地上を旅する教会

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義と罪【バチカン動かしたNTTデータの粘り腰 想像絶する1年半の交渉、その舞台裏】

2014-06-22 19:25:54 | 今日の御言葉



あなたは、
自分の言葉によって義とされ、また、
自分の言葉によって罪ある者とされる。

マタイによる福音書/ 12章 37節
新約聖書 新共同訳




ごうまんで、ぶっきらぼうで、

利己的になるのは、
いともたやすいことです。

でも私たちは、
もっとすばらしいことのために、

つくられているのです。

マザーテレサ
(マザーテレサ『愛のことば』より)



◆バチカン動かしたNTTデータの粘り腰
想像絶する1年半の交渉、その舞台裏
(上)

★日本経済新聞2014年6月20日 7:00
ITpro




 キリスト教・カトリック教会の総本山と称されるバチカン市国。バチカン図書館には2世紀から20世紀にかけて執筆された約8万冊、4000万ページに及ぶ手書きの文献が眠る。これらの文献のうち3000冊をデジタル化し、長期保存するプロジェクトについて、NTTデータとバチカン市国が契約を結んだ。バチカン市国が民間企業と大型の有償契約を締結するのは、世界的にも珍しい。交渉は1年半に及び、一度はNTTデータも諦めたというほど困難を極めた。その「逆転劇」の軌跡を2回に分けて紹介する。



▲「サラ・スタンパ」での記者会見の様子
(写真提供:NTTデータ)。
右から、チェーザレ・パッシーニバチカン図書館長、
フェデリコ・ロンバルディバチカン市国公式プレスルーム担当、

ジャン=ルイ・ブルーゲス
バチカンローマカトリック教会記録・図書担当大司教、

NTTデータの岩本敏男代表取締役社長、
NTT DATA EMEAのパトリツィオ・マペリCEO(最高経営責任者)、
NTTデータの岩井利夫常務執行役員公共システム事業本部長



 2014年3月20日、バチカン市国の公式プレスルーム「サラ・スタンパ」で記者会見が開かれ、同国がある契約に調印したことが発表された。

 契約書の署名者は、ジャン=ルイ・ブルーゲス バチカンローマカトリック教会記録・図書担当大司教とNTTデータの岩本敏男代表取締役社長だ。会見には、バチカン図書館のチェーザレ・パッシーニ館長、NTTデータの岩井利夫常務執行役員公共システム事業本部長などが列席した。

 これにより、バチカン図書館が所蔵する手書き文献を、NTTデータがデジタル化し、アーカイブシステムで管理できるようにするプロジェクトが正式に前に進みだした。まずは初期契約で、3000冊の手書き文献を4年間でデジタル化する。費用は約23億円だ。

 バチカン図書館は、2世紀から20世紀に残された約8万2000冊に及ぶ1点ものの手書き文献を所蔵する。ところが、羊皮紙やパピルスなどに書かれた文献は劣化がどんどん進む。同図書館は、「Long Term Preservation(長期保存)」と呼ぶデジタル化プロジェクトを4、5年前から進めていた。「文献のデジタルアーカイブ化は、彼らにとっても一番の重点施策だった」と、NTTデータの中城章史公共システム事業本部第三公共システム事業部営業担当部長は説明する。


▲調印式の様子(写真提供:NTTデータ)


 ただし、バチカンが民間企業と費用の発生する契約を結ぶのは異例のこと。既存の長期保存プロジェクトは、財団などの寄付のもと、ボランティアで進めていた。そうした世界にNTTデータは、有償を前提とした「ビジネス」を持ち込もうとした。我々にとっては当たり前の話だが、相手がバチカンともなれば、一筋縄にはいかないのだ。

 「あなたたちの努力がバチカン市国を動かした」――。2014年の2月、ローマ教皇庁での決裁が通った際、パッシーニ館長が中城部長らを呼び出し、こう声をかけた。この言葉を受け取るまでに、バチカンとNTTデータは1年半に及ぶ交渉を続けてきた。




