えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

もう8年、まだ8年

2019-03-11 14:22:23 | 歌う
8年前の3月11日、わたしは第二歌集『厚着の王さま』のあとがきを書き終えていた、でも書き直さなければと思い書き直したが、被害者でない私の言葉はよそよそしい。あの昼、卵を買うために立ち寄ったコンビニで私は地震を強い地震を感じた。

大津波 16首

われのみの真昼の坂を上るとき家々マンション電柱も揺れる

震源地も震度もわからぬレジ袋の10個の卵よ割れないように

あと5分歩けば家に着くはずの家がだんだん遠くなりゆく

地デジの工事を昨日終えしわが家のしろがねのアンテナ鋭く光る

あたらしきテレビがリアルタイムにて家々呑みこむ津波を見せる

手をのべて流れる家もトラックも摑めそうなりテレビに寄りゆく

十メ一トルの津波をおもう電柱の高さの津波の迫りて来るを

はつ夏の高田の松原あの昼の海はおっとりしていたけれど

海近き2階の家のその屋根に乗り上げし船には人影あらぬ

海の怒りの鎮まりしのち親を子を瓦礫のなかに探す人びと

死者、行方不明者さらにさらに増えわれと同齢の死者また一人

もう1個のおにぎりあれな、もう1枚の毛布のあれな避難所の人に

オ一ル電化を願いし我へのムチのごと響くシ一ベルト、シ一ベルトとは

天災ではない天災ではない、わたしたち人間の脳を過信していた

少年が祖母を守りて9日目救出されて神話が生まれた

古語なぜか地震をやさしく「なゐ」 と呼ぶ電灯もなく生きた人びと