婦人会の手芸品、老人会の切り絵、子供たちの書道…町の文化祭の会場。
人のあまり通らない2階踊り場の隅で、玉木かつこさんの「水溜りの中の空」は異彩を放っていた。
天窓からの明かりで反射し、きらめく黒い鉄が、空気を一変させるのか、その周りだけ明らかに空気感が違う。
和気あいあいと作品を観て回っていた人たちも、黒い鉄の前で空気が変わることに気づくのか、話をすっと辞め、一瞬だけ鉄に目をむけ、すぐに黒い鉄の前を通りすぎ、何事もなかったかのように、次の作品の会場へと向かう。
なぜ、黒い鉄はここにあるのだろうか?
趣味の作品には魂が宿らない。それを批判するのでもなく、揶揄するのでもなく、黒い鉄は存在することで、訪れる人たちの思考に、ゼロコンマ数秒の断絶を与える。そのためだけに、この鉄がここにあるような気がした。
黒い鉄のすぐ横には、白い壁に溶け込んだ、 Town building in the dusk があった。
現代建築物のような基礎工事が施された土台に、おぼろげな夢のように危うい揺らめきをみせる建物。
脇山さとみさんの作陶しかり、結城琴乃さんの木のオブジェしかり。こんな世界に住んでいたいという願望の現れなのか、物語の感じる作品にいつも魅了される。
最新の画像[もっと見る]