地図をバッグにしまい、気の向くままに路地を歩く。
崩れかけたレンガに導かれ、左に曲がる。
年期の入った鉄枠の看板に誘われて、右を進む。
角を幾つか折れると、もうそこは迷宮のヴェニス。
レンガに囲まれた小さな中庭に、古びた本がびっしりと積み重ねられた古書店は、そんな迷宮旅行の最中に見つけた。
吸い込まれるように敷居をまたぐ。
中世の映画を見ているような気分になる。
もう二度とたどり着けそうにない。
記憶を記録するために、シャッターを切った。
ベージュの上下を着たじいさんが、路地を奥に進んでいた。
くすんだ色のレンガに囲まれた道幅1メートルもない狭い石畳の路地。
後を追った、つもりだった。
しかし路地は、20メートルほど入ると水路に阻まれて、それ以上は進むべき道はなかった。
じいさんはどこに消えたのか?
ピンクとブルー。この配色は、日本にはない。
陽気なイタリア人には、カラフルな街がよく似合う。
レッドとオレンジ。
日本ではもっぱら日本酒ばかり。
イタリアではイタリアの風土に鮮やかなカラーのカクテルを飲んだ。