「アスペルガーを病む」
♠ 冗談と冗談が傷つけ合っている彼のタバコの煙のなかで 松井多絵子
朝刊の本の広告 『ぼくはアスペルガー症候群』 を見ながら思う。あの人もあの人もアスペルガーを病んでいるのではないか。もしかして私も。まさか!でも気になる。
「空気が読めない」「人の話を聞けない」「冗談が通じない」。大勢で話している時は気が付かないが、2人で話していてこの人は私の話を何も聞いていないのだ、と気つく。淋しい。
♠ 卵黄の崩れたような返事なら耳よゆめゆめ聞いてはならぬ
♠ わたくしの顔が怒っているような熱きピザパイを召し上がりませ君
相手への不満をまともに言いにくい場合に、冗談めかして言ってみる。しかし通じない、
ますます2人の間の溝がひろがる。溝が深くなってしまう。❤ 「ぼくはアスペルガー症候群」の著者・権田真吾は40歳でアスペルガーと診断された。その著者が自身の幼少期から今までの楽しい話も、苦しい話も交えた実体験を書いたそうだ。説得力がありそうな本である。
「ちょっと変わった人たち」と向き合う一冊だというこの本。「ちょっと困った人」はどこにでもいる。「あの人は病気なんだ。気の毒だなあ」とやさしく向き合えばいいのか。甘やかしたら病はますます、ではないか。コワイのはこの本を読んで 「わたしはアスペルガー症候群」の場合である。いま、つぎつぎに色々な病気が現れ、加齢とともに私たちは病気持ちになる、そして貯金は失ってゆく。色とりどりの薬の錠剤に囲まれながら。
10日前に伊吹山で転んだ腰痛はほぼ治まったが、まだ毎日黄色の錠剤を。
8月21日 松井多絵子