の問題でも、そのほとんどでポイントになっているのが、句形・語法。
⇒漢文編の「攻略法1~14」を活用して、漢文を読むための道具を身につけよ。
(これは、同時に国公立二次試験や私大の漢文対策としても不可欠)
②「国語力=語彙力=漢字力」を養うことが必要。
漢文も「国語」のなかの一分野であるから、日本語としての語彙力で決まる設問も、若干出題されている。
実は例年、最も正答率が低いのが、このタイプの問題であるようだ。
語彙力の不足というのが現代の受験生の最大の弱点になっている。
(正答率が低い設問であるから、万一失点しても大きな影響はないかもしれないが、漢文は満点をとれる科目である。ここで満点をとって差をつけたい人には、この対策も怠ることは許されない。)
⇒漢文編の「攻略法17 語意を問う問題」と「別冊 漢文重要語」はそのためのもの
【まとめ】漢文で満点を取るために必要なこと
①漢文を読むための基礎を身につける
基本的な句法・語法を覚え、活用する。
②標準的な国語力を養う
語彙力・漢字力をつける。
③センター試験特有の攻略法を身につける
本書の攻略法をしっかりマスターする。
〇センター試験の漢文の設問とは?
・センター試験の漢文の設問は、6~7問程度。
枝問が設けられることがあるが、それでも1問当たりの配点は他教科に比べて高いから、注意が必要。
・設問の内容の平均的な構成:
傍線部の「読み方」「書き下し」を問うものが1問。(枝問の設定で2問になることもある)
傍線部の「解釈」「意味」を問うものが3問。
語句の意味を問うものが1問。(枝問の設定で2問になるのが普通)
文章全体の「趣旨」「論旨」を問うもの(内容一致問題)が1問。
・「読み方」「書き下し」の設問に対処するためには、句形・語法の知識が必要。
その知識があれば、傍線部を見ただけで正解が得られる設問が少なくない。
「句形別攻略法1~14」で前提となる知識を、「攻略法15 読み方・書き下しの問題」で実戦的な解法をマスターしてほしい。
※漢文を読むかぎり、句形・語法の知識は必須だから、「句形別攻略法」は「解釈」「意味」を問う問題に対しても、有効な対策となる。
ただし、もちろん、いわゆる「文脈」を読み取る必要のある問題も出題されるから、「攻略法16 解釈の問題」でセンター試験の出題のツボを把握しておくこと。
・語句の意味を問う問題には、「攻略法17 語意を問う問題」と別冊の「漢文重要語」が役立つ。
・文章の「趣旨」「論旨」を問う問題(例年、一番最後の設問)は、「句形別攻略法」で漢文を読むための正しい道具を身につけた人には、恐い問題ではない。
※センター試験の漢文は、現代文などとは比較にならないほど、単純明快な筋の話が出題されるのが普通だから、漢文を現代文にまで引きずり降ろせる力を持っていれば、文章の「趣旨」「論旨」など簡単につかめるはずだという。
「攻略法16 解釈の問題」に示すように、
①まず最後の設問に目を通して話題をつかむ
②それとの整合性を確かめながら、全体を読み進める
③最後に設問相互のつながりをチェックして(矛盾する答えを除外して)解答を決定する
このような方法はぜひ実践してほしいという。
最後の設問でも、必ず大きな手がかりとなるはずである。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、16頁~20頁)
攻略法1 句形別攻略法 再読文字
・再読文字といえば、漢文の基本中の基本。
センター試験の問題にも毎年のように登場する。
この項目は、再読どころか再三読んでほしい。
特に読み方を混同しないように注意することが大切。
<センターのツボ>
①【構文】未
【読み方】いまダ~ず
【訳し方】まだ~しない。
②【構文】将
【読み方】まさニ~ントす
【訳し方】~しようとする/~することになる。
③【構文】且
【読み方】まさニ~ントす
【訳し方】~しようとする/~することになる。
④【構文】当
【読み方】まさニ~ベシ
【訳し方】④~⑦はすべて、「~しなければならない」または「~するに違いない」と訳す
⑤【構文】応
【読み方】まさニ~ベシ
【訳し方】④~⑦はすべて、「~しなければならない」または「~するに違いない」と訳す
⑥【構文】宜
【読み方】よろシク~ベシ
【訳し方】「~するのがよろしい」のように訳すこともある。
⑦【構文】須
【読み方】すべかラク~ベシ
【訳し方】「~することが必要だ」のように訳すこともある。
⑧【構文】猶
【読み方】なホ~ごとシ
【訳し方】まるで~のようだ
⑨【構文】盍(何不~)
【読み方】なんゾ~ざル
【訳し方】どうして~しないのか/~したらよかろう
<注意>
・②と④を混同する人が多い。
「将来」「当然」という熟語で覚えておこう。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、180頁~181頁)
再読文字の読み方「且」
問1 「不得、且笞汝」はどう読むか。最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① えず、なんぢをむちうつべし
② えず、かつなんぢをむちうたんとす
③ えざるも、まさになんぢをむちうつべし
④ えざれば、まさになんぢをむちうたんとす
⑤ えざれば、しばらくなんぢをむちうつべし
⑥ えざること、なほなんぢをむちうつがごとし
【解説】
・「且」が「将」と同様に「まさに~んとす」と読む再読文字であることを覚えていれば、答えは簡単である。
①は「べし」が不適。
②は「かつ」が不適。
※副詞として「かつ」と読む場合は返り点がつかないし、「かつ~んとす」という読み方そのものが誤りである。
③のように「まさに~べし」と読むのは、「当」と「応」。
⑤のように、「且」を副詞として「しばらく」と読むことは稀にあるが、「しばらく~べし」という読み方はあり得ない。
⑥の「なほ~ごとし」という読み方をするのは、「猶」である。
【解答】④
【口語訳】「手に入らなければ、(罰として)おまえを鞭(むち)打つことにしよう。」
再読文字の読み方「当」
問2 「士窮達当有時命」の読み方として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)「時命」…時のめぐりあわせ、さだめ
① 士の窮達は当に時命有らんや
② 士の窮達には当に時命有るべし
③ 士の窮達には当に時命るべけんや
④ 士は窮するや達して当に時命有らんや
⑤ 士は窮するも達しては当に時命に有るべし
【解説】
・「当」は「まさに~べし」と読む再読文字だから、②と⑤に絞れるはず。
①や③のように、文末を「~んや」と結ぶと反語の読み方になってしまう。
④は「まさに~んとす」と読む再読文字「将」・「且」と混同させようというヒッカケの選択肢である。
②と⑤で少々迷うかもしれない。
「窮達」が現代語と同じく「困窮と栄達」の意味であること、注にある「時命」の意味などから、②が正解。
【解答】②
【口語訳】「役人が困窮するか栄達するかには、運の善し悪しがあるに違いない。」
再読文字の読み方「須」
問3 「先須熟読、使其言皆若出於吾之口」の書き下しとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① まづまさに熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
② まづよろしく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
③ まづすべからく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
④ まづまさに熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
⑤ まづよろしく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
⑥ まづすべからく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
【解説】
・「須」は「すべからく~べし」と読む再読文字だから、③と⑥に絞る。
ここからが少々難しい。
③と⑥を比較すると、「言をして皆」と「言の皆をして」の違いに気づく。
これは使役の読み方にかかわる部分である。
