『海辺のカフカ』を
ことしのノーベル文学賞はフランスの作家P・モディアノ氏に決まった。この数年この賞の有力候補と騒がれている村上春樹について、昨日夕刊朝日で 辛島デイヴィット(早大講師)と鴻巣友季子(翻訳家)が語り合っていた。
♠ 辛島 「選考委員の多くがフランス語を読めるのでモディアノ氏のような文体で勝負する作家には有利。文体の特異性まで翻訳するのは難しいので。
♠ 鴻巣 「ただ、賛否は分かれた。最新長編 『色彩を持たない。。。』は思索的だとおおむね好評のようです。少しノーベル賞方向に舵を切ったかも?(笑)
村上春樹は1949年1月、京都生まれ。いま65歳か、もっと長生きしなければ。書き続けなければ。次は長編『海辺のカフカ』を読み終えた時に詠んだ私の六首。
❤ 『海辺のカフカ』を 松井多絵子
夜もふけて海辺のカフカを見るための一人の旅を、読書の旅を
歩くほどカフカの海辺の霧ふかく波のくずれる音のみの浜
五十二の女と十五の少年が・・・そういうこともあるのだ男女
少年をひとり浜辺にすわらせて夜のわだつみは母となるべし
ラ・メールは海なり母なりフランスの、かなたのことは計り知れない
はるかより朝のひかりが走りきて 『海辺のカフカ』の下巻は終章
歌集 『厚着の王さま』 より
文芸にかかわる人々はつねに迷路を、暗い迷路を。
10月15日 松井多絵子