徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

復讐するは我にあり

2008年07月02日 | ★★★★





復讐するは我にあり
おすすめ度
製作:1979年 日本
製作:井上和男
監督:今村昌平
脚本:馬場当 池端俊策
出演:緒形拳 三國連太郎 ミヤコ蝶々 倍賞美津子 小川真由美


佐木隆三の同名小説を今村昌平監督が映画化した「復讐するは我にあり」です。このタイトルは、新約聖書に出てくる言葉で、「悪に対して悪で報いてはならない。悪を行なった者に対する復讐は神がおこなう」という意味なんだそうです。うーん。タイトルひとつとっても興味深いですね。

昭和39年10月日豊本線築橋駅近くで専売公社のタバコ代の集金に回っていた柴田種次郎(殿山泰司)と馬場大八(垂水悟郎)の惨殺死体が発見され、現金41万円余が奪われる事件が発覚。やがて、タバコ配給に従事していた運転手・榎津厳(えのきづいわお/緒形拳)が容疑者として浮かび、いよいよ警察の捜査がはじまります。

この作品は実在する<西口彰連続殺人事件>がモデルになっているそうで、犯人の生い立ち、犯行の手口、そして事件発覚後の76日に及ぶ逃亡生活を描いています。リアリティを追求するために作中に登場する殺害シーンは実際の事件現場で撮影されたんだそうです。


巌の父親(三國連太郎)と母(ミヤコ蝶々)と妻(倍賞美津子)の関係。
これがなかなか危ういんですね。

息子が可愛くて仕方がない病弱な母親。
父親はストイックで心優しい敬虔なクリスチャン。
妻は義父に対して尊敬を超えた愛情を抱いています。
もともと父親にあまり良い感情がなかった巌。
父子の確執はますます深まって行きます。

何故厳は凶行を繰り返したのか?父親に対する「反抗心」からなのか?それとも「ただそうしたかったから」なのか?作中では、結局これという答えは描かれていません。というか、巌にもその答えは明確に分からなかった、というのが本当のところなのかな?とにかく、彼はなんの躊躇もなく人を殺します。お世話になった旅館の親子ハル(小川真由美)とひさ乃(清川虹子)でさえ例外ではありませんでした。

巌の家族たちの逃げ場のない混沌とした感じ。
明確な動機がないぶん、無気味さが増します。

1979年の映画賞を数多く受賞した本作。
俳優陣の演技が本当に本当に素晴らしいです。巌に関わる女性はこの作品の中でかなり重要な役割を果たしています。小川真由美のチャーミングだけどどこか影のある売春斡旋宿の女主人。義父を愛してしまう巌の妻役を演じた倍賞美津子。決して「若くない」女優たちが繰り広げる扇情的なシーンは切なくて心に残ります。

にしても。
この作品ってば独特なエネルギーがありまして…
観た後どっと疲れます。
泥臭くて、湿度が高くて、観た後疲れますが、(←しつこい?)名作です。


復讐するは我にあり@映画生活
前田有一の超映画批評



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