※使役の「使(しむ)」の後につづく使役の対象は、名詞でなければならない。
名詞だからこそ、格助詞の「をして」がつけられるのである。
ところが漢文の「皆」はすべて副詞であり、名詞にはならない。
よって、⑥のように「皆をして」と送り仮名をつけて読むことはできないのである。
・しかしここまで受験生に要求するのは、かなりの難題といえる。
なお、「ごとし」に「ごとから」という未然形はないから、「ごとからしむ」という読み方も好ましくないという。「ごとくならしむ」の方が正しい読みであるようだ。
※「センター試験でも、時として悪問が出題されることがある」という覚悟はしておこうと、編者はいう。
【解答】③
【口語訳】「まず最初に、書物の言葉がすべて自分の口から出たもののようになるまで、熟読する必要がある。」
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、184頁~187頁)
攻略法2 句形別攻略法 使役
・「王が臣下に~させる」「将軍が兵卒に~させる」など、使役は漢文で最もよく使われる表現の一つである。
センター試験でも、かなりの頻度で出題されている。
使役を制するものがセンターの漢文を制する、と言っても過言ではないようだ。
・「『使・令』を見たら『をして』と『しむ』」がポイント
<センターのツボ>
・構文:使(令)AB
読み方:AをしてBしむ
訳し方:AにBさせる
※「使(つかフ)」「令(れいス)」と動詞に読む場合もある。
≪漢文の要素≫
・A(使役の対象を表す名詞)…「をして」を送る。
・B(使役の内容を表す名詞)…「しむ」に接続させるために未然形になっている。
≪例文≫
①使人笑。 人をして笑はしむ 「人を笑わせる」
②令弟読三国志。 弟をして三国志を読ましむ 「弟に三国志を読ませる」
【注意点】
①「使・令」(しム)は、設問の書き下し文では常にひらがなになっている。
②使役の対象を表す名詞(A)は、省略されていることもある。
③使役の内容を表す動詞(B)のあとには、2番目の例文のように目的語がつくことが多い。
④「使・令」の他に、「教・遣・俾」も使役の「しむ」になることがあるが、センター試験ではふり仮名がつき、設問にはならないことが多い。
⑤「使・令」等を使わずに、文脈から使役に読むこともあるので、書き下しの選択肢に、「―しむ」が補われているものが含まれていたら、念のために文脈を確認する。
【例題】(使役を表す文字)
問「令」と同じ意味、用法を持つ語はどれか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①使
②雖
③被
④非
⑤猶
【解説】
・覚えていれば簡単だし、私大でも頻出するタイプの問題。
当然、正解は①。他の選択肢も重要な語ばかりなので、確認しておこう。
・②雖(いへども)は、仮定あるいは確定の、逆接接続詞。
③被(る・らル)は受身の助動詞。
④非(あらズ)は「~ではない」と否定的判断を示す語。
⑤猶には、副詞の「なホ=尚」と、再読文字の「なホ~ごとシ」の二つの用法がある。
【解答】①
【例題】(「使役」表現の読み方)
問「孰能使之然」の読み方として、最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①孰ぞ能(よ)く之を然らしめん。
②孰の能(のう)か之(ゆ)きて然らしめん。
③孰か能(よ)く之をして然らしめん。
④孰んぞ能(よ)く之を然りとせしめん。
⑤孰れの能(のう)か之をして然らしめん。
【解説】
・使役の読み方である「をして」と「しむ」がそろっているかどうかで、③と⑤に絞る。
ところが「能」は、「不」・「未」のついた否定文の場合には、「あたハず」と読み、そうでなければ「よク」と読むのが原則であるから、③が正解。
・センター試験の読み方の設問は、傍線部の中の句形・語法の知識だけで正解が得られるものが少なくない。ただし、最後に前後の文脈を確認することもお忘れなく。
【解答】③
【口語訳】誰がこれをそのようにすることを可能にしたのか。
【例題】(使役表現を含む文の読み)
問「聖人不レ能レ使鳥獣為二義理之行一」は、どう読むか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①聖人も鳥獣を使ひて義理の行ひをなすことあたはず。
②聖人も鳥獣をして義理の行ひをなさしむることあたはず。
③聖人も鳥獣のために義理の行ひをなさしむることあたはず。
④聖人も鳥獣をして義理の行ひをなすことあたはざらしむ。
⑤聖人も鳥獣をして義理の行ひをなさしむることあたはざらんや。
【解説】
・選択肢を一見しただけで、使役の読み方の「をして」と「しむ」から、②・④・⑤にしぼれる。
ところが、④の「あたはざらしむ」は、原文の返り点から見ても不可能な読み方。
・センター試験の「読み方」・「書き下し」を問う設問では、このように返り点がポイントとなるケースがあるので注意すること。
・⑤は「あたはざらんや」が不適。文末に「~んや」がつくと反語の読み方になってしまう。
・「使」を「つかフ」と読むこともあるが、下に動詞があれば「しむ」に接続させて「~させる」と訳してみることが大切。
【解答】②
【口語訳】聖人でも鳥や獣に道理にかなった行いをさせることなどできはしない。
【例題】
問 傍線部に送り仮名を記せ。
「吾瑟鼓之能使鬼神上下」
【解説】
・このような問題があった時、どうやって送り仮名を入れたらよいだろうか。
「使」は使役の「しム」なので、迷わずに「ム」と送り仮名をつける。
・「使」の直後の名詞は、使役の対象ではないかと考えて、「ヲシテ」を送って読んでみることが肝要。
・最後に、「上下」は使役の内容を表す動詞として、未然形にした上で送り仮名をつけるべきことが分かる。
ちなみに鬼神とは幽霊のこと。
【解答】
使一ム鬼神ヲシテ上下二セ
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、188頁~193頁)
攻略法6 句形別攻略法 反語
・「夢をあきらめない」という否定表現より、「どうして夢をあきらめたりしようか(いや、そんなことはない)」という反語表現のほうが意味が強まる。
・筆者や登場人物の主張が端的に表現されるのが反語である。
センター試験で頻出する「豈」と「安」には、特に注意すること。
【例題】(「反語」の読み方)
問「豈為是哉」の読み方として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①あにぜとなさんや。
②あにぜをなさんかな。
③あにこれをなさんかな。
④あにこれがためなるかな。
⑤いづくんぞぜとなさんや。
【解説】
・反語として文末だけを見て、すんなりと①と⑤に絞れる。
反語表現では、「んや」があるものを選べれば知識は確実なものとなっている。
正解は①で、⑤は「豈」の読み方が間違っている。基本はしっかり押さえるべきだ。
・①の解釈は、「どうして正しいと判断しようか、いや正しくはない」。
※とにかく、センター試験では<文末の「んや」は反語>が得点につながる。
ただし「~か」「~んか」と読んで「ひょっとしたら~か」と訳す推量表現になることもあるので、念のため、文脈を確認しよう。
<ポイント>
・文末に「ん(や)」があれば反語⇔反語表現は必ず「~ん(や)」と読む!
【解答】①
【例題】(「反語」の解釈)
問「城中安得有此獣」の解釈として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①城中にこんな獣がいて安全といえるのだろうか。
②城中は安全なのでこんな獣が多いのだろうか。
③城中にこんな獣がいるはずがないではないか。
④城中にどうしてこんな獣がいるのだろうか。
⑤城中にこんな獣がいるのは当然ではないか。
【解説】
・「安」は反語の副詞。
①②の「安全」はよくあるヒッカケ。
④は疑問の解釈になっている。
・「安得~」という反語表現は、事実において「不得~」という否定表現と同じになる。
よって、「安得有~」は、「不得有~」(~有るを得ず)、つまり現代語の「ありえない」と同じ意味になる。ここから、この部分だけを見ても正解は③とわかる。
【解答】③
【書き下し文】城中安んぞこの獣有るを得んや
<ポイント>
・反語の解釈で迷ったときは、反語の副詞を否定詞に置き換えてみよう!
