日本経団連が昨年冬に発表した経営労働政策委員会報告では、
成果主義賃金と非正規雇用の拡大が行き詰まり、
国民・労働者との矛盾を広げていることを示しています。
大企業が史上最高の収益を謳歌する一方で、
年収200万円以下の低所得者が1千万人を超えるなど貧困と格差が拡大し、
社会問題になっています。
(「
貧困ニッポンとネットカフェ難民」お奨めです!)
報告でも、
「手取りの収入が伸び悩み、個人消費の増勢鈍化が懸念されている」
と指摘しています。
財界は昨年も
「生産性の向上の如何 (いかん) にかかわらずベースアップはありえない」
としていましたが、
ボロもうけを還元せよと!
との世論は無視できなくなってきていると思います。
昨年の春闘で多くみられた声は、
■労働者より経営者と株主への配分が優先されていること
■異常な内部留保 (ため込み利益) への批判
というものですが、
そのためか、報告は、
「配当や内部留保を減額して労働分配率を引き上げるべきとの議論は現実的でない」
と打ち消しに懸命です。
しかし「労働分配率の低下」は政府でさえ指摘する問題であり、
内部留保を10年で3.5倍にも増加させながらも
ため込みを続けるのはいかがなものでしょうか?
さて、ここからが肝心です。(私としてです)
鳴り物入りですすめた成果主義賃金について。
財界は、
「働けば報われる」
といって成果主義賃金をすすめてきました。
ところが、厳しい競争とノルマの一方で、
労働者の多くは賃金・処遇が低下し、過労やストレスが増大。
目先の利益を追いかけるため現場力や開発力が低下し、
事故やミスなど経営基盤を揺るがす事態が生じ、見直しを迫られています。
そのため報告は、
「透明度と納得性の高い人事評価システムの構築」
をうたい、
「勤続年数にもウエートを置く」
など成果主義と矛盾することまで言い出す始末。
これはちょっと笑ってしまいますよねえ~。
ここでもやっぱりみなさん、
「成果主義は間違っていましたからやめましょう」
と言えないんですね~。
報告が強調するもう一つの課題は、
ワーク・ライフ・バランス
(仕事と生活の調和) です。
私は最近、
ワークライフバランスに興味を持っていますし、
そうした働き方を自分自身が実践しようと思っていますが、
「ワークライフバランス」の綺麗な言葉を
隠れみのにして、形だけの労働時間短縮を謳うこと
(要するにサービス残業を奨励するようなシステム)
には大きな疑問を持ちます。
労働者はそんなに馬鹿じゃありません。
「調和」 というのなら長時間労働の短縮が問われます。
ところが
「効率的な働き方」 が必要だとして、
成果主義賃金の導入で
「就業時間中の集中度を高め無駄な残業を抑制することができる」
と強調してきた結果が、
際限のない長時間過密労働が押しつけられている、
という厳しい現実です。
その過ちから学ぶべきでしょう。
そして、「ワークライフバランス」の言葉だけを
かりくるのはやめましょう。
成果主義導入のときに踊った甘い言葉の数々を
労働者は決して忘れていません。
大切なのは、
こちょこちょ制度をいじったり
甘い言葉や姑息な手段で労働者に怒りと失望を味あわせ、
労使関係を悪化させることで
社員のモチベーションを下げることではありません。
「会社にはもうあきらめました」
と言われ、
削減した人件費以上に業績が低迷するのは
ナンセンスです。
せめてまともにテーブルにつけるような
「まっとうなやり方」
をしましょう。
後ろからばっさりきりつけたり、
落とし穴を掘るんじゃなしにね。