遊月(ゆづき)の日々これ修行なり~

パワースポット研究家(おたる案内人)でセラピスト遊月のブログ
【パワースポットニッポン(VOICE)北海道担当】

アトランティス物語11〜世界の果ての向こう

2025-02-26 23:29:31 | 遊月作ファンタジー物語
世界の果ての向こう


私がそう思った瞬間に心にある感覚が入ってきた。
今度は声ではなく、感覚の塊だった。
感覚の塊は私の心で一気に解凍され、私は彼が、自分があの時の師であること、ピラミッドの頭上で光る船に乗っていた私とスパークしたこと、その前の星にいたこともみんな覚えていることを知った。
 
彼は水の国で一度死んでいた、そして、ピラミッドを作っていた時空に生まれ変わり、そのまま今の生を歩いているらしかった。

どうやら、ピラミッドを作っていた時空と、今私が現実だと感じる時空は別のものらしい。
そう感じた瞬間、心に響く声がした。
「私には時間が流れる感覚がないのです。時間はいつも瞬時瞬時に変化しています。あのスパークした次に今がある、それも私にとっては、現実のひとつなのです」

現実?
その実体がわからなくなってきた。

「カルディア様、もし差し支えなければ、失われた叡智の大陸がどこに沈んでしまったのかお教え願えませんか? 」

イリスの言葉で私たちは、もうひとつの現実に戻った。
「様はいりませんよ、イリス。カルディアと呼んで下さい。
それでは失われた叡智の大陸の場所がどこであるかお話したいと思います』

カルディアはそう言うと、床に腰をおろし、あぐらをかいた。ともの女性はその後ろにうつむき加減で静かに座った。
私も寝床から起き上がり、イリスとともに床に座った。

カルディアは、夢を見ているかのように、遠い場所を見詰めながら、語りだした。

かつて今私たちが生きている世界が始まるはるか昔、偉大なる叡智を持った大きな文明が栄えていたという。
その文明の高さは、想像を絶する大変高度なものだった。
そして、その全てが一晩で世界から消えうせた。

その偉大な国が栄えていた頃にも、世界には多くの人類が生きていたが、偉大な国の人々は、自国の文化が外へ流出することをかたくなに拒み、そのため他の地にはあれほど高度な文明をもつ国はひとつも存在せず、その国が沈んだあとは、文明を作っていたあらゆる痕跡はなにひとつ残ることはなかった。

しかし、偉大な国の生き残った人々は存在した。

陸地のほとんどは水に沈んだか、その一部、高い山などは沈まずに済んだ。
当時の大半の人は失っていたが、一部の人は、未来を予知する力を持っていた。また、物質の声を聞くことが出来た者もいたという。
そしてそんな人々が先導し、文明が海に沈む前に山に登り船で近隣の島々へ散った人が大勢いたのだ。

そのほとんどは、かつて自分たちが築きあげた文明に追いつくことも出来ないまま、文明とは程遠い世界でその生を終えていった。
かつての自分たちの過ちを悔やんでなのか、決してその国のことを語ろうとしなかった人が多かったという。
こうして、その国の創世期から伝わる叡智のほとんどは失われた。

だが、ごく一部の人々、その国で師と呼ばれていた人々などが、その子孫たちに口承で、時には何かに書き残して、その叡智を伝えたという。

そこまで話すとカルディアは大きく息をついた。
「私はそんな噂を聞きつけては、生き残りの子孫たちから話を集める旅をしています」
夢から覚めたかのように、カルディアの顔には表情が戻り、私たちに笑いかけた。

「沈んだ国の一部が残っていたのが本当なら、今でもその山はどこかに存在するのですか? 」
とイリスが聞いた。
 
そうだ、たしかにあの時山は残っていたはずだ。
私はもう一度あの時のことを思い出した。
泣きながら下を見下ろすと、幾つかの建物から火の手が上がっていた。
大きな地震があったらしいと誰かが話していた。山に登っていた私たちはその揺れを感じずにいたらしい。
そして、海のはるか向こうから、大きな津波が押し寄せていた。
そして、その波が世界を飲み込む前に私はあの船に引き寄せられて…
 
「その山がどこにあるのか、果たして今も存在するのか。
その前にイリス、あなたに聞きたいことがあります。
あなたは世界の広さを知っていますか? 」

「世界の広さですか?」
少し考えてイリスは答える。
「このエジプトのはるか南、美しい肥沃な大地が広がり、そこにはたくさんの珍しい動物たちがいると聞いたことがあります。
そして、海の向こうには、いつか行ってみたいギリシャがあり、その東に美しい神の国があるとも」
「その話は、私も聞いたことがあります」
 
「ギリシャとエジプトと美しい海。私が知っている世界は広い。
実際に歩いて旅をしてみると、その広さは痛いほどよくわかる。
けれど、私が知らない世界も、もっともっと存在するかもしれない。
今イリスが話した世界よりはるか向こうにも、もっと多くの陸地があり、いろいろな生き物たちが生きている、それは誰にもわかりません。
もしかしたら、東の神の国と、南の珍しい動物の国で世界は終わっているかもしれませんしね。

もしかしたら、あの叡智溢れた美しいかの国さえ、世界の大きさから見たら、小さな範囲なのかもしれないのです。
私は自分の知っている世界で生きています。それはある範囲の中で生きていることなのです。
誰もが自分の生きている範囲でしか生きていない。
当たり前すぎてそのことすら気付かない人も多いことでしょうね。
知る必要もないのでしょうが、私は知ってみたいのです。
私の知らない世界がどこまで広がっているのか、私はそれまで知らなかったこと、知ることが好きなのです。
人はそうした好奇心により、どんどん広がっていくかもしれないですね」

そう言って、再びカルディアは夢見るように遠い場所を見詰めた。


2002.5.16発行のメルマガ『翼をたたんで今日はお昼寝』より


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