(a)どちらも「笑わない」という事実については、かわりはない。
安笑(安んぞ笑はんや)=不笑(笑はず)
(b)「笑ってはいけない」という事実については、かわりはない。
豈可笑(豈に笑ふべけんや)=不可笑(笑ふべからず)
・センターの反語問題で、「どうして~しようか、いや~しない」という、公式どおりの解釈が正解になることは少ない。
「~するはずがない、~するわけがない」のように、強い否定として訳すものが正解となることが多い。反語は強い否定だと認識しておこう。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、220頁~227頁)
攻略法11 句形別攻略法 抑揚
・抑揚形で大事なのは、「況」と文末の「をや」。
【例題】(句形の判別)
問「天尚如此、況於君乎」には、どのような句形が用いられているか、最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①受身
②疑問
③反語
④抑揚
⑤限定
【解説】
・この問題を、「簡単なレベルだ」と思うくらいになろう。
ちなみに「抑揚」とは、英語のイントネーションの意味ではない。
一方を「抑え」、それとの対比で他方を「揚げる」という意味の強調表現なのである。
【解答】④
【書き下し】天すら尚ほ此の如し、況んや君に於てをや
【口語訳】「天でさえこのようなのだ、まして君主ならなおさらだ」
【例題】(「抑揚」表現を含む文の大意)
問「許市井人耳。惟其無所求於人、尚不可以勢屈。況其以道義自任者乎」の大意として、最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
(注)許=人名
①自由気ままに生きる民間人は、他人の拘束を極度にきらい、権威に対する反抗心がつよいものだ。まして道義を信条とする知識人たちが権力の統制をきらうのは当然のことだ。
②知識を求める意欲のない民間人は、たとえ宰相が命令してもそれに従わせることはできない。まして自分に道義があるとうぬぼれている人間は手のつけようがない。
③名もなく地位もない民間人であっても、名利をすてた人間は、たとえ宰相の力でも命令に従わせることはできない。まして自分に道義を大切にする人間を権勢でおさえこむことなど不可能だ。
④すでに名の知れわたった民間人は、いまさら他人の評判を気にすことなく、権勢に気がねすることもない。まして道義ある人として評価の定まった人間が他人の目など気にせず自由に生きるのももっともだ。
⑤礼儀作法をわきまえない民間人は、ひとたび他人から期待されなくなると自暴自棄となって、もはや宰相の力でもおさえることができない。まして道義を求めている人物が権威に失望したら何をやるかわからない。
⑥とるにたらない一介の民間人であっても、弁舌のすぐれた人間であれば無法な行動も許され、宰相の権威もそれをとめることはできない。まして道義を求めることを自分の使命としている者の行動は自由にすべきだ。
【解説】
・一見手強そうだが、落ち着いて読めばさほどでもない。
もちろん最大のポイントは、「A尚~、況B乎」という抑揚表現である。
あとは、本文と選択肢を丹念に比較しつつ、不適切な表現を含む選択肢を除いていく。
・①は「知識人たちが」、②は「知識を求める意欲のない」、④は「名の知れわたった」「評価の定まった」、⑤は「礼儀作法をわきまえない」「自暴自棄」、⑥は「弁舌のすぐれた人間であれば無法な行動も許され」が明らかに誤り。
「市井の人」とは「民間人」のことである。
【解答】③
【書き下し】許は市井の人のみ。惟だ其の人に求むる所無きものすら、尚ほ勢を以て屈すべからず。況んや其の道義を以て自ら任ずる者をや
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、256頁~261頁)
攻略法16 設問別攻略法 解釈の問題
・いわゆる傍線部解釈の問題は、センター試験では平均3問程度出題されている。
決して「なんとなく」で答えを決めてはいけない。
それでは「なんとなく」の得点にしかならない。
「センターのツボ」を「しっかりと」理解して、「しっかりと」した根拠を見つけた上で、正しい答えを選択し、「しっかりと」得点するようにしたい。
「センターのツボ」 「解釈」の設問、解法マニュアル
①選択肢を横に見渡して、出題のポイントを把握する。
「読む」のではなく、「見渡す」と、訳し方の違う部分があることに気づく。それが設問のポイントであるという。
②(傍線部中の)句形・語法をふまえて直訳してみる。
漢文独特の句法・語法ならば、その原則的な解釈をふまえて、選択肢を見ずに自分で訳してみる。いきなり選択肢を読むと、もっともらしい選択肢のワナにかかることがある。
③(傍線部中の)対句・対応表現をチェックする。
傍線部中の句形・語法のポイントが見当たらないときは、前後に対句はないか、少し離れた位置に対応表現はないかを検討してみる。
④指示語が含まれていれば、指示内容に注意する。
傍線部中に指示語が含まれているときは、その指示内容を吟味することが必要。
漢文の指示語は「之(これ)」も「其(そノ)」も直前を指すのが普通なので、直前からさかのぼるように見ていく。
⑤読み方(送り仮名)に注意する。
どう読むかで、どう訳すかが決まる。送り仮名がポイントになることも少なくない。
⑥(注)を利用して解釈する。
(注)とは本来、文章を読む上での「解説」の意味だが、センター試験の漢文においては、設問を解く上での注意点だと心得ておくこと。(注)の存在に気づいたとたんに、答えが決まるという設問も、しばしば出題されているという。
⑦設問の選択肢を利用して解釈する。
句法・対句・(注)等を吟味しても分かりにくい言葉が含まれる場合に、他の設問の選択肢がヒントをくれることがある。
他の設問の選択肢がその分かりにくい言葉の解釈をさり気なく教えてくれていることがあるようだ。
⑧最後の設問とのつながりを確認する。
「漢文」の問題で、最後の設問は全文の趣旨にかかわるものとなる。
これを最初に見ておくことで話題がつかめるし、他の設問のヒントになることがある。
最後の設問とのつながりを意識して、解釈を決めること。
【例題】(文の意味)
問「吾使左右如数以銭畀之焉」(吾左右をして数の如く銭を以て之れに畀(あた)へしむ)の意味として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 私は行き交う漁師たちに適正な値段をつけさせ、お金を渡した。
② 私は傍らの漁師に魚の大小に応じて値段をつけさせ、お金を渡した。
③ 私は傍らの漁師に魚の数に見合っただけの値段をつけさせ、お金を渡した。
④ 私は傍らの従者に命じ、求められた金額どおりお金を渡させた。
⑤ 私は傍らの従者に命じ、魚の数と大小とを考えあわせてお金を渡させた。
【解説】
・センター試験の漢文で最頻出の句法の一つである「使役」が含まれていることがわかる。
「使役の訳し方」がポイント。
使役の構造を理解していれば、「左右」が使役の対象(「だれに」させるのか)、「如~之」が使役の内容(「なにを」させるのか)であるとわかる。「焉」は断定の助詞。
・ここで、「お金を渡させた」と最後まで使役の内容として解釈している④と⑤に絞れる。
もちろん「左右」が「側近」の意味だと知っていれば、「従者」という解釈で、なおさら④と⑤に絞りやすくなる。
・④と⑤を分けるのは、「如数」の解釈。
「如」を「ごとク」と読んでいるからには、「~どおり」と訳している④のほうが自然な解釈であると傍線部だけでも察しがつくが、この点は文章全体を見れば、ハッキリと判断できる問題である。
【解答】
④
<書き下し>
吾左右をして数の如く銭を以て之れに畀(あた)へしむ
【例題】(文の意味)
問「理明矣、而或不達于事。識其大矣、而或不知其細」(理明かなるも、或いは事に達せず、其の大を識れるも、或いは其の細を知らず)の傍線部はどういう意味か。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 理念としては分かっているが、最後まで仕事を成し遂げられない場合がある。
② 理念ははっきりしていても、その実践が時宜にかなっていない場合がある。
③ 理解の仕方が鮮明であっても、それが大事業の達成に至らない場合がある。
④ 物事の処理には明るいが、肝心なことには手の及ばない場合がある。
⑤ 道理には明らかでも、実際の事に通じていない場合がある。
【解説】
・傍線部には特別の句法・語法は含まれていない。
選択肢を横に見渡してみれば、句法・語法は設問のポイントではないことがはっきりする。
・こんな場合は、傍線部の前後に対句はないかと検討してみること。
対句があれば、その部分と比較してみると、答えが決まることが多い。
・この問題では、直後の一文がほぼ対句になっている。
選択肢を見れば、「理」・「明」・「不達」・「事」をどう訳すかがポイントであるから、その解釈を対句の部分と比較する。
「理」=「大」、「明」=「識」、「不達」=「不知」、「事」=「細」の関係に気づく。
対句は、同内容か対立内容のどちらかになるのが普通。
この場合は、「同内容」である。
あとは、この関係に矛盾する選択肢を除外していけばよい。
なお、漢文で出合う「理」は、たいてい「道理」の意味である。これはセンター試験の頻出事項の一つ。
【解答】
⑤
<書き下し>
理明かなるも、或いは事に達せず、其の大を識るも、或いは其の細を知らず
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、288頁~294頁)
攻略法17 設問別攻略法 語意を問う問題
・例年、最も正解率の低い問題に、漢字・熟語の意味や読みを問う問題がある。
これは一言で言えば、語彙力の問題である。ぜひ語彙力のアップを図ることにコツをつかんでほしいという。
語彙問題解法マニュアル
①本書の「漢文重要語」(➡別冊参照)を覚える
特に、「名詞」と「動詞」は意味が、「熟語・慣用表現」と「副詞」は読みがよく問われる
②問われている語の品詞を確認する
同じ品詞のものを選ぶと正解になることが多い
意味よりまずは、品詞をチェック!
