Japan for Sustainability(ジャパン・フォー・サスティナビリティ(以下JFS)は、2009年8月26日で設立7周年を迎えます。
JFSは日本国内の環境や持続可能性に関する優れた取り組みを英語に翻訳して、主にインターネットを通じて世界中に情報を発信し続ける活動を行っているNGOです。英語版ニュースレター読者は、各国の政府関係者や環境オピニオンリーダー、専門家、メディアなどを中心に、世界191ヶ国・1万人を超えます。環境問題に対する高い意識と志を持つ企業・自治体・大学・NGOなど約70の法人会員、200人を超える個人サポーター、約500人のボランティアが活動を支えています。私自身は個人サポーターとボランティア活動を通してお世話になっています。
「お金がないから●●ができない」という言葉ばかりを聞くいま、限られた人員と資金の制約の中で、これだけの活動を続けられたのは、なぜなのか? これを今日は考えてみたいと思います。
JFSの活動の大部分の作業を担っているのは、約400人のボランティア。関わってくれる多くの人々の思いやスキル・経験を生かす場になるよう、工夫して作り上げてきた「21世紀型の新しい組織」、それがJFS独特の組織づくりです。
『多くの人の思いを生かす仕組み』JFSの組織について、あらためて、ご紹介します。
●新しいボランティアの形
「日本の環境に関するさまざまな進んだ取り組みを世界に発信する」
これが、JFSの活動の大きな柱です。
私が参加しているのは、この中の「日本国内からさまざまな情報を集める」→「選んだ情報をもとに、日本語の記事を作成する」ところです。
その後、私たちが集め、原稿にした記事は、「日本語の記事を英語に翻訳する」→「英文記事の英語をチェックする」→「ウェブに掲載する」といったプロセスを経て、世界に発信されますが、これらは、なんと、すべてボランティアからなるチームで運営されています。
しかも世界中にメンバーが散らばっているため、すべてメール又はメーリングリストよって運営されています。会議や打ち合わせもMLでします。(そのほかに常時10チームほどが活動しています。)
これらのボランティアチームは、各チームのまとめ役を中心に活動が進められています。各チームそれぞれの目的や内容に応じて、メンバー同士で運営方法やプロセスを工夫して進めており、各チームの活動は、メンバーの自主性・チームの自律性があって初めて成り立つ仕組みになっています。
●思いのマネジメント
JFSでは「思いのマネジメント」を大切にしているということです。JFSのスタッフ人数と予算規模はとても小さく、この日本の情報を世界に伝える活動に対して、政府などから支援してもらっているわけではありません。活動の多くはボランティアで成り立ち、義務や契約の関係ではありません。それだけに、それぞれのモチベーションをどのように集めて、重なるところを見つけて、高め、維持していけばよいのかが活動継続のポイントなのだそうです。
そこで、JFSが「思いのマネジメント」と呼んでいる3つのポイントが重要になってきます。
1「使命感」
JFSの活動の使命は、
「日本の進んだ環境の取り組みを世界に発信することで世界を動かそう、日本も動かそう」
「持続可能な日本のビジョンを描いて、そのビジョンに近づいているかを確かめ、どうしたら、より近づけるのか考えよう」
というもの。
私たちボランティアは、その使命に共感して集まっています。
このビジョンを何度も繰り返し伝え、仲間として確認しあうことが大事なのだということです。
これは私自身も常に意識していることです。
2「達成感」
自分が時間やスキルを提供したことによって、こういうことにつながった、と目に見える、またはわかりやすい形で感じてもらうことが大事です。JFSではそのための仕組みを工夫しています。
例えば、自分が集めた情報や、自分が書いた記事、または訳した記事がウェブに載り、全世界へと発信されるのですが、それに対して読者からフィードバックが届きます。取材元からのお礼や、世界からのフィードバックは事務局さんより我々ボランティアに伝えられます。自分の活動への手ごたえをそこから感じることが出来ます。これは私自身が仕事で生かしたいと考えていことのひとつです。
3)「自己実現」
JFSの活動に参加することで、「文章力や翻訳のスキルが上がった」「情報収集を通じて、自分の知識や視野が広がった」「同じ価値観を持つ仲間に出会えた」
など、JFSに関わることで、自分にとってのプラスが実感できてこそ、ボランティア活動を継続することができるのだと思います。
これは、間違いなくあります。私自身が実感しているのですから間違いありません。高いお金を払って習わなくても、ボランティアを通して、自然に、仕事や人生で必要なことの多くが学ぶことができます。
JFSでは、それぞれの次のステップにつなげたり、その人自身の成長ややりがいにつながる機会を大事にしています。
この3つのポイントと、それらをベースとしたいくつもの自律的なボランティアチームが有機的につながって活動を進める組織の仕組みは、共同代表の
