潜水服は蝶の夢を見る
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原題:Le scaphandre et le papillon
英題:The Diving Bell and the Butterfly
製作:2007年 フランス
製作:キャスリーン・ケネディ、ジョン・キリク
監督:ジュリアン・シュナーベル
脚本:ロナルド・ハーウッド
出演:マチュー・アマルリック エマニュエル・セニエ マリ=ジョゼ・クローズ アンヌ・コンシニ パトリック・シュネ オラル・ロペス・ヘルメンディア ジャン=ピエール・カッセル マリナ・ハンズ マックス・フォン・シドー イザック・ド・バンコレ エマ・ド・コーヌ ニエル・アレストリュプ
キャッチコピー:ぼくは生きている。話せず、身体は動かせないが、確実に生きている。
「この映画を観て感動しない人が1万人以上いたらアタシ映画評論家をやめます」というおすぎ氏のコメントを聞いた時、軽く引いてた私。でも気になってたので結局観ちゃいました。元「ELLE」の編集長の自叙伝を映画化した「潜水服は蝶の夢を見る」です。
ある日男は、とある病院で3週間の長い眠りから目覚めます。ところが彼の体は全く動きません。唯一自由がきくのは左目のみ。男の名はジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)。ファッション雑誌「ELLE」の編集長をしていました。地位も名誉も手に入れた彼は美しい妻(事実婚)、可愛い子供達、恋人、友人にも恵まれ誰もが羨む生活を送っていました。発作で倒れる前までは…。
「ロックト・イン・シンドローム」これが彼の病名。意識、知力は元のままなのに、身体的自由をすべて奪われてしまうという原因不明の難病です。ジャン=ドーは、絶望の淵に落とされますが、蝶のように飛躍するイマジネーションと記憶を頼りに、自伝を書く決心をするのでした。
まず冒頭の目覚めのシーンの映像から引き込まれます。
カメラアングルの多くはジャン=ドー目線。自由のきかない狭い視野は窮屈で圧迫感がありますが、ひとたび彼が「蝶」となり回想とイマジネーションの世界へ飛び立つと、それはそれはのびやかで自由!あの独特なカメラアングルから開放された瞬間、私の心も軽くなるんですね〜。
世界的ファッション誌「ELLE」の編集長のジャン=ドー。
彼は「一流」の人や物に囲まれています。
かわいい3人の子どもにも恵まれ順風満帆な人生です。
ところが、「ロックト・イン・シンドローム」という病気で彼の人生は大きく様変わり。言語療法士が編みだしたコミュニケーションの手段を使って、文章を綴っていきます。「E、S、A、R、I、N……」単語の使用頻度順に並べたボードのアルファベットを読み上げ、ジャン=ドーはまばたきで合図します。
気の遠くなるようなコミュニケーションを繰り返し完成したジャン=ドーによる自伝「潜水服は蝶の夢を見る」。その間彼がまばたきをした回数は20万回!
体が不自由になり彼は初めて自分が今まで子供の為に時間を割いた事がなかった事に気付きます。
体が弱くなってきた88才の父親のお世話をするジャン=ドー。
皮肉にもこの数日後に父親以上の難病と戦う事となります。
これはジャン=ドーの空想。
好きなものを好きなだけ無心に食べるこの食事のシーン。
何だかとってもエロティックです。
食欲と性欲って、直結してるんだな…と不謹慎ながら感心してしまいました。
とても静かに、淡々と描かれた大人の作品でした。
究極の状況にも関わらず意外に茶目っ気いっぱいのジャン=ドー。そんな彼だから、皆に愛されたんろうなあ。(彼の周囲の女達は随分気苦労は多そうですが)
人生なんていつどうなるか分からない。
もっとちゃんと生きなくては。
この作品を観ながらふとそんな事を考えてしまいました。
・潜水服は蝶の夢を見る@映画生活
・前田有一の超映画批評