③解釈に迷う語は、二字の熟語に置き換えてみよう
その字を含む熟語を思いつくかぎり並べてみて、後は文脈に最適のものを選ぶこと
④熟語で出題された問題なら、その熟語の構造を検討する
出題される熟語は、同内容(〇=◎)または対立内容(〇⇔×)であることが多い
⑤漢字には、読み方によって意味が異なるものがある。そこで、意味が問われている問題でも、読み方を考えよう
「読み方の違い」が、つまりは「意味の違い」である問題も頻出している
⑥問題文中に同内容・対立内容の語があればチェックする
⑦(注)、とりわけ同内容・対立内容の語に(注)があれば注意する
【例題】(語の意味)
問(ア)「竟」・(イ)「乃」・(ウ)「安」の読み方の組み合わせとして最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①(ア)ついに (イ)すなはち (ウ)いづくんぞ
②(ア)すでに (イ)なほ (ウ)いづくにか
③(ア)ついに (イ)なほ (ウ)いづくにか
④(ア)すでに (イ)すなはち (ウ)いづくんぞ
⑤(ア)ついに (イ)なほ (ウ)いづくんぞ
【解説と解答】
(ア)~(ウ)ともに副詞である。最近のセンター漢文の語意問題は、副詞の読みや意味をシンプルに問うものが増えているという。
これは、絶対に落とせない問題。
①が正解
【例題】(語の意味)
問「悪不衷也」の「悪」と同じ意味の「悪」を含む熟語を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)衷……中正。偏らず正しいこと。
①好悪 ②険悪 ③害悪 ④悪習 ⑤悪徳
【解説と解答】
傍線部の「悪」が「にくむ」という意味であることは、ふり仮名から分かる。
熟語での「悪」という字は「わるい」の意味なら「アク」と読み(「善悪」「悪人」等)、「にくむ」の意味なら「オ」と読む(「憎悪」「嫌悪」等)。
それぞれ①コウオ、②ケンアク、③ガイアク、④アクシュウ、⑤アクトクと読む。
①の読み方は少々迷うかもしれないが、「好悪」の熟語の構造を考えてみる。
明らかに対立内容(〇⇔×)の「このむ」と「にくむ」だと分かる。「悪」は頻出語。
①が正解
<書き下し>「衷(ちゅう)ならざるを悪(にく)めばなり」
【例題】(語の意味)
問「変易」の「易」と同じ意味で用いられているのはどれか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①簡易 ②交易 ③容易 ④難易 ⑤平易
【解説と解答】
まずは熟語としての読み方に注目しよう。「変易」は「ヘンエキ」
①カンイ、②コウエキ、③ヨウイ、④ナンイ、⑤ヘイイ と読む。実はこれで正解が決まる。
「易」は、「かえる、かわる」の意味なら「エキ」と読み、「やさしい」の意味なら「イ」と読む。
ついでに熟語としての構造も検討してみよう。
「変易」は同内容(〇≒◎)で、どちらも「かわる、かえる」の意味。
①・③・⑤は同内容で「やさしい」の意味。②は同内容で「かわる、かえる」の意味。
④は対立内容(〇⇔×)で「むずかしい」と「やさしい」の意味。
熟語の構造を考慮して意味を考えてみれば、答えは明確になる。「易」も頻出語。
だから、②が正解。
【例題】(語の意味)
問「道先王法言」の「道」と同じ意味で用いられている語として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)先王法言……昔の聖王が遺(のこ)した、のっとるべき言葉。
①人道 ②報道 ③道理 ④道程 ⑤道具
【解説と解答】
実際のセンター試験でも正解率が低かった問題であるという。
でも、「道」が「いふ」という動詞になることを知っていれば簡単。
また、熟語の構造に注目すれば、②「報道」は、同内容(報[ほう]ず=道[い]う)であると分かる。ほかの選択肢はそれぞれニュアンスは異なるものの、すべて「みち」の意味である。
⇒同じ漢字でも、品詞が違うこともあるから、注意!
だから、②が正解。
<書き下し>「先王の法言を道(い)ひて」
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、296頁~301頁)
副詞は読めれば意味が分かる。読み方を覚えよう。
☆印は頻出するものを列挙しておく。
甚 はなはダ
益 ますます
愈 いよいよ
唯 たダ
惟 たダ
但 たダ
只 たダ
独 ひとり
尽 ことごとク
尚 なホ
猶 なホ
先 まヅ
蓋 けだシ
寧 むしロ
果 はタシテ
自 みづかラ/おのづかラ
私 ひそかニ
具 つぶさニ
凡 およソ
数 しばしば
嘗 かつテ
曾 かつテ
固 もとヨリ
既 すでニ
已 すでニ
若 もシ
如 もシ
苟 いやしクモ
且 しばらク・かツ
方 まさニ
常 つねニ
与 ともニ
請 こフ
願 ねがハクハ
即 すなはチ/すぐに
便 すなはチ/さっそく
乃 すなはチ/①そこで ②やっと ③なんと
輒 すなはチ/①そのたびに ②すぐに
則 すなはチ/その場合は
又 また/そのうえ
復 また/もう一度
亦 また/やはり
終 つひニ/けっきょく
卒 つひニ/けっきょく
竟 つひニ/けっきょく
遂 つひニ/①けっきょく ②そのまま
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、別冊)
(2023年12月17日投稿)
【はじめに】
漢文の勉強法について考える際に、現在、私の手元にある参考書として、次のものを挙げておいた。
〇菊地隆雄ほか『漢文必携[四訂版]』桐原書店、1999年[2019年版]
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
〇幸重敬郎『漢文が読めるようになる』ベレ出版、2008年
〇小川環樹・西田太一郎『漢文入門』岩波全書、1957年[1994年版]
これらのうち、受験に特化し、効率的な勉強法を説いた参考書としては、次の2冊である。
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
今回のブログでは、次の参考書について、紹介しておきたい。
(共通テストにかわったが、センター試験の過去問は良問が多いともいわれるので、練習のつもりで取り組んでもらえたらと思う)
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
とりわけ、漢文の句形に関する問題、再読文字、使役、反語、抑揚についてみておこう。
あわせて、解釈の問題、語意を問う問題についても練習してみよう。
なるべく数多くの漢文の文章に触れて、漢文の句形や内容を知ってほしい。
(返り点は入力の都合上、省略した。白文および書き下し文から、返り点は推測してほしい。)
【三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)はこちらから】
三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』
【目次】漢文編
攻略法0 センター漢文攻略のためのルール
<句形別攻略法>
攻略法1 再読文字
攻略法2 使役
攻略法3 受身
攻略法4 否定
攻略法5 疑問
攻略法6 反語
攻略法7 比較
攻略法8 限定
攻略法9 累加
攻略法10 仮定
攻略法11 抑揚
攻略法12 禁止
攻略法13 詠嘆
攻略法14 その他の句形
<設問別攻略法>
攻略法15 読み方・書き下しの問題
攻略法16 解釈の問題
攻略法17 語意を問う問題
攻略法18 漢詩の規則を問う問題
漢文総合問題
漢文総合問題 解答・解説
<コラム>目で見る漢文① (儒家)
<コラム>目で見る漢文② (道家)
<コラム>目で見る漢文③ (法家)
<コラム>目で見る漢文④ (三国志)
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、8頁~9頁)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・漢文編~三宅崇広先生(駿台予備学校)の言葉
・攻略法1 句形別攻略法 再読文字
・攻略法2 句形別攻略法 使役
・攻略法6 句形別攻略法 反語
・攻略法11 句形別攻略法 抑揚
・攻略法16 設問別攻略法 解釈の問題
・攻略法17 設問別攻略法 語意を問う問題
【補足】頻出漢文重要語~副詞
三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
漢文編~三宅崇広先生(駿台予備学校)の言葉
・センター試験の漢文は満点がとれるテストであると、三宅崇広先生はいう。
本書で十分な対策を講じて、第一志望合格という栄冠を勝ちとってほしいという。
〇センター試験で問われる「漢文の力」とは?
