植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

とうてい楽観できない落款

2020年12月29日 | 書道
 書道を続けていく上でいつかは通るのが「作品制作」であります。半紙なり半切なりに臨書を繰り返し、練習作を沢山書いて、そのうち臨書か自分のオリジナルの創意で清書し、落款を押すと一応作品の形になります。もっとも書がまだ下手なうちは作品に挑戦しても、あまり意味も価値もないので、ワタシもほとんど無関係のまま4年間が過ぎました。

 来年は、なんとしても「作品」を形として残そうと決意し、先日の書道教室で先生の前で、そう宣言いたしました。ワタシのモットーは「有言実行」、外に対しても自分に対しても、やります、ということでプレッシャーをかけてその気になるのです。言っておきながらやらないのはカッコ悪いし。

 それで、必須になるのが「篆刻印」です。このブログで何度か触れましたが、最低でも「姓名印」が必要になります。他に、姓名印の下部に雅号印と書の書きはじめの箇所に押印する引首印( 関防印) とを合わせて「三顆」と呼び、格調ある書の作品として、三顆一組 で整えるのが最も良いとされているのです。これらを署名したのち押印して出来上がりとなります。

 さて、その篆刻印、通常ははんこ屋さんで既製品を買う、篆刻家に作ってもらう、自分で彫る、の三択ですね。はんこ屋さんだと、取引印・認印なんかと同じで機械彫りのようなもの、安上がりなのですが、書の落款としては面白みに欠け、安っぽく見えます。領収書じゃ無いんですから。
 篆刻家に頼めば、これはプロの書家さんと変わらず、胸を張って押せますが、最低でも一個3万円、三顆揃え、あるいは半紙・半切など大きさで使い分けするとなると、4.5個は必要になりますから10万円以上の出費になります。いくら一生使えるといっても、これは、相当痛い。だいたい、自分の書道のレベルがそこまで行っていない(笑)。
 
 そこで、条幅用姓名印だけは篆刻家さんに頼んで、半紙用は自分で彫ることにいたしました。出来上がりは来月です。そもそも雅号は無いので、適当に図案を彫ったありあわせで間に合わせようというわけでございます。引首印は、ヤフオクで落札した、中古(彫刻済み)の篆刻印の中に沢山混じっていますから、これをそのまま使います。

 これらの所有者(使用者)はは、ほぼ100%、故人となった書道家さんです。名前も雅号も関係ないので、「パクリ」とか真贋鑑定の対象になりません。むしろ生前、それなりの費用や技術をもって作ったいわば工芸品・芸術品、大事に使っていたであろうことを考えれば、印面をすりつぶして新たに彫るより、そのまま生かして使うのが合理的でもあり、先達への敬意というものでもあります。
 実際、田黄石、寿山石など高価で見た目が美しい印材を使い、持ち手側に、飾り彫りの紐(チュウ)があるもの、印側面に篆刻家の署名刻みがあったりすると、相当高級品で元手がかかっているといえます。こうした彫のある由緒がありそうな篆刻印は数十個手元にあります。ある程度名前が知られた篆刻家の手になるものは、今後自分が彫る篆刻の道しるべあるいは手本となるものです。そうでなくても、丁寧で凝った作りの紐も眺めて楽しいものであります。

さて、印が揃ったとしても、もう一つ大事なことがある、ということを最近知りました。それは、押印そのものであります。はんこ屋さんで売っている「朱肉」これは使ってはなりません。脂分やら朱が滲みだしたり、付き過ぎたりします。色に味わいや深みもありません。やはりそこは「印泥」を使うと決まっています。印泥も実はピンキリで、数十万で取引される北京栄宝齊製から、何が入ってるかわからない粗悪品まで、ほとんどが中国製であります。製法は、門外不出、秘中秘だそうです。正規の印泥でも、ランクで10数種類あり値段も色合いもかなり格差があります。

 篆刻家さんに制作依頼した以上、安物の印泥や朱肉を使うわけに参りませんね。ヤフオクで探しました。落札したのはこれです。
章州 八宝印泥 「貢品」4500円でありました。普及品としてはかなり高く、額面通りの品物ならば2万円以上するものであります。一般に市販される等級・種類は安い方から、光明・美麗・箭鏃 というのが有名、その上に上品・精品・珍品・貢品とあるようです。その一番上なのですから文句はあるまい。なにせ本物がどうだか知りませんから信じるほかないのです。中央に金箔らしきものがあるのも、本物ぽい気がしますが。

 ともあれ、試しに押印したら、明るい朱色でありながら古色蒼然とした趣の印影でありました。いけそうです(笑)

 これで、作品の完成を待つばかりかと思うと、もう一つ最後の難関が「自署」でありました。生まれてこのかた、何万回も自分の名前を書いていますが、書の一部としてバランスや字姿がマッチする署名ができるかは全く別物です。改めて自分の名前を稽古する、がこれからの課題となります。

 書道も、なかなか大変なんだなぁ。

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