『両手にトカレフ』と言う本を読みました。
タイトルにトカレフとでていますが、どんぱち系の話ではなく、ネグレクトされている14歳の主人公が書いたラップのタイトルのことです。
育児と言う概念がすっぽ抜けているような、男をとかえひっかえするシングルマザーの子供が主人公。
日本ではなくて、舞台はイギリス。
この本で知ったのだけれども、イギリスには特権階級やらミドル階級、貧困の階級などがあって。
イントネーションや住む地区で、それがすぐにばれてしまう。
そういえば、アップタウンガール(ビリー・ジョエルの歌)に、君はアップタウン(上流階級)の人間で僕はダウンタウンボーイ(下流階級の人間)さ、という歌詞があったけど。
そんな階級の文化が現在もあるのだなぁと改めて気づきました。
ハリー・ポッターのマグルを下に見るマルフォイみたいなイメージ。
日本では地方に方言はあるけれど、そこまではっきり分かれていない。
とは言え、私はオペレーターの仕事をしていて、言葉遣いで階級がはっきりわかるのだと実感している。
今のコールセンターは、ひとつの企業の電話を受けているのではなくて、複数の企業の電話を受けるいわゆるマルチのほうが多いそうで。
私もその日のシフトによって、 50社近くの企業を同時に受ける窓口に行っている。
企業によっては1ヵ月に1件、または、1日せいぜい10件位というのが、大体のところだ。なので、 1つのコールセンターが複数の企業を同時に受けるいわゆるマルチが重宝される。
というわけで、複数の企業の話を受けていると、それぞれの企業によって客層がはっきり違うとわかる。
扱う商品が同じなのだけれど、割高の企業と、とにかく安い!をうりにしている企業の両方を受けているのだけれど。
引くほど客層が違っている。
それはまさに言葉遣い。
話し方のトーンや使っている語彙で、この人は余裕があり教養もあると感じる。
その逆で、この人はカツカツで、お金がない上に勉強もしてこなかったんだろうなと思う人ばかりの企業もある。
うん、ごめんなさい。
でも事実です。
そしてそれぞれの特徴がある。
面白いことに、理不尽なクレームがしょっちゅう入るのは、いわゆる余裕のないタイプの人たちで。
たとえ企業に落ち度があったとしても、
「あー、そういうことでしたか」
などと穏やかに収めてくれるのが、余裕のある人たち。
生き方と階級は一致するとは言えないけれど、割合としてそうなる可能性は高いだろうと感じている。
日本ではそういった階層ははっきりしておらず、同じクラスの中にいても、なんとなくふわふわしているんだと思う。
でも海外ではそうはいかないらしい。
そして主人公ミアは、その最下層にいる。
母親は人間として機能せず、家でブラブラしていて、生活保護を受けているにもかかわらず、そのお金のほとんどで白い粉を買ってしまう。
そのためミアたちはまともに食料も食べられず、制服も何年も前から同じものを着て、全く丈が合わない。
冬の外を寒い格好で、まともに食事も取らずにフラフラ歩いているうちに、たまたま見かけた図書館でおいしそうにケーキを食べる女性に引かれて、ついそのまま入ってしまったところから物語は始まる。
そこでホームレス風の状態なのに、上流階級のイントネーションでしゃべるおじさんが読んでいた本のことが気になる。
そしてそのおじさんにその本を読んでみてはと渡される。
それは大正時代に生きた日本人のフミコと言う女性の自伝(実在している人)
貧乏な中で、様々な暴力や搾取や虐待の中で、1度は死ぬと思いながらも、ここではないどこか別の世界をきっとあるんだ。それを知らずに死ぬわけにはいかないと最後は強く生きていく。
そんなフミコの環境と自分の現実が似ていることもあり、影響を受けていく。
自分ではどうしようもできない現実。
幼い弟を守りたいのに、無力でそれすらできない情けなさ。
友人がスマホで楽しそうにしているのを、お金がなくて買えず。それをみんなも本当はわかっているのに、お金がないからと口にはできなくて。
とにかく切ない。
そして腹立たしい。
子供の貧困という言葉が聞こえてくるけれども、私もシングルマザーだったので、子供たちに豊かな生活を提供はできなかったので、よくわかるけれども、助けてと言わない限り誰も助けてくれない。
そして自分1人では限界がある。
だから、もっと助けを求めるべきだ。
助けを求める概念がない人間に育てられている子供は最も不幸なわけだから、そういうものを見かけたら、援助する団体なり自治体なりに通報するシステムを、もっと世の中に広めてほしいとも思ったし。
イギリスの話ではあるけれど、これは今の日本でも起きていることだ。
この物語の子供たちは架空の話なんかじゃない。
きっともっと悲惨な目に遭っている子がいる。
この子たちは手を差し伸べてくれる大人がたまたま近くにいたけれど。
むしろ物語の途中に、ボランティアの男に何かされてしまったと描写が少しだけ出てくるが。
そういった輩たちもいるのも事実で。
だからなんとかしたいともどかしくなる。
言葉がリアルで、ミアの心が、言葉が、とても突き刺さってきた。
その親がどうとか、行政がどうとか、そんなことをいちいち言うつもりはない。
今この瞬間にも、こんな環境の中に生きている子供たちがいるんだと思うと、何をすればいいんだろうと考えても浮かばない自分の無力さに腹が立つ。
色々とバタバタしているけれど、私がやりたいのはこういうところにあるのだ。
時間がなくても、考える時間を作ることはできるので、もう少し色々と考えてみようと思う。
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