センター試験の漢文の配点は50点。ほかは現代文50点×2題、古文50点。
試験時間は国語全体で80分だから、漢文の配分は20分程度。
文章の長さは180~220字程度で、大学入試の漢文としては、比較的長い文章が出題されている。
・文章の内容は、逸話・説話か随筆がほとんど。
(特別な思想や時代背景等の知識を必要とするものは出題されない)
やや長い文章が出題されてはいるが、それだけ筋や主張のはっきりした素直な文章・読みやすい文章が選ばれている。
※高校課程修了時の受験生の、標準的な国語力・読解力が備わっているかどうかが、問われてくる。
・特別何も勉強しなくても文章が読めて満点がとれるかと言えば、そうはいかない。
「漢文」を読むためのハードルをクリアしなければならない。
現代文などとは比較にならないほど単純明快な筋の話でも、それを読むための道具である知識を持っていなければ、太刀打ちできない。
日本人としての教養の一つである、「漢文」を読む方法の基礎を身につけているかどうかも、もちろん問われている。
・対処する方法
①漢文を読むための基本的な道具である、句形・語法を覚えること。
漢文はある程度覚えることを必要とする科目であるが、裏を返せば、知識が得点に直結し、努力したことが報われる科目でもあるという。
しかも、使役や再読文字はほとんど毎年のように出題されている。
的を絞ることができ、覚えることも決して多くはない。
その意味では、漢文ほど短期間での得点アップが可能な教科はほかにないとも言える。
センター試験で毎年出題されている読み方や解釈の問題でも、そのほとんどでポイントになっているのが、句形・語法。
⇒漢文編の「攻略法1~14」を活用して、漢文を読むための道具を身につけよ。
(これは、同時に国公立二次試験や私大の漢文対策としても不可欠)
②「国語力=語彙力=漢字力」を養うことが必要。
漢文も「国語」のなかの一分野であるから、日本語としての語彙力で決まる設問も、若干出題されている。
実は例年、最も正答率が低いのが、このタイプの問題であるようだ。
語彙力の不足というのが現代の受験生の最大の弱点になっている。
(正答率が低い設問であるから、万一失点しても大きな影響はないかもしれないが、漢文は満点をとれる科目である。ここで満点をとって差をつけたい人には、この対策も怠ることは許されない。)
⇒漢文編の「攻略法17 語意を問う問題」と「別冊 漢文重要語」はそのためのもの
【まとめ】漢文で満点を取るために必要なこと
①漢文を読むための基礎を身につける
基本的な句法・語法を覚え、活用する。
②標準的な国語力を養う
語彙力・漢字力をつける。
③センター試験特有の攻略法を身につける
本書の攻略法をしっかりマスターする。
〇センター試験の漢文の設問とは?
・センター試験の漢文の設問は、6~7問程度。
枝問が設けられることがあるが、それでも1問当たりの配点は他教科に比べて高いから、注意が必要。
・設問の内容の平均的な構成:
傍線部の「読み方」「書き下し」を問うものが1問。(枝問の設定で2問になることもある)
傍線部の「解釈」「意味」を問うものが3問。
語句の意味を問うものが1問。(枝問の設定で2問になるのが普通)
文章全体の「趣旨」「論旨」を問うもの(内容一致問題)が1問。
・「読み方」「書き下し」の設問に対処するためには、句形・語法の知識が必要。
その知識があれば、傍線部を見ただけで正解が得られる設問が少なくない。
「句形別攻略法1~14」で前提となる知識を、「攻略法15 読み方・書き下しの問題」で実戦的な解法をマスターしてほしい。
※漢文を読むかぎり、句形・語法の知識は必須だから、「句形別攻略法」は「解釈」「意味」を問う問題に対しても、有効な対策となる。
ただし、もちろん、いわゆる「文脈」を読み取る必要のある問題も出題されるから、「攻略法16 解釈の問題」でセンター試験の出題のツボを把握しておくこと。
・語句の意味を問う問題には、「攻略法17 語意を問う問題」と別冊の「漢文重要語」が役立つ。
・文章の「趣旨」「論旨」を問う問題(例年、一番最後の設問)は、「句形別攻略法」で漢文を読むための正しい道具を身につけた人には、恐い問題ではない。
※センター試験の漢文は、現代文などとは比較にならないほど、単純明快な筋の話が出題されるのが普通だから、漢文を現代文にまで引きずり降ろせる力を持っていれば、文章の「趣旨」「論旨」など簡単につかめるはずだという。
「攻略法16 解釈の問題」に示すように、
①まず最後の設問に目を通して話題をつかむ
②それとの整合性を確かめながら、全体を読み進める
③最後に設問相互のつながりをチェックして(矛盾する答えを除外して)解答を決定する
このような方法はぜひ実践してほしいという。
最後の設問でも、必ず大きな手がかりとなるはずである。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、16頁~20頁)
攻略法1 句形別攻略法 再読文字
攻略法1 句形別攻略法 再読文字
・再読文字といえば、漢文の基本中の基本。
センター試験の問題にも毎年のように登場する。
この項目は、再読どころか再三読んでほしい。
特に読み方を混同しないように注意することが大切。
<センターのツボ>
①【構文】未
【読み方】いまダ~ず
【訳し方】まだ~しない。
②【構文】将
【読み方】まさニ~ントす
【訳し方】~しようとする/~することになる。
③【構文】且
【読み方】まさニ~ントす
【訳し方】~しようとする/~することになる。
④【構文】当
【読み方】まさニ~ベシ
【訳し方】④~⑦はすべて、「~しなければならない」または「~するに違いない」と訳す
⑤【構文】応
【読み方】まさニ~ベシ
【訳し方】④~⑦はすべて、「~しなければならない」または「~するに違いない」と訳す
⑥【構文】宜
【読み方】よろシク~ベシ
【訳し方】「~するのがよろしい」のように訳すこともある。
⑦【構文】須
【読み方】すべかラク~ベシ
【訳し方】「~することが必要だ」のように訳すこともある。
⑧【構文】猶
【読み方】なホ~ごとシ
【訳し方】まるで~のようだ
⑨【構文】盍(何不~)
【読み方】なんゾ~ざル
【訳し方】どうして~しないのか/~したらよかろう
<注意>
・②と④を混同する人が多い。
「将来」「当然」という熟語で覚えておこう。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、180頁~181頁)
再読文字の読み方「且」
問1 「不得、且笞汝」はどう読むか。最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① えず、なんぢをむちうつべし
② えず、かつなんぢをむちうたんとす
③ えざるも、まさになんぢをむちうつべし
④ えざれば、まさになんぢをむちうたんとす
⑤ えざれば、しばらくなんぢをむちうつべし
⑥ えざること、なほなんぢをむちうつがごとし
【解説】
・「且」が「将」と同様に「まさに~んとす」と読む再読文字であることを覚えていれば、答えは簡単である。
①は「べし」が不適。
②は「かつ」が不適。
※副詞として「かつ」と読む場合は返り点がつかないし、「かつ~んとす」という読み方そのものが誤りである。
③のように「まさに~べし」と読むのは、「当」と「応」。
⑤のように、「且」を副詞として「しばらく」と読むことは稀にあるが、「しばらく~べし」という読み方はあり得ない。
⑥の「なほ~ごとし」という読み方をするのは、「猶」である。
【解答】④
【口語訳】「手に入らなければ、(罰として)おまえを鞭(むち)打つことにしよう。」
再読文字の読み方「当」
問2 「士窮達当有時命」の読み方として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)「時命」…時のめぐりあわせ、さだめ
① 士の窮達は当に時命有らんや
② 士の窮達には当に時命有るべし
③ 士の窮達には当に時命るべけんや
④ 士は窮するや達して当に時命有らんや
⑤ 士は窮するも達しては当に時命に有るべし
【解説】
・「当」は「まさに~べし」と読む再読文字だから、②と⑤に絞れるはず。
①や③のように、文末を「~んや」と結ぶと反語の読み方になってしまう。
④は「まさに~んとす」と読む再読文字「将」・「且」と混同させようというヒッカケの選択肢である。
②と⑤で少々迷うかもしれない。
「窮達」が現代語と同じく「困窮と栄達」の意味であること、注にある「時命」の意味などから、②が正解。
【解答】②
【口語訳】「役人が困窮するか栄達するかには、運の善し悪しがあるに違いない。」
再読文字の読み方「須」