▲バチカン図書館の外観
 (C) Biblioteca Apostolica Vaticana



 本稿では、日本のビジネスシーンではほとんど考えられない、バチカンとNTTデータとの想像を絶する交渉の舞台裏に迫ろう。グローバルビジネスに臨むうえで、欠かせないエッセンスが含まれているからだ。そのためには、時計の針を2012年秋まで巻き戻す必要がある。

■交渉は「ハリー・ポッターの世界」

 「デジタルアーカイブの取り組みについて話を聞きたい」――。

 長い交渉の始まりは2012年秋、ある財団からNTTデータにもたらされた一つの打診だった。ボランティアベースで進めていた長期保存プロジェクトは、確実に進められてはいたものの、スピードには欠けていた。例えば音楽系の財団であれば、楽譜の文献のみを手掛けるといった具合に、縦割りの体制で作業が進められていたからだ。その間にも、文献の劣化は進む。バチカン図書館は緊喫の課題として、パートナーとなる事業者を探していた。

 「文献のデジタル化について、相当な知見と技術的な探究心を持っている」(中城部長)バチカン図書館は、世界中の本のデジタル化に関する取り組みを調査し、その中には日本も含まれていた。そこで、まずリストアップされたのが国立国会図書館だった。同図書館は、NTTデータが構築したデジタルアーカイブシステムを活用している。

 公共システム事業本部のトップである岩井常務が即座に、打診内容のヒアリングのためバチカンに飛んだ。その後、中城部長をはじめとした実働部隊の4人が同国に入り、プレゼンテーションに臨んだ。


▲バチカン図書館内の様子 
(C) Biblioteca Apostolica Vaticana



 国立国会図書館での実績やデジタルアーカイブシステムの説明に加え、「継続的に取り組むために、『ビジネスとしてやりましょう』と提案したことと、デジタルアーカイブの意義に対する当社の考えを伝えたことがポイントだった」。中城部長はこのように振り返る。

 以降のバチカンとNTTデータとの打ち合わせは、主にバチカン図書館内で開かれた。「まるでハリー・ポッターの世界」とNTTデータの中城部長が形容するように、交渉の舞台となったのはフレスコ画に囲まれた貴賓室だった。

 バチカン側はパッシーニ館長をはじめ、副館長、技術責任者、弁護士がほぼ毎回出席する。一方のNTTデータ側は主に、営業部隊として、中城部長と片山修司課長代理、森本雄主任の3人。技術担当として、同じ第三公共システム事業部 第二システム統括部の杉野博史部長が臨んだ
(続く)。


(日経コンピュータ 岡部一詩)


【ITpro 2014年6月11日付の記事を基に再構成】

(2014/6/20 7:00)



★世界的にも異例、
バチカン図書館がNTTデータと23億円の大型契約

◆日本経済新聞2014年3月20日



岡部 一詩=日経コンピュータ


 NTTデータは2014年3月20日、バチカン市国のバチカン図書館が所蔵する文献のデジタル化プロジェクトを受注したと発表した。受注額は約23億円。3000冊の文献を、NTTデータが提供するデジタルアーカイブシステムで管理できるようにする。バチカン市国が民間企業と大型の有償契約を締結するのは、世界的にも珍しいという。

 バチカン図書館は、2世紀から20世紀にかけて執筆された約8万冊、4000万ページに及ぶ手書きの文献を所蔵する。同館はこれら全てをデジタル化し、長期保存する計画を立てている。バチカン図書館とNTTデータは約23億円で初期契約を結び、まずは4年間で約3000冊をデジタルアーカイブ化。順調に進めば、残りの文献についても取り組む予定だ。

 文献のデジタル化から、デジタルアーカイブシステムの構築、メタデータの付与・管理、検索アルゴリズムの開発までを、トータルでNTTデータが手掛ける。バチカン図書館はデジタル化した文献をWebサイト上で公開し、学術、美術、教育分野における活用を促す。

 日本の国立国会図書館向けに、デジタルアーカイブシステムを提供した実績が評価されたという。NTTデータは、国立国会図書館向けのプロジェクトを手掛けた第三公共システム事業部を主体に、NTTデータイタリアなどと連携して、プロジェクトに取り組む。

(2014/03/20)