憶えようとしても憶えられず、忘れようとしても忘れられないということはよくある。
記憶術というのはよく聞くが、忘却術というのはあまり聞かない。
憶える価値のない記憶、憶えていては困る記憶が、いつまでも脳裏をよぎるのはちょっと悔しい。
忘れるためにはまず記憶されなければならない、ここが一番の問題点。
忘却とは?
notして裏側にあればわかりやすくていいのだが、裏返して何もないどころか、裏返したものまで消えている。
知らないのか忘れたのか、消えたのか引き出せないだけなのか、変容してしまったのか繋がりだけを失っただけなのか、重要度が下がっただけなのか。
ある記憶を忘れたとして、自分でそれを確認しようにも、忘れたことがわかるならそれは忘れたことにならないし、忘れたことがわからないならそれについて考えようがない。忘れた内容ではなく、忘れたという結果だけならわかるということはよくあるが、忘れた内容を思い出せないということから得られる教訓はさほどない。
忘れないためにも忘れるとは何かを知っておきたいものだが。
ところで、常識というのも、これに似たところがある。
非常識は常識の単なる裏返しではない。他人の非常識は咎められても、自分の非常識は意に介さない。
ひらめきに似た、常識を打ち破ることがたまに必要になってくるところとか。
常識とはいわば社会の記憶といったところか。