問3 「先須熟読、使其言皆若出於吾之口」の書き下しとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① まづまさに熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
② まづよろしく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
③ まづすべからく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
④ まづまさに熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
⑤ まづよろしく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
⑥ まづすべからく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
【解説】
・「須」は「すべからく~べし」と読む再読文字だから、③と⑥に絞る。
ここからが少々難しい。
③と⑥を比較すると、「言をして皆」と「言の皆をして」の違いに気づく。
これは使役の読み方にかかわる部分である。
※使役の「使(しむ)」の後につづく使役の対象は、名詞でなければならない。
名詞だからこそ、格助詞の「をして」がつけられるのである。
ところが漢文の「皆」はすべて副詞であり、名詞にはならない。
よって、⑥のように「皆をして」と送り仮名をつけて読むことはできないのである。
・しかしここまで受験生に要求するのは、かなりの難題といえる。
なお、「ごとし」に「ごとから」という未然形はないから、「ごとからしむ」という読み方も好ましくないという。「ごとくならしむ」の方が正しい読みであるようだ。
※「センター試験でも、時として悪問が出題されることがある」という覚悟はしておこうと、編者はいう。
【解答】③
【口語訳】「まず最初に、書物の言葉がすべて自分の口から出たもののようになるまで、熟読する必要がある。」
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、184頁~187頁)
攻略法2 句形別攻略法 使役
攻略法2 句形別攻略法 使役
・「王が臣下に~させる」「将軍が兵卒に~させる」など、使役は漢文で最もよく使われる表現の一つである。
センター試験でも、かなりの頻度で出題されている。
使役を制するものがセンターの漢文を制する、と言っても過言ではないようだ。
・「『使・令』を見たら『をして』と『しむ』」がポイント
<センターのツボ>
・構文:使(令)AB
読み方:AをしてBしむ
訳し方:AにBさせる
※「使(つかフ)」「令(れいス)」と動詞に読む場合もある。
≪漢文の要素≫
・A(使役の対象を表す名詞)…「をして」を送る。
・B(使役の内容を表す名詞)…「しむ」に接続させるために未然形になっている。
≪例文≫
①使人笑。 人をして笑はしむ 「人を笑わせる」
②令弟読三国志。 弟をして三国志を読ましむ 「弟に三国志を読ませる」
【注意点】
①「使・令」(しム)は、設問の書き下し文では常にひらがなになっている。
②使役の対象を表す名詞(A)は、省略されていることもある。
③使役の内容を表す動詞(B)のあとには、2番目の例文のように目的語がつくことが多い。
④「使・令」の他に、「教・遣・俾」も使役の「しむ」になることがあるが、センター試験ではふり仮名がつき、設問にはならないことが多い。
⑤「使・令」等を使わずに、文脈から使役に読むこともあるので、書き下しの選択肢に、「―しむ」が補われているものが含まれていたら、念のために文脈を確認する。
【例題】(使役を表す文字)
問「令」と同じ意味、用法を持つ語はどれか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①使
②雖
③被
④非
⑤猶
【解説】
・覚えていれば簡単だし、私大でも頻出するタイプの問題。
当然、正解は①。他の選択肢も重要な語ばかりなので、確認しておこう。
・②雖(いへども)は、仮定あるいは確定の、逆接接続詞。
③被(る・らル)は受身の助動詞。
④非(あらズ)は「~ではない」と否定的判断を示す語。
⑤猶には、副詞の「なホ=尚」と、再読文字の「なホ~ごとシ」の二つの用法がある。
【解答】①
【例題】(「使役」表現の読み方)
問「孰能使之然」の読み方として、最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①孰ぞ能(よ)く之を然らしめん。
②孰の能(のう)か之(ゆ)きて然らしめん。
③孰か能(よ)く之をして然らしめん。
④孰んぞ能(よ)く之を然りとせしめん。
⑤孰れの能(のう)か之をして然らしめん。
【解説】
・使役の読み方である「をして」と「しむ」がそろっているかどうかで、③と⑤に絞る。
ところが「能」は、「不」・「未」のついた否定文の場合には、「あたハず」と読み、そうでなければ「よク」と読むのが原則であるから、③が正解。
・センター試験の読み方の設問は、傍線部の中の句形・語法の知識だけで正解が得られるものが少なくない。ただし、最後に前後の文脈を確認することもお忘れなく。
【解答】③
【口語訳】誰がこれをそのようにすることを可能にしたのか。
【例題】(使役表現を含む文の読み)
問「聖人不レ能レ使鳥獣為二義理之行一」は、どう読むか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①聖人も鳥獣を使ひて義理の行ひをなすことあたはず。
②聖人も鳥獣をして義理の行ひをなさしむることあたはず。
③聖人も鳥獣のために義理の行ひをなさしむることあたはず。
④聖人も鳥獣をして義理の行ひをなすことあたはざらしむ。
⑤聖人も鳥獣をして義理の行ひをなさしむることあたはざらんや。
【解説】
・選択肢を一見しただけで、使役の読み方の「をして」と「しむ」から、②・④・⑤にしぼれる。
ところが、④の「あたはざらしむ」は、原文の返り点から見ても不可能な読み方。
・センター試験の「読み方」・「書き下し」を問う設問では、このように返り点がポイントとなるケースがあるので注意すること。
・⑤は「あたはざらんや」が不適。文末に「~んや」がつくと反語の読み方になってしまう。
・「使」を「つかフ」と読むこともあるが、下に動詞があれば「しむ」に接続させて「~させる」と訳してみることが大切。
【解答】②
【口語訳】聖人でも鳥や獣に道理にかなった行いをさせることなどできはしない。
【例題】
問 傍線部に送り仮名を記せ。
「吾瑟鼓之能使鬼神上下」
【解説】
・このような問題があった時、どうやって送り仮名を入れたらよいだろうか。
「使」は使役の「しム」なので、迷わずに「ム」と送り仮名をつける。
・「使」の直後の名詞は、使役の対象ではないかと考えて、「ヲシテ」を送って読んでみることが肝要。
・最後に、「上下」は使役の内容を表す動詞として、未然形にした上で送り仮名をつけるべきことが分かる。
ちなみに鬼神とは幽霊のこと。
【解答】
使一ム鬼神ヲシテ上下二セ
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、188頁~193頁)
攻略法6 句形別攻略法 反語
攻略法6 句形別攻略法 反語
・「夢をあきらめない」という否定表現より、「どうして夢をあきらめたりしようか(いや、そんなことはない)」という反語表現のほうが意味が強まる。
・筆者や登場人物の主張が端的に表現されるのが反語である。
センター試験で頻出する「豈」と「安」には、特に注意すること。
【例題】(「反語」の読み方)
問「豈為是哉」の読み方として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①あにぜとなさんや。
②あにぜをなさんかな。
③あにこれをなさんかな。
④あにこれがためなるかな。
⑤いづくんぞぜとなさんや。
【解説】
・反語として文末だけを見て、すんなりと①と⑤に絞れる。
反語表現では、「んや」があるものを選べれば知識は確実なものとなっている。
正解は①で、⑤は「豈」の読み方が間違っている。基本はしっかり押さえるべきだ。
・①の解釈は、「どうして正しいと判断しようか、いや正しくはない」。
※とにかく、センター試験では<文末の「んや」は反語>が得点につながる。
ただし「~か」「~んか」と読んで「ひょっとしたら~か」と訳す推量表現になることもあるので、念のため、文脈を確認しよう。
<ポイント>
・文末に「ん(や)」があれば反語⇔反語表現は必ず「~ん(や)」と読む!
