空飛ぶ自由人・2

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映画『ザリガニの鳴くところ』

2022年11月22日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

「2019年、2020年、アメリカで一番売れた本」
「全世界1500万部突破」
「2021年本屋大賞・翻訳小説部門第1位」
という、景気の良い原作本の映画化。

1950年代。
「ザリガニが鳴く」といわれるノースカロライナ州の湿地帯で、


一人の青年の死体が発見される。
櫓から落下したらしく、足跡は満潮で流され、櫓に指紋は残されていなかった。
近隣に住むカイアと呼ばれる女性、
キャロライン・クラークが犯人として逮捕され、
裁判にかけられる。

物語は、その裁判の様子と、
カイアの生涯が交互に描かれる。

カイアは、父親の暴力に耐えかねた母親がまず家から逃げ、
兄弟たちも次々と家を出て、一家離散
取り残された6歳のカイアは
ぐうたらな父と暮らしていたが、
その父親も何時の間にかいなくなり、
湿地帯の中にある家で独り暮らしをしていた。
カイアの収入の手だては、湿地帯でとれる貝のみ。
唯一の味方である雑貨屋夫婦の助けで何とか生き延びていた。

カイアは学校には行かなかったが、
幼なじみのテイト・ウォーカーから読み書きや計算を教わり、
いつしか2人の間には恋心が芽生えていた。
テイトは、カイアが描き貯めていた
湿地の動物たちの絵を見て、
出版社に持ち込むことを提案するが、
カイアは、その話にはすぐには乗れなかった。
テイトは大学に進学するために都会へ行き、
年に1度は会いに来ると約束したのに、
再び姿を見せることはなかった。
カイアは裏切られたと感ずる。

1965年。
19歳になったカイアは
近くの街に暮らす青年、チェイスと恋に落ちていた。
しかし、プレイボーイであるチェイスは別の女の子と婚約しており、
激怒したカイアはチェイスと別れることにした。

湿地の再開発の話が持ち上がり、
カイアの住む家の所有権が問題になった。
調べたところ、家の持ち主は祖父で、
滞納した税金さえ払えば、
カイアが相続できることを知った。
かつてテイトが提案したのを思い出して、
出版社に絵と文を送ったところ、出版することになり、
そのお金で、家はカイアのものになった。

ちょうどその頃、テイトが大学を卒業して故郷に帰ってきた。
テイトはカイアに、もう一度やり直したいと伝えたが、
カイアはテイトをすぐに許す気にはなれなかった。

別れを告げられた後も、チェイスは執拗にカイアに付きまとい、
ついには暴力的手段に打って出てきた。

そして、チェイスの死体が発見された。
カイアにはアリバイがあるにもかかわらず、
地元警察はを殺人容疑で告発した。
良い弁護士がついてくれたが、
陪審員は偏見のある地元住民だ。
判決は・・・

予告編でも宣伝でも、
ミステリー仕立てが強調されているが、
それは、ストーリーを引っ張るためのテクニックで、
本筋は、
広大な湿地帯で自然から生きる術を学ぶ
一人の少女の成長物語
湿地帯の持つ湿り気、深く生い茂る草木と得体の知れない深みを秘める沼、
水辺に生きる動物や虫などの中、
人と自然の「生」と「死」が交錯し、
美しい寓話に仕上がっている。

あの程度の状況証拠で逮捕する警察もどうかと思うが、
田舎の保守的封建的なコミュニティがそうさせたと言えるのかもしれない。
なにしろ、住民たちは、カイアのことを「湿地の娘」と呼んで、
異分子と見ていたのだから。
異質な存在への偏見と中傷が冤罪を生み出したのだ。

ラストで一ひねりがあるが、
では、行方不明の父も彼女の手にかかって、
湿地帯の中に沈められたのではないかと想像したのは、
私だけだろうか。

原作者↑ディーリア・オーエンズ
幼少期、母から「ザリガニの鳴くところまでいきなさい」と言って、
森で過ごすことを勧められ、
森の奥深くまで一人で入って行くと、
そこは自分と自然しか存在せず、
その空間では、ザリガニの声が聴こえると言う。
本来は聞こえないものでも、
自然を感じることで、聞き取ることができるのだとか。
母親の薫陶のおかげか、
ディーリア・オーエンズは、長じて、動物学者になった。
2018年、69歳の時、
初めて書いた小説が大ヒット。
広大な自然の中で育つ少女の話、
というのはアメリカ人好みか。
監督はオリヴィア・ニューマンで、
主役のカイアはデイジー・エドガー=ジョーンズが務めた。

5段階評価の「4」

TOHOシネマズ他で上映中。

 



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