空飛ぶ自由人・2

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小説『小さな神たちの祭り』

2023年06月02日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

谷川晃は宮城県南部の町、亘理(わたり) のイチゴ農家の長男。
家業を継ぐ気はなく、東京の大学に進学することに。
2011年3月11日、
アパート探しなどのために上京。
一緒に東京に行きたいとせがんだ弟を置いて。

そして、その日の午後、
地震が故郷を襲い、
両親、祖父母、弟、そして飼い犬の小太郎、
晃を除く家族全員が津波に呑まれてしまう。
遺体は見つからなかった。

大学を卒業後、東京で就職するも
志半ばで仙台に戻った晃の目には、
周囲の人々がすっかり震災のことなど
忘れてしまっているかのように映っていた。
あの日、弟を東京に一緒に連れて行っていれば・・・
との後悔の念にさいなまれ続ける晃。

震災から8年。
仙台で知り合った恋人の岡本美結とは、
付き合って2年になるが、
晃は亡くなった家族のことを考えると、
「自分だけが幸せにはなれない」と、
美結との結婚に踏み出せず、
別れ話に発展する。
そんな時、晃の前に1台のタクシーが止まった。
それは祖父が運転するタクシーで、
連れて行かれたところは、元の家のあった場所。
そこでは、亡くなった人々が
生前そのままに、幸福に生きていた・・・

読んでいて、何だかシナリオみたいだな、
と感じていたら、
あとがきで、ドラマの小説化だと判明した。


東北放送60周年記念ドラマとして2019年11月20日に
放映された単発スペシャルのテレビドラマ。
文化庁芸術祭賞優秀賞はじめ、日本民間放送連盟賞優秀賞、
アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞受賞など、
国内外で高い評価を得た同名のTVドラマを、
脚本を執筆した内館牧子自らの手によって小説化されたものだったのだ。

あとがきに作者は、こう書く。

東日本大震災で亡くなった方々は、
実はどこかで生きているのではないか。
私はそう思うことはがあった。

死んだ者、残された者、
その垣根は高く、越えられないものだろうが、
作品中、死んだ人々は、こう言う。

「生き残ったヤツらが元気じゃないと、
俺たちは死んでも死に切れないんだよ」

また、こうも言う。

「生き残った者に力を与えるのが、死んだ者の使命」

なるほど、そういう考え方もあるのか。

ドラマは、
「東日本大震災を風化させない」──
そのような思いで企画されたという。

 



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