枝廣淳子氏が、JFS立ち上げ前にそれまでの経験をもとに工夫して作り上げたそうです。
実際に、2チームでお世話役という、チームをまとめるお仕事をしている中で強く感じることは「自主性を重んじる組織から生まれる自由闊達さ」です。
典型的日本企業に勤める私は、はじめは面食らいながらも、今では、同じまとめ役の仲間たちと伸び伸びと活動しています。
原稿を書くチームのまとめ役の仲間たちは、アイデアが豊富で、考えたことはどんどん提案し、良いと思ったことは、即実行するのが特徴です。提案して、たたき台が出され、数日で意思決定して、メンバーに公式も流すこともあります。
通常の会議にあたるメーリングリストは、共同代表の枝廣さんはじめ幹部の方々が読んでいますので、普通の会議で言うと、社長や取締役が会議を聴いているようなものですが、「現場の自主性」を重んじる社風(NGO風?)の為、みんな臆することなく発言しているのが大きな特徴です。やる気と実力の世界で、変な差別は一切ありません。やる気のある人は、どんどん実力をつけていきます。
また、みんなが、異常なほどに性格が良いというのも、大きな特徴。功を奪い合いことなく、謙虚さや感謝の気持ちで満ちた私たちは、以前にも言った通り、「幸せなチーム」です。そしてJFS全体が「幸せな組織」だと言っても過言ではありません。
一人ひとりが、そして各チームが学びつつ工夫していくことで、全体が進化していく「自己組織化」。これが、JFSに関わってくれる人たち、すべての良さや思いを120%引き出すことを考えて生み出された、JFSとボランティアが持続可能な形で、持続可能な社会づくりに向けて進んでいくための秘訣なのでしょう。
JFSは、関わってくれる人すべてにとって、環境・持続可能な社会をキーワードとしたコミュニケーション・プラットフォームであり、ツールであり、日本で持続可能な社会を目指す人々と世界をつなぐハブ。JFSという一つのプラットフォーム(場)があって、そこにスタッフやボランティア、個人サポーターや法人会員、情報を提供してくれた取材先や世界中の読者ほか、いろいろな人々がそれぞれの思いを持ち寄ります。誰でも、このコミュニケーションの場(プラットフォーム)に集い、情報を持ち寄り、自分の知識を深め、自己実現につなげていくことができます。
JFSには、「この組織のメンバーであるからにはこうでなければならない」という決まりや制約は一切ありません。JFSには組織としての存在目的やミッションがあり、その目的やミッションを果たす手段や活動があります。そこに自分の思いや活動を重ねて活動したいという人々が集まって、いっしょに活動をします。
まさに「主役はあなたです」なのです。(私の本業の精神と同じ。)「参加してくれたひとりひとり」が主役、主人公です。
また、JFSは、「学習する組織」でありたいと願っているということです。自分たちのできる範囲で、必要な活動をしながら、その活動に必要なプロセスは、自分たちの力で作り、つねに改善していきます。これは共同代表の枝廣さん自らが実践していることであり、JFS=「学ぶ」というくらい、浸透している精神です。自ら考えることは勿論、他の活動をしているメンバーたちとも、自分たちのやり方について情報交換をし、互いに役立つ方法はどんどん取り入れます。
こうして、チームを超えてJFSの全体にノウハウや知恵、新しい実践が伝わっていきます。JFS全体で学んだことが共有され、成長へとつながっていく「学習する組織」なのです。
私自身は、自分が関係する仕事において、これらのノウハウ、考え方を参考にしています。営利企業であることや、メンバーの性質によって、とりいれたり、とりいれなかったりしながら、JFSのノウハウを生かすことで、さまざまなことが、概ね良い方向に向かっていることを実感しています。私レベルでもそうですから、経営者の方ならば、なおさら、これらのノウハウを知ることは、企業の持続的発展に役立つと思います。
どんな仕事でも、人間が動くのは、お金やメリットではなく、むしろ、想いや志であると私は思います。また、お金やメリットで動く人より、想いや志で集まったチームは結束が強く、信頼関係による連携に育まれ、そのパフォーマンスは高いです。
参加している2チームのチームの力、まとめ役のリーダーとしての力、チームワークは、私が実社会で時に目にするチームやリーダーより、はるかに元気で、実力があると感じています。こうした学びや喜びを与えてくれる、JFSの仲間たち(事務局さん含む)に心より感謝しています。
良かったら、あなたも、良かったら参加しませんか?(年齢性別国籍不問。やる気とパソコンがあれば参加できます)
●Japan for Sustainabilityについてはこちら
http://www.japanfs.org/ja/aboutus.html
●Japan for Sustainabilityにボランティアとして参加するには?
http://www.japanfs.org/ja/join/volunteer/pages/010431.html#more