地上を旅する教会

私たちのすることは大海のたった一滴の水にすぎないかもしれません。
でもその一滴の水があつまって大海となるのです。

導き手【日本基準の 「ローカルハラル認証」を作ろう 】

2014-06-08 14:50:26 | 今日の御言葉



信仰の導き手であり、
またその完成者であるイエスを
仰ぎ見つつ、走ろうではないか。

彼は、自分の前におかれている
喜びのゆえに、恥をもいとわないで
十字架を忍び、神の御座の右に座するに
至ったのである。

「ヘブル人への手紙」 12章2節
新約聖書 口語訳




苦しみは非常に
美しいものであります。


たとえば、非常に無垢な人々が苦しむ
そういう人が死んでいくから

神が無いとか
神は冷たいとかいうことでなく


まったく罪のない人が
死んでいくことは


そういう人たちが世界の罪を背負って
償っている気がいたします。


マザーテレサ
(マザーテレサ 『26の愛の言葉』より)



★日本基準の
「ローカルハラル認証」を作ろう


◆東洋経済オンライン 2014年6月5日

(新世代リーダーのためのビジネスサイト)
http://toyokeizai.net/articles/-/39207


日本ではイスラム教というと、ともすればキリスト教よりも少数派なのではないかといったイメージがつきまとう。だが、もしそうしたイメージは、世界的に見れば、大きな間違いだ。イスラム教徒の数は、世界人口の約4分の1を占める。その数は16億人ともいわれ、2030年には20億人を突破するとの予測もある。  

昨年、日本を訪れた外国人観光客は、初めて年間1000万人を突破した。今後は2020年に向けて、2500万人に増やし観光立国化を目指す構えだ。当然、イスラム圏からの観光客を取り込むことは、重要なポイントになる。昨年は、イスラム教徒(ムスリム)が多い、マレーシアやインドネシアからの観光客がそれぞれ17.7万人(前年比約36%増)、13.7万人(同約35%増)となるなど、機運は盛り上がりつつある。  

ムスリムの観光客を増やすためのポイントは何か。あるいは、イスラム圏でビジネスをする際に注意することは?これらの一つのキーワードが「ハラル」(ハラール)だ。では「ハラル」とは何だろうか?このコラムでは、イスラム圏の人々とのビジネスをスムーズにするためのカギであるハラルについて、マレーシア・ハラル・コーポレーション代表のアクマル・アブ・ハッサン氏に話を聞いた。
海外のムスリムを、もっと日本へ



――イスラム市場の魅力とは?

イスラム教徒のことを「ムスリム」と言います。現在、ムスリムは世界人口の4分の1を占めると言われ、その数はどんどん増えています。2010年時点のムスリム人口は推定で約16億人ですが、2030年には約22億人、世界人口の約26%を占める、という統計もあります。



▲アクマル アブ ハッサン マレーシア ハラル コーポレーション株式会社(MHC) 代表取締役    
1970 年マレーシア生まれ。1990 年マレーシアマラヤ大学を卒業後、群馬大学工学部に国費留学生として来日。1995 年新卒で東京三菱銀行(現・東京三菱 UFJ銀行)に入行、

1998 年退社後帰国、マレーシア国際貿易産業省へ入省。2005 年マレーシア貿易開発公社 大阪事務所所長補佐として再来日。ジョムマレーシアジャパン社長を経て 、2010 年 9 月より現職。2012 年ローカルハラル考案、2013年ローカルハラルを商標登録。ハラルをキーワードに、イスラムと日本をつなぐ、イスラム教徒によるハラルコンサルタントのパイオニア。


人口が増えるということは、経済的に成長する可能性が高いということでもあります。

事実、中国経済やインド経済は、世界最大級の人口を背景にして、大きく経済成長を遂げてきました。

対して、日本はどうでしょうか。今の日本は「超高齢社会」に突入しつつあります。少子化も年々深刻化しており、このままだと人口減少が加速化するのは間違いありません。2050年には人口が約9500万人まで減少するとの推計もありますよね。

人口減少対策で手を打つ必要があるのはもちろんですが、日本の経済成長ということを考えると、もうひとつ大切なことがあります。

それは、人口が増加し、経済的にも成長余地の高い国や地域の力を、日本に呼び込むことです。

そのひとつがムスリムの経済です。日本よりも平均年齢が若く、高成長が期待できるムスリムの経済パワーを使って、日本経済も活性化できるはずです。


――ムスリムとビジネスをする上での、一つのポイントがハラルだというわけですね。ハラル認証とは何ですか?


「ハラル」とは、日本語で「合法的」という意味を持ちます。つまり、イスラムの戒律に適合しているかどうかということですね。

もちろん、そのベースにあるのはイスラム教の聖典である「コーラン」です。イスラム教徒の生活全般を規定するものですが、そのなかでは「豚肉」と「アルコール」の摂取が禁じられています。ハラルは、「アルコールを使用していない」、「豚や豚由来の原料を使用していない」ことを証明する、「認証のひとつ」といっても良いでしょう。


▲「多くのムスリムに来てもらうためにはどうすればいいのか」?日本の各地をまわり、ハラル認証の重要性を説く


では、このハラルがどう役立つのでしょうか。典型的なのは、海外から日本に観光に来るムスリムについてです。例えば、ムスリムの人たちが日本に観光にやって来て、レストランに行ったとします。当然、彼らはビールをのむこともできませんし、豚肉を使った料理を食べることもできません。もっと言えば、豚肉に由来する原材料を用いた料理ですら、口に入れるのは、戒律で禁じられています。

