事件
おすすめ度
製作:1978年 日本
製作:野村芳太郎 織田明
監督:野村芳太郎
脚本:新藤兼人
出演:丹波哲郎 芦田伸介 大竹しのぶ 永島敏行 松坂慶子 山本圭 夏純子 佐野浅夫 北林谷栄 乙羽信子 西村晃 渡瀬恒彦 佐分利信 森繁久彌
大岡昇平の同名小説を映画化した作品「事件」です。「砂の器」の野村芳太郎監督がメガホンをとり、その年数多くの映画賞を受賞しています。
神奈川県の山林で、若い女性の刺殺死体が発見されます。その女性は厚木の駅前でスナックを営んでいた坂井ハツ子(松坂慶子)でした。数日後、警察は十九歳の造船所工員・上田宏(永島敏行)を犯人として逮捕します。当初、単純な事件だと思われましたが事態は思わぬ方向へと展開していきます。
重厚で骨太な人間ドラマです。片田舎で起こった単純な事件のひとつだと思われていましたが、裁判が進むにつれ赤裸々な人間模様が浮き彫りになっていきます。派手な演出は一切なく、緊迫した裁判の模様と人間関係がじっくりと描かれています。今でこそ、こういう作品は数多く見られますが、当時としてはかなり画期的だったのではないでしょうか。
裁判シーンの会話は緊迫感と臨場感を出すために、台本通りの言葉だけでなく、芝居の中で自然に出た表現を大切に撮影されたそうです。重厚な演技に定評のある実力派の俳優陣の演技は素晴らしく、観るものをぐっと引き込みます。
冷製沈着でやり手の検察官に芦田伸介。
この人が喋り出すと、何だか緊張するんですね。「私、あの人嫌だわ」と言う大竹しのぶの台詞に物凄く納得してしまいます。
グローバルな視点で裁判を見つめる裁判長は佐分利信。
佐分利氏の演技はたまりません。こういう「品」を持つ俳優さんは今はなかなかいない気がします。
名うてのエリート弁護師は丹波哲朗。
いいですね。この役とっても似合ってます。鋭い切り口で様々な証言をひっくり返して行きます。華やかで、少し狡猾な匂いのするところもいいですね〜。
証人を演じた俳優も北林谷栄、西村晃、森繁久彌大先生と個性派揃い。裁判シーンを盛り上げます。そして、事件の重要な鍵を握る被害者の妹を演じた若き日の大竹しのぶと、被害者の情夫を演じた渡瀬恒彦。この年の様々な助演賞に輝いたこの二人の演技は本当に凄かったです。人間のエゴ・弱さ・哀しさがむきだしになっていく様は胸に込み上げるものを感じました。
あどけない少女の面影を残しながら、しっかり「女」な大竹しのぶが印象的。渡瀬恒彦とのラストも素晴らしかったです。
・事件@映画生活
・前田有一の超映画批評