植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

腕がないのは道具でカバー

2023年01月24日 | 篆刻
このブログは最近のメインが篆刻になっております。今まで、印泥や石の種類、紐をいろいろと説明し拙作を載せたりしていますが、実はほとんど最もキーとなる印刀(篆刻刀)には触れておりません。刀の研ぎだけは先日ちょっと触れましたが。家内の手に触れるのは何年かに一度なのに、印刀はほぼ毎日、握ったら通算3,4時間を篆刻に費やしているのですから、ワタシの体の一部、分身であります。

ワタシが初めて印刀を手にしたのが6年近く前で、書道教室の先生に「作品作りに欠かせない落款に捺す印も、書道のうちなのでご自分で彫ったら?」と言われたのがきっかけでした。先生によると、篆刻とは一本の印刀だけで彫り上げるもので、書道の作品と一緒なんだそうです。硬い石を相手に鋭い刃物を力を込めて彫るのですから、たちまち指に怪我をする羽目になりました。

印刀は大きく分けて3種類、柄の部分が角形の断面の角柱形で、先を片面か両面から削って刃にしているものが角刀、柄が丸い細い鉄棒になっていて両面から削って刃とする丸刀。この2種は平刀とも言います。そして先が三角(木のさやに入った切り出し小刀の刃先みたいな形)の斜め(片)刃と呼びます。

柄の部分は単純に鋼材のみのものから、なめし皮の紐を巻き付けたのもあり(革巻きと呼んでいます)これが一番手になじみ滑らないのです。中国製の様な細いひもをぎっちり巻いたものもありますが、滑るし超合金とかいうのはなにか好きになりません。メイドインジャパンしか使いません。
下のが中国製です。


日本製で高級なものは、名工の鍛冶屋さんが作っている手打ち鍛造の印刀があるらしいですが、1本3万円位するらしくて当然手も足も出ません(笑)。多くの篆刻家さんが使っている鍛造品は「濃州菊松」か「濃州兼松」の二通りがあります。恐らく岐阜県関市の本場でのれん分けした刀匠の違いだと思います。これの革巻きで十分であろうと思います。

後は、刃渡り(刃の幅)と厚みの違いで1センチ以上のものから1mm前後までざさまざまであります。ワタシは基本ヤフオクでまとめて中古品を入手しているので、定価数千円というような新品は買いません。おそらく100本以上所有していますが、実際に使ったことがあるのは20本位、しかも気に入って普段使いの刀は数本に過ぎないのです。

こんなのがいっぱいあります。皆さん、その太さと滑りにくさを試行錯誤していろいろ工夫していますね。

ワタシが普段使っているのはこんなところ。


篆刻に夢中になって、ライフワーク状態になってから2年経ちました。その間、体得したことの一つが「一本の印刀のみで彫るのは篆刻で食べている先生方にお任せする」であります。ワタシは「篆刻家になりたい」という願望は抱いており、その実現のために人よりたくさん彫って研究・努力は惜しみません。しかし、それを生業にするとか印でお金を貰う考えは毛頭ないのです。好きなものを好きに彫って、欲しい人には贈呈する、で十分なのです。

従って、篆刻のノウハウ本や先生が教えることは参考にしても、その通りにつき従うことはいたしません。道具は、1本の印刀のみ、などはとっくに忘れ、石を彫れるもの、安心して使えるものなら何でも用いるようになりました。
その中で最も重宝している愛用品が実はこれであります。
写真右の年季が入った「目打ち」とも「鉄筆」ともつかない工具、これが最も扱いやすく危険が少ないのです。これは、長年篆刻をしていた人からの放出品(恐らく遺品整理)に入っていたものです。その時、「あっ、プロでもこんあ道具を使ってるやないか」と思って目からうろこであったのです。

持ち手の大きさや重さが心地よく、先端部分はがっちりと固定されて大変丈夫に出来ています。寸分のがたつきや曲がりも無いのです。先端部分は摩耗したのか最初からなのか、丸みがあるので万一刺さっても大事に至りません。
その割に、力加減でかなり細かい部分にも使えるし、定規を当てたり、丸い点・穴を開けることも出来ます。この道具のおかげで、刃先が狂ってミスする失敗が大幅に減り、作業効率も向上しました。今のワタシが気持ちよく篆刻に没頭できるのもおこお陰であると言いてもいいくらいです。

ネットで探しても見つからないので、これだけは絶対に無くせないのです。更にこれに加えたのが上の写真左の新兵器「ピンバイス仕様の極細篆刻刀」であります。3種類の極めて細い「丸刀」が交換できるようになっています。刃を含む棒の部分が1mm以下の細いものなので、鍛造鉄ではなく硬質の合金です。簡単に折れないようにいくらか弾力があるので、力を加えて彫ろうとすれば微妙に撓みます。しかし、極ごく細い線を引いたり、朱文(陽刻・字の線の部分を浮き出す)の線を極限まで薄く削るのに最適でありました。

薄刃で切れ味鋭いので、大げさに言えばバターナイフでバターを削るような滑らかな削り心地「うわー気持ちいい」という感触なのです。これとて、伝統を重んじる篆刻の専門家さんは「馬鹿め、未熟モンが!」と怒るでしょうが、この彫り心地をいったん覚えたらもう虜になってしまいました。

ともかく、一定のレベルの印を完成させることが出来るなら、印刀は何でも構いません。ゴルフは、いいクラブを使って飛距離を稼ぎショットの正確性を良くしてスコアを縮めます。俗に「スコアは金で買う。」などと言いますね(笑)。技術が落ちる分、道具でなんとかすればいいのです。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 原子力発電と原爆を一緒くた... | トップ | ご用心 世の中は危険だらけ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

篆刻」カテゴリの最新記事