植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

どこまで行っても田黄擬き

2022年12月16日 | 篆刻
昨日のお話の続きで恐縮ですが。ヤフオクで入手した印石のご紹介であります。

「まとめて5本」で落札した印材石の一つが「高山巧色凍石」だった。ということから、このコレクションは一級品の気配を感じていたのです。そこで箱入りの茶色の印が二つありました。


左が山水画を薄く浮き彫りにした「薄意」つきの微透明の丸石であります。印箱は、内側も絹地のような白い布が張られていて安物の印箱とは全く違う丁寧な作りです。底部に鉛筆書きで「1000.ー田黄」と書かれています。お店で売値を書いていたか、取得価格(定価)を購入者がメモったと考えるのが自然です。単なるメモをあてには出来ませんが、常識的に田黄を千円で売っているわけはないので、「中国元」表示だったのではないかと思います。すると今なら1CNY 約20円になるし、昔ならば15円前後と言うところでしょう。

右は、自然石を半分に切って雙龍の紐を施した、印材に仕立てています。これは前述の印に比べると、小さいものですが、2匹の龍が絡んでいる細かな細工があってなかなかのものであります。これが真正の田黄石かと言えば、確証はありません。黄・茶系の透明度が高い石は、高値で売れる「田黄」として一緒くたに売られてきたからです。鑑定家ならばその「紋」に蘿蔔紋(らふくもん)や紅筋(こうきん)が見えるとか、「温、潤、細 」など六徳という 品格が備わっているなどという観点で見分けるようです。しかし、実際に田坂で採れた土中の丸石の皮をとったもの、であったかなどは誰にもわかりません。中国清代の初期までには、ほぼ採取されつくしたとされています。その原石は遥か上流の寿山の岩塊なので、全てが同じようになるはずもありません。

ですから、現在大量に出回っている「田黄」のほとんどが、田黄石に似た紛い物・類似石とみて間違いないのです。寿山石で黄色系・透明度がある岩を切り出して、自然石・丸い石に削って磨いた、薄意を施して付加価値を付けたものも多いのです。ボクシングで言えば井上尚弥選手の近くに住んでいて、アマチュアボクシングをやっている井上姓の若者、と言ったところでしょうか(笑)

従って、5本まとめて15千円ほどで落札した石印材は、田黄擬きで全く問題ありません。ワタシの「田黄のような物」コレクション箱に収納するだけで十分ですね。

次は、4,500円で落札した「彫刻済みまとめて6点」です。
これを落札したのは、右下の印が「鶏血石」であることが確実で、左上の大きな印は「第4回日展出品(昭和36年)」と書かれた木箱に収められていたからであります。1961年(昭和36年 )に旧日展が開かれているので符合します。日展は、戦前の「帝展・文展」の流れで戦後S21年に第一回が開かれました。
ところが、篆刻の2009年度の審査で、露骨な入選者の割り振りや日展審査側への賄賂・謝礼などが公然とやりとりされていたことが明るみに出たのをきっかけに大幅に改組したそうです。改組新日展 は今年で9回となります。

何をいまさら、芸事や美術・書道ほぼすべてに渡ってそんなことは常識でありました。有力会派や家元に加入し、法外な月謝や謝礼を払いながら、審査展などで便宜を払ってもらって入賞する、資格などを金で買うという図式は古くて新しいものであります。(だからワタシは、基本、資格・権威なるのものに無縁でありたいと願って独学でいるのです)

それはさておき、日展出品の大石ほかの印は、これだけの大きさの石で希少石であるはずもなく、恐らくは一般的な並材のパリン石か流通材である寿山の切り出し石だろうと思います。彫り自体もさほど興味が湧くものではありませんから潰して印材に活用しようと思います。肝心の鶏血石は、血の量が少ない雑味が多いもので、がさがさした質感からして、安物の昌化鶏血と思われます。以前なら数万円で売られる大きさですが、最近では内モンゴルのパリン石が大量に出回っているせいもあって有難味が薄れていると感じております。

最後に触れるのが「封門青」であります。
山内秀夫さん執筆の「石印材」によれば、もっとも得難い最高級品として「田黄凍・艾葉緑・魚脳凍」などと同列に扱われる青田石系の最高峰の品が「封門青」です。浙江省で産出される青田石の内「封門」でのみ採られた黄色がかった青みのある微透明の石です。例えるなら、名店の「芋羊羹」に似た外観であります。ネットではインチキ臭い封門が多数出回っていて、千円やそこらで飼えます。しかし、恐らくは封門で産出した真正の石はそこらには無かろう、と思います。まぁこの石は2個千円で落札したものですから100%紛い物と見ていいでしょう。

というわけで、暇さえあれば安くて本物ぽい石材を集めては眺めるのが楽しみの一つなのです。ワタシの印材箱や収納棚にはこの手の石で溢れかえっております。尾籠な表現では「味噌もくそも一緒」であります。「紛い物上等」実際の鑑定や時価評価には拘泥しないのであります。

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