【解答】①
【例題】(「反語」の解釈)
問「城中安得有此獣」の解釈として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①城中にこんな獣がいて安全といえるのだろうか。
②城中は安全なのでこんな獣が多いのだろうか。
③城中にこんな獣がいるはずがないではないか。
④城中にどうしてこんな獣がいるのだろうか。
⑤城中にこんな獣がいるのは当然ではないか。
【解説】
・「安」は反語の副詞。
①②の「安全」はよくあるヒッカケ。
④は疑問の解釈になっている。
・「安得~」という反語表現は、事実において「不得~」という否定表現と同じになる。
よって、「安得有~」は、「不得有~」(~有るを得ず)、つまり現代語の「ありえない」と同じ意味になる。ここから、この部分だけを見ても正解は③とわかる。
【解答】③
【書き下し文】城中安んぞこの獣有るを得んや
<ポイント>
・反語の解釈で迷ったときは、反語の副詞を否定詞に置き換えてみよう!
(a)どちらも「笑わない」という事実については、かわりはない。
安笑(安んぞ笑はんや)=不笑(笑はず)
(b)「笑ってはいけない」という事実については、かわりはない。
豈可笑(豈に笑ふべけんや)=不可笑(笑ふべからず)
・センターの反語問題で、「どうして~しようか、いや~しない」という、公式どおりの解釈が正解になることは少ない。
「~するはずがない、~するわけがない」のように、強い否定として訳すものが正解となることが多い。反語は強い否定だと認識しておこう。
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、220頁~227頁)
攻略法11 句形別攻略法 抑揚
攻略法11 句形別攻略法 抑揚
・抑揚形で大事なのは、「況」と文末の「をや」。
【例題】(句形の判別)
問「天尚如此、況於君乎」には、どのような句形が用いられているか、最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①受身
②疑問
③反語
④抑揚
⑤限定
【解説】
・この問題を、「簡単なレベルだ」と思うくらいになろう。
ちなみに「抑揚」とは、英語のイントネーションの意味ではない。
一方を「抑え」、それとの対比で他方を「揚げる」という意味の強調表現なのである。
【解答】④
【書き下し】天すら尚ほ此の如し、況んや君に於てをや
【口語訳】「天でさえこのようなのだ、まして君主ならなおさらだ」
【例題】(「抑揚」表現を含む文の大意)
問「許市井人耳。惟其無所求於人、尚不可以勢屈。況其以道義自任者乎」の大意として、最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
(注)許=人名
①自由気ままに生きる民間人は、他人の拘束を極度にきらい、権威に対する反抗心がつよいものだ。まして道義を信条とする知識人たちが権力の統制をきらうのは当然のことだ。
②知識を求める意欲のない民間人は、たとえ宰相が命令してもそれに従わせることはできない。まして自分に道義があるとうぬぼれている人間は手のつけようがない。
③名もなく地位もない民間人であっても、名利をすてた人間は、たとえ宰相の力でも命令に従わせることはできない。まして自分に道義を大切にする人間を権勢でおさえこむことなど不可能だ。
④すでに名の知れわたった民間人は、いまさら他人の評判を気にすことなく、権勢に気がねすることもない。まして道義ある人として評価の定まった人間が他人の目など気にせず自由に生きるのももっともだ。
⑤礼儀作法をわきまえない民間人は、ひとたび他人から期待されなくなると自暴自棄となって、もはや宰相の力でもおさえることができない。まして道義を求めている人物が権威に失望したら何をやるかわからない。
⑥とるにたらない一介の民間人であっても、弁舌のすぐれた人間であれば無法な行動も許され、宰相の権威もそれをとめることはできない。まして道義を求めることを自分の使命としている者の行動は自由にすべきだ。
【解説】
・一見手強そうだが、落ち着いて読めばさほどでもない。
もちろん最大のポイントは、「A尚~、況B乎」という抑揚表現である。
あとは、本文と選択肢を丹念に比較しつつ、不適切な表現を含む選択肢を除いていく。
・①は「知識人たちが」、②は「知識を求める意欲のない」、④は「名の知れわたった」「評価の定まった」、⑤は「礼儀作法をわきまえない」「自暴自棄」、⑥は「弁舌のすぐれた人間であれば無法な行動も許され」が明らかに誤り。
「市井の人」とは「民間人」のことである。
【解答】③
【書き下し】許は市井の人のみ。惟だ其の人に求むる所無きものすら、尚ほ勢を以て屈すべからず。況んや其の道義を以て自ら任ずる者をや
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、256頁~261頁)
攻略法16 設問別攻略法 解釈の問題
攻略法16 設問別攻略法 解釈の問題
・いわゆる傍線部解釈の問題は、センター試験では平均3問程度出題されている。
決して「なんとなく」で答えを決めてはいけない。
それでは「なんとなく」の得点にしかならない。
「センターのツボ」を「しっかりと」理解して、「しっかりと」した根拠を見つけた上で、正しい答えを選択し、「しっかりと」得点するようにしたい。
「センターのツボ」 「解釈」の設問、解法マニュアル
①選択肢を横に見渡して、出題のポイントを把握する。
「読む」のではなく、「見渡す」と、訳し方の違う部分があることに気づく。それが設問のポイントであるという。
②(傍線部中の)句形・語法をふまえて直訳してみる。
漢文独特の句法・語法ならば、その原則的な解釈をふまえて、選択肢を見ずに自分で訳してみる。いきなり選択肢を読むと、もっともらしい選択肢のワナにかかることがある。
③(傍線部中の)対句・対応表現をチェックする。
傍線部中の句形・語法のポイントが見当たらないときは、前後に対句はないか、少し離れた位置に対応表現はないかを検討してみる。
④指示語が含まれていれば、指示内容に注意する。
傍線部中に指示語が含まれているときは、その指示内容を吟味することが必要。
漢文の指示語は「之(これ)」も「其(そノ)」も直前を指すのが普通なので、直前からさかのぼるように見ていく。
⑤読み方(送り仮名)に注意する。
どう読むかで、どう訳すかが決まる。送り仮名がポイントになることも少なくない。
⑥(注)を利用して解釈する。
(注)とは本来、文章を読む上での「解説」の意味だが、センター試験の漢文においては、設問を解く上での注意点だと心得ておくこと。(注)の存在に気づいたとたんに、答えが決まるという設問も、しばしば出題されているという。
⑦設問の選択肢を利用して解釈する。
句法・対句・(注)等を吟味しても分かりにくい言葉が含まれる場合に、他の設問の選択肢がヒントをくれることがある。
他の設問の選択肢がその分かりにくい言葉の解釈をさり気なく教えてくれていることがあるようだ。
⑧最後の設問とのつながりを確認する。
「漢文」の問題で、最後の設問は全文の趣旨にかかわるものとなる。
これを最初に見ておくことで話題がつかめるし、他の設問のヒントになることがある。
最後の設問とのつながりを意識して、解釈を決めること。
【例題】(文の意味)
問「吾使左右如数以銭畀之焉」(吾左右をして数の如く銭を以て之れに畀(あた)へしむ)の意味として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 私は行き交う漁師たちに適正な値段をつけさせ、お金を渡した。
② 私は傍らの漁師に魚の大小に応じて値段をつけさせ、お金を渡した。
③ 私は傍らの漁師に魚の数に見合っただけの値段をつけさせ、お金を渡した。
④ 私は傍らの従者に命じ、求められた金額どおりお金を渡させた。
⑤ 私は傍らの従者に命じ、魚の数と大小とを考えあわせてお金を渡させた。
【解説】
・センター試験の漢文で最頻出の句法の一つである「使役」が含まれていることがわかる。
「使役の訳し方」がポイント。
使役の構造を理解していれば、「左右」が使役の対象(「だれに」させるのか)、「如~之」が使役の内容(「なにを」させるのか)であるとわかる。「焉」は断定の助詞。
・ここで、「お金を渡させた」と最後まで使役の内容として解釈している④と⑤に絞れる。
