植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

種苗法改正 その先にある農業の消滅 前編

2020年12月07日 | 時事
 元農林水産大臣が、業者から現金を大臣室で受け取ったことが、贈った側の証言で明らかになりました。大手の養鶏業者が、鶏の飼育に、ひら飼いや止まり木の設置を義務付けようとする国際条約の締結にあたって、日本型のケージ飼い(鶏の虐待)が容認されるように働きかけたのです。菅総理の取り巻きの彼は「不整脈」で病院に逃げ込みました。

 先日わずか数時間の審議で種苗法改正が可決成立いたしました。
その骨子、主目的は、日本が独自に開発した野菜や果樹などの品種(種子・苗)を海外に無断で持ち出されて、勝手に栽培され日本の農業や新種開発の研究や生産に大きな打撃を受けないためであります。「種苗の知的財産権」の保護・強化ですね。

この種苗法は、大きくは3つの問題をはらんでいると思います。
①これはざる法で、国外へ違法に持ち出すことなど阻止できないのではないか
②特定の団体や、種苗企業(外国資本も含め)のみを守る利権保護ではないか
③農家の自発的ないしは偶然性の強い「自家増殖・自家採種」の権利を奪うために農家の経営を圧迫する原因になる。
ということです。

 そもそも農業人口の減少を食い止めるのが急務のはずなんです。最新の日本の「基幹的農業従事者」は136万人で、2015年の前回調査と比べて22.5%40万人減少しました。1985年時点では、346万人いたそうですから、この35年では210万人(61%)減ったのですね。因みに農産物などの食料自給率は同じ期間で53%から38%に減少しています。(カロリーベースです)
 
 従事者の平均年齢は68歳です。65歳以上が全体の7割です。80歳まで農業をやれるとしてあと15年たつと、95万人が死ぬか引退で廃業、もし若い人の参入が無ければ、残るのは41万人となります。これくらいの計算は、小学生レベルで出来ます。一億人の食を、41万人で支え切れると思いますか?今の農業人口を維持するためには、向こう15年で100万人の新規雇用を確保する必要があるのです。
 農業で生計を立てる人を確保し、雇用者・就業者を増やすこととは、失業率の増加を食い止めます。世界的な環境変化や農産物生産の趨勢に影響されることなく、日本人に安全で安定した食料を供給できることが極めて大事な国策なのです。
 
 それなのに、農業人口統計は今回で終わりにすると聞きました。何故なんでしょうね。農家さんが、もしそれだけ減っていて、その現状を国が容認するなら、それもいいでしょう。全部輸入でいいんだと。もしそうならば、農業予算は削るのが筋ですし、農水省の役人もどんどん定員を削るべきなんです。
 
 Go-toイートは農水省が所管であります。コロナのせいで、外食産業は壊滅的な状況に陥り、農水産品が消費されず、これを救済するための措置といいますが。これもなんかおかしい。

 外食産業、飲食店の売り上げが落ちるのは、たぶんその通りで、何らかの救済はやむを得ないとしても、わが国のほとんどの人々は毎日三度食べているのです。農家も漁師も、コロナに関係なく農産物生産品・魚介類も供給できますね。ワタシ達が、飲食店や旅館などを経由しなくても消費できるのならGo-toは要らないのです。農協経由の販売方式から、自主流通、地産地消、直接販売といった方式に移行し、国産品が優先的に流通する仕組みに改めるべきなんです。問題はいままでの販路・物流システムなんです。
 
 農水省の予算総額は2兆3千億円くらいです。その中の公共工事費に7千億円、残りが価格安定(お米の買い上げなど)と農林政策費だそうです。農業関連はその約8割です。全国で6700万人の労働者のうちのたった2%が農業従事者なんです。
 省庁間では、使いきれないほどの予算を抱え込んでいるのだから、コロナはそっちで払え、と言われているのではないんでしょうか。無駄な支出ばかりしるから農業は衰退しているのではないんですか。

 農業がうまみがなくてキツイ業種なせいで、若い人や後継者がそっぽを向いたのですね。農協にその原因があるとにらんでいます。そのココロは「生かさず殺さず」であります。法人による大規模な農業経営は国策で抑えられてきました。苗・種子・農機具・肥料や農薬、すべてが農協を通すようになっているのです。高い機械、資材、薬剤、種子などの物を買わされ農協にマージンが落ちます。勿論、集荷から出荷までもほぼ一元的に農協が規制しています。品質が揃わない野菜は廃棄させられるのです。豊作ならば、周りの農家も同じく豊作、価格が暴落して手間賃にもならずにこれも廃棄。

 一般企業ならとっくに倒産するものを、国がなんやかやと名目つけて補助金・助成金を出してつなぎとめているという図式でありますな。過保護なのでいつまでたっても競争力もつきませんし。農家も農協から言われるままで、工夫も無く思考停止、気がつくといつの間にか歳を取って跡取りがいない、ということになるのです。

 そこにもってきて、種苗法。今までは、サトイモ、ジャガイモ、サツマイモなどの種イモやら野菜の種は、その年に作った作物から採取して使えたのです。お米も、やりようによっては全部自分で育苗できます。ところが、登録された品種に限って、来年から自家で殖やしたものは使用禁止、ブランド品種・人気品種は、農協経由で種苗会社から新たに購入しなければなりません。
 一方今回規制されない一般品種は、一説によると米で84%、みかんで98%、野菜で91%と言われています。だから影響は軽微なんだと。本当にそうかどうかは分かりません。 
 
 例えば柑橘類は、人気品種がどんどん出てきています。農家さんはいつまでも従来の温州ミカンにしがみついていると置いて行かれます。現に小田原のミカン山は次々に栽培放棄されて藪に変わりつつあります。高く売れる、紅マドンナ、カンペイ、デコポン、はるか、などにシフトしようにも苗木が高く、一部は苗木の販売すら禁止されています。
 これでは、農家さんの、消費者ニーズに合った農作物作りは阻害されてしまいます。かといって、自前で新種を開発したり品種改良に取り組むノウハウも余裕も経済力もありません。ごく限られた県、あるいは開発して品種登録した業者のみを利するだけで、日本全体の農業は衰微いたしましょう。

 以下は中編で、乞うご期待
 

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