テンプル騎士団的物語を描いたので、その最初のシーンを紹介します^ ^
メルマガで3回くらいに渡って紹介します。
人は神の手により平等に作られていると信じている。とはいえ、例えば私は貴族の人間として生まれ、下々の者より社会的に優遇されていると言えるし、それが王族となるとその生まれ持った受け取ることができる人間としての恩恵の格差はさらに広がるだろう。
それ故に、人が平等に作られているという考えの全てが真実ではないとわかっている。
だが、本質の部分はすべて平等であるはずだ。
その信念は今も変わっていない。しかしこの組織に入り、今まで見えなかった真実を多く目にした今となっては、本質すらも神によって選ばれし存在のみが神の恩恵をこっそり受けているのではないかと信仰心が揺らぐ。全ての財を投げ打ち、神の御許に人生の全てをかけたというのに。
おそらく私は他の多くの人間より特別な人生を歩いている。なぜならこの誇り高き騎士団に入れたのだから。
それは傲慢でも何でもなく、本当に特別なことだと思う。
この組織においては、生まれた階級によって組織内の階級もまた決まっている。そもそも全ての人間が望んだからといって入団できるわけではない。入団できる権利を持っていても、筆舌に尽くし難い例の最終試験に受からなければこの場所には来れないのだ。
私はあの恐ろしくも荘厳な神の御姿を見ることができた、あの最終試験を勝ち抜いたここにいるのだ。
騎士団に入っても全員が騎士になるわけではない。
もちろん全員が騎士しての訓練を受ける。だが適正と言うものがあり、それぞれの能力に応じて配属部署が決められている。
私の場合は、古文書の研究及び歴史の記述だ。
歴史は現在進行形であり、今起きていることをすべてを歴史書に書き込んでいくことも私の仕事である。
古文書は、団員の全てが知っているとは限らないこの騎士団の歴史やその背景にも触れている。
古文書の中にだって全てが描かれているわけではないが、時々立ち上ってくる、恐ろしいほどの力を秘めた秘密の匂い。
さすがに究極の秘密は総長ほかごく一部の幹部しか知られていない。だが推測ができるのだ。おそらくこの教団が所持しているであろう世界の秘密を。
神々の誕生の秘密と、私たちが神と崇める存在の妻やその子孫について。
もちろんそのことを誰にも言うつもりはない。
例えば生まれ変わって自由な世の中になったら、物語にでもして世界に広げるかもしれないが、少なくともこの時代、この世界に生きている限りは、生涯誰にも口にすることはないだろう。
続く