もちろん「左右」が「側近」の意味だと知っていれば、「従者」という解釈で、なおさら④と⑤に絞りやすくなる。
・④と⑤を分けるのは、「如数」の解釈。
「如」を「ごとク」と読んでいるからには、「~どおり」と訳している④のほうが自然な解釈であると傍線部だけでも察しがつくが、この点は文章全体を見れば、ハッキリと判断できる問題である。
【解答】
④
<書き下し>
吾左右をして数の如く銭を以て之れに畀(あた)へしむ
【例題】(文の意味)
問「理明矣、而或不達于事。識其大矣、而或不知其細」(理明かなるも、或いは事に達せず、其の大を識れるも、或いは其の細を知らず)の傍線部はどういう意味か。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 理念としては分かっているが、最後まで仕事を成し遂げられない場合がある。
② 理念ははっきりしていても、その実践が時宜にかなっていない場合がある。
③ 理解の仕方が鮮明であっても、それが大事業の達成に至らない場合がある。
④ 物事の処理には明るいが、肝心なことには手の及ばない場合がある。
⑤ 道理には明らかでも、実際の事に通じていない場合がある。
【解説】
・傍線部には特別の句法・語法は含まれていない。
選択肢を横に見渡してみれば、句法・語法は設問のポイントではないことがはっきりする。
・こんな場合は、傍線部の前後に対句はないかと検討してみること。
対句があれば、その部分と比較してみると、答えが決まることが多い。
・この問題では、直後の一文がほぼ対句になっている。
選択肢を見れば、「理」・「明」・「不達」・「事」をどう訳すかがポイントであるから、その解釈を対句の部分と比較する。
「理」=「大」、「明」=「識」、「不達」=「不知」、「事」=「細」の関係に気づく。
対句は、同内容か対立内容のどちらかになるのが普通。
この場合は、「同内容」である。
あとは、この関係に矛盾する選択肢を除外していけばよい。
なお、漢文で出合う「理」は、たいてい「道理」の意味である。これはセンター試験の頻出事項の一つ。
【解答】
⑤
<書き下し>
理明かなるも、或いは事に達せず、其の大を識るも、或いは其の細を知らず
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、288頁~294頁)
攻略法17 設問別攻略法 語意を問う問題
攻略法17 設問別攻略法 語意を問う問題
・例年、最も正解率の低い問題に、漢字・熟語の意味や読みを問う問題がある。
これは一言で言えば、語彙力の問題である。ぜひ語彙力のアップを図ることにコツをつかんでほしいという。
語彙問題解法マニュアル
①本書の「漢文重要語」(➡別冊参照)を覚える
特に、「名詞」と「動詞」は意味が、「熟語・慣用表現」と「副詞」は読みがよく問われる
②問われている語の品詞を確認する
同じ品詞のものを選ぶと正解になることが多い
意味よりまずは、品詞をチェック!
③解釈に迷う語は、二字の熟語に置き換えてみよう
その字を含む熟語を思いつくかぎり並べてみて、後は文脈に最適のものを選ぶこと
④熟語で出題された問題なら、その熟語の構造を検討する
出題される熟語は、同内容(〇=◎)または対立内容(〇⇔×)であることが多い
⑤漢字には、読み方によって意味が異なるものがある。そこで、意味が問われている問題でも、読み方を考えよう
「読み方の違い」が、つまりは「意味の違い」である問題も頻出している
⑥問題文中に同内容・対立内容の語があればチェックする
⑦(注)、とりわけ同内容・対立内容の語に(注)があれば注意する
【例題】(語の意味)
問(ア)「竟」・(イ)「乃」・(ウ)「安」の読み方の組み合わせとして最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①(ア)ついに (イ)すなはち (ウ)いづくんぞ
②(ア)すでに (イ)なほ (ウ)いづくにか
③(ア)ついに (イ)なほ (ウ)いづくにか
④(ア)すでに (イ)すなはち (ウ)いづくんぞ
⑤(ア)ついに (イ)なほ (ウ)いづくんぞ
【解説と解答】
(ア)~(ウ)ともに副詞である。最近のセンター漢文の語意問題は、副詞の読みや意味をシンプルに問うものが増えているという。
これは、絶対に落とせない問題。
①が正解
【例題】(語の意味)
問「悪不衷也」の「悪」と同じ意味の「悪」を含む熟語を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)衷……中正。偏らず正しいこと。
①好悪 ②険悪 ③害悪 ④悪習 ⑤悪徳
【解説と解答】
傍線部の「悪」が「にくむ」という意味であることは、ふり仮名から分かる。
熟語での「悪」という字は「わるい」の意味なら「アク」と読み(「善悪」「悪人」等)、「にくむ」の意味なら「オ」と読む(「憎悪」「嫌悪」等)。
それぞれ①コウオ、②ケンアク、③ガイアク、④アクシュウ、⑤アクトクと読む。
①の読み方は少々迷うかもしれないが、「好悪」の熟語の構造を考えてみる。
明らかに対立内容(〇⇔×)の「このむ」と「にくむ」だと分かる。「悪」は頻出語。
①が正解
<書き下し>「衷(ちゅう)ならざるを悪(にく)めばなり」
【例題】(語の意味)
問「変易」の「易」と同じ意味で用いられているのはどれか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
①簡易 ②交易 ③容易 ④難易 ⑤平易
【解説と解答】
まずは熟語としての読み方に注目しよう。「変易」は「ヘンエキ」
①カンイ、②コウエキ、③ヨウイ、④ナンイ、⑤ヘイイ と読む。実はこれで正解が決まる。
「易」は、「かえる、かわる」の意味なら「エキ」と読み、「やさしい」の意味なら「イ」と読む。
ついでに熟語としての構造も検討してみよう。
「変易」は同内容(〇≒◎)で、どちらも「かわる、かえる」の意味。
①・③・⑤は同内容で「やさしい」の意味。②は同内容で「かわる、かえる」の意味。
④は対立内容(〇⇔×)で「むずかしい」と「やさしい」の意味。
熟語の構造を考慮して意味を考えてみれば、答えは明確になる。「易」も頻出語。
だから、②が正解。
【例題】(語の意味)
問「道先王法言」の「道」と同じ意味で用いられている語として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(注)先王法言……昔の聖王が遺(のこ)した、のっとるべき言葉。
①人道 ②報道 ③道理 ④道程 ⑤道具
【解説と解答】
実際のセンター試験でも正解率が低かった問題であるという。
でも、「道」が「いふ」という動詞になることを知っていれば簡単。
また、熟語の構造に注目すれば、②「報道」は、同内容(報[ほう]ず=道[い]う)であると分かる。ほかの選択肢はそれぞれニュアンスは異なるものの、すべて「みち」の意味である。
⇒同じ漢字でも、品詞が違うこともあるから、注意!
だから、②が正解。
<書き下し>「先王の法言を道(い)ひて」
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、296頁~301頁)
【補足】頻出漢文重要語~副詞
副詞は読めれば意味が分かる。読み方を覚えよう。
☆印は頻出するものを列挙しておく。
甚 はなはダ
益 ますます
愈 いよいよ
唯 たダ
惟 たダ
但 たダ
只 たダ
独 ひとり
尽 ことごとク
尚 なホ
猶 なホ
先 まヅ
蓋 けだシ
寧 むしロ
果 はタシテ
自 みづかラ/おのづかラ
私 ひそかニ
具 つぶさニ
凡 およソ
数 しばしば
嘗 かつテ
曾 かつテ
固 もとヨリ
既 すでニ
已 すでニ
若 もシ
如 もシ
苟 いやしクモ
且 しばらク・かツ
方 まさニ
常 つねニ
与 ともニ
請 こフ
願 ねがハクハ
即 すなはチ/すぐに
便 すなはチ/さっそく
乃 すなはチ/①そこで ②やっと ③なんと
輒 すなはチ/①そのたびに ②すぐに
則 すなはチ/その場合は
又 また/そのうえ
復 また/もう一度
亦 また/やはり
終 つひニ/けっきょく
卒 つひニ/けっきょく
竟 つひニ/けっきょく
遂 つひニ/①けっきょく ②そのまま
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、別冊)
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