「流行色は赤か」
今朝のテレビに真っ赤な服や下着がひろがり「この春の流行色は赤ですよ」と言うキャスター。
起きぬけのこの画面に私の老眼が驚く。春の流行色はいつも淡い色ではないか。そもそも流行色とは「一般社団法人流行色協会」とかが決めるらしい。しかし店で売れているのは「赤」い服飾品だとしたら、消費者の女たちは自分を目立たせたいのか、変化したいのか、勝負したいのか、結構なことであるが赤はわたしの苦手な色、たとへマフラーでさえも身につけたら落ち着かない。居間を見回しても赤いものはない。いやある、赤鉛筆がいっぽん。でも歌集のなかには赤が散らばっている。「赤子」とか「火星」などの名詞入りの歌をのぞいて、六首を抄出。
赤のある歌六首 松井多絵子
青は愛、赤は愛憎そんなことあの日話した茶房を過ぎる
信号が赤より青になりしとき翼ひろげて雲が迫り来
夢ひとつ失いしわれに下りてくる大寒の日の赤すぎる落陽
ぶどう酒の赤き水位がぐぐぐぐと下がり今日が昨日になる
言いだすまでどこに隠せばいいのやら真っ赤な嘘はそわそわしている
ひとところ赤あかと咲く花ももに別れしのちも花ももの赤
赤い服を着た女たちが街に溢れたら私は青を、信号の青の女に。
1月29日 松井多絵子