この版の序言〔2012/08/07 22:03〕(核兵器と外交政策2)
十二年前、この本の終章のなかで私は書いた。「問題が何であれ、軍事戦略に問題にかかわるものであれ、同盟政策の問題であれ、あるいはソビエトブロックとの関係の問題にかかわるものであれ、核時代は何よりもまず主義の明確化が求められる。以前は想像もできなかった自然に対する支配を我々の手中にしている科学技術の時代にあって、実力の価値は結局は用いられるべき目的にすべてがかかっている。」
これらの言葉が書かれた後にも重要な変化は諸国家の関係に起きている。世界の秩序は今なお軍事的な意味において二つの超大国によって支配され、他の国々は核クラブに参加したけれども、ソビエトと西側同盟体制は結束性を失ってしまった。アメリカ合衆国とソビエト連邦はお互いに直接にベルリンとキューバで対決することになり、そして間接的に世界中のいたるところで紛争地帯の、そしてアメリカ軍がベトナムにおける弱まりつつある闘争に大きなスケールで関わってきた。
これらの出来事は国際的な状況を変えた。しかし、こうした状況は主義の明確化と国際秩序を求めることへの必要は、むしろ弱めるよりも強めている。
ヘンリーA・キッシンジャー
ワシントン
1969年1月