でも、実際にどういう原材料を用いた料理を出されるのかは、その店に入ったとしてもなかなかわかりませんよね。そうなると、彼らは日本のどこで食事をすれば良いのか、わからないのです。そこで、ムスリムの方でも安心して入れるレストランなどに対して、「ハラル・マーク」を掲げてもらうようにすれば、こうした問題は解決します。

ただし、このハラル・マークは、申し込んだら誰でも取得できるものではなく、一定の基準を満たす必要があります。その基準が「ハラル認証」というわけです。


ハラル認証というのは、ハラル(合法的)であると認められた製品などに、マークを付与する制度です。具体的には、イスラム教で禁じられている原材料などを含まないといった規格を設け、原材料、製造工程、製品品質などを審査したうえで、適合する製品などにハラル・マークを付与します。


日本の実情にあわせた、ハラル認証を普及させたい


このハラル認証には、世界的な統一基準はありません。例えばマレーシアやインドネシアなど、それぞれの国の認証機関によって、制度が異なっているのが実情です。日本でも、ハラル認証をとることは可能で、方法は2つあります。一つは、海外のハラル認証機関と相互認証された、日本の機関に申請を行う方法。もう一つは、マレーシアなどの海外認証機関に申請を行い、認証を取得するというものです。

世界的な統一基準が存在しないだけに、日本でも、どの程度のレベル感でハラル認証を考えるということになると、さまざまな考え方があるようです。実際、本来の意味でのハラル化には、かなり厳しい基準が設けられています。

たとえば原材料や製造工程だけでなく、物流もハラル化することが求められます。具体的に言うと、製品を流通させる際は、たとえば豚肉を使用した製品と混載してはいけないといったルールまであるくらいです。また、マレーシアのルールなら、レストランの厨房などには、必ず2名のハラル管理人を入れなければなりません。ハラル管理人はムスリムであるのが原則です。

ただ、現実的に考えると、今の日本で純粋なイスラム教徒を探すことはなかなか困難でしょう。私は日本の場合、こうした、厳格なハラル化は困難だと考えています。また、実際には、厳格なハラル化は必ずしも必要ではなく、日本の実情に合わせ、信頼性を担保しながら、ローカライズ(現地化)させたハラル認証があれば十分だと考えます。たとえば、先ほどの例で言えば、レストランの厨房に必ずムスリムが管理人として実際に毎日いる必要はなく、管理がしっかりされていれば、それで十分だということです。

――ハラル認証のビジネスメリットはあるのでしょうか?


ローカライズされたハラル認証といっても、イスラム教徒の人たちに与える安心感は、絶大なものです。

今、私はこの「ローカルハラル」を日本に導入させるために、さまざまな試みを行っています。例えば、実例としては、JR京都駅にある「ホテルグランヴィア京都」のM3階にある日本料理店や2階にあるカフェレストランなどがあげられます。ここはローカルハラルにのっとった「ハラル認証」を取得しているお店です。

こういうお店が増えてくると、ムスリムも安心してお店に入れます。また、日本国内には約10万人のムスリムが生活をしています。恐らく、その人たちはいまでも、日本国内で外食をする時には、イスラムの戒律に抵触するようなものを口にしないかどうか、戦々恐々だと思います。しかし、ハラル・マークが付与されたお店や製品であれば、彼らは安心して口にできます。


もし、日本全体にハラル認証が広まれば、マレーシアがハラル認証をうまく活用することで、多くのイスラム圏からの観光で賑わっているように、世界中のムスリムが観光目的で日本を訪れるようになるでしょう。



▲ハラル認証を取得した和牛をお土産に、マハティール元首相と。「ルックイースト政策」で日本に国費留学したアクマル氏の目標は、昔も今も日本とイスラムの架け橋になることだ

2020年には東京オリンピックを控えていますし、その後も日本が観光立国を目指すのであれば、イスラム圏を無視しては成り立ちえません。ハラル認証を上手に利用することが、日本のビジネス拡大にもつながっていくのです。


――ハラルは日本をどう変えるのでしょうか?

こんな話があります。私は、母国であるマレーシアの「ルックイースト政策」に沿って、日本に留学(群馬大学)、その後縁あって、日本人の伴侶を得ることができ、日本はかけがえのない第2の故郷となりました。

一方で、実はマレーシアから来日した留学生が、学校を卒業してからも日本に留まるケースは非常に少ないのです。なぜだと思いますか。

それは、日本がムスリムにとっては、まだ住みにくいからです。といっても、どちらかというと、人間関係が難しいとか、働いても稼げないとかいう話ではないのです。実は、どこで「ハラム」なものを口にしてしまうか、わからないからです。

「ハラム」というのは、ハラルの反対語ですね。要は身体に悪いもの、ムスリムとして手を出してはいけないもの、という意味です。私自身、昔マレーシアから政府要人などが来日した時、夜、食事に連れていくところで非常に困ったという経験があります。

でも、これからの日本は、ムスリムの存在を、無視できなくなるはずです。今までは、イスラム教を知ってはいても、単語として記憶しているだけで、その真意までは理解できなかったと思います。それを、ハラルという言葉を通じて、イスラム教の一端を理解するきっかけにしていただきたいのです。

ハラルは日本人とイスラム人との間のコミュニケーション・ツールになるのでは、と思っています。イスラム教という、これまでの日本人には最も遠かった世界の一つと新たな関係を構築し、日本経済にとっても大いにプラスの効果をもたらす可能性があるのです。

(東洋経済オンライン 2014年6月5日)


▲『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』
ジョセフ・スティグリッツ著(写真)