☀ 今年の短歌研究新人賞 ☀
7年前まで8月22日は私にはコワイ日だった。今年も応募者560人にはコワイ日、でも最良の日の人もいる。寒さに強い北海道の ✿ 石井僚一さん おめでとうございます。
✿ 石井僚一さんは、平成元年北海道生まれ。北海学園大学在学中に受けた 田中綾
氏の講義「創作論」で短歌に出会う。本年4月より北海道大学短歌会に参加している。現在、札幌リハビリ専門学校作業療法学科の学生でもある。
✿ 受賞作 父親のような雨に打たれて 30首より5首抄出
遺影にて初めて父と目があったような気がする ここで初めて
コンビニの自動ドアにも気づかれず光として入りたくもなる
傘を盗まれても性善説信ず父親のような雨に打たれて
「父の死」が固有名詞であることの取り戻せない可笑しさで泣く
ネクタイは締めるものではなく解くものだと言いし父の横顔
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新人賞選考委員の言葉より 「ひとこと」
♠ 加藤治郎 沈鬱な挽歌である。危篤の知らせを受けてはじめて父と意識されたのだ。
♠ 栗木京子 父親の死の心の揺れがややハードボイルドなタッチで詠まれている。
♠ 米川千嘉子 現代を生きる自分の苦しさが折々に噴出するような迫力がある。
♠ 穂村 弘 読んでいて迫力がある。モチーフが父の死だからということもあるが。
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短歌に関わるのは圧倒的に女性が多いのに、今年の新人賞応募者の 50.8%は男性である。20代以下が25%、30代が22%、だが50代・60代ともに約15%。短歌をはじめたのが還暦だったら60代でも新人である。老人、ことに老女たちは遠慮なく 短歌研究新人賞に応募したらどうか、無記名で年齢も選考委員にはわからない。私は若い歌人たちに
「今年は応募して新人賞を取るから受賞式に来てね」 などと触れ回りながら応募しなかった。来年は応募してみようかなあ。平成生まれよりも若々しい30首を作って。
8月